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転んでパンチラ

スペンサー・リードは、名前こそ男だが、女性である。何故、女性なのに「スペンサー」という名前を付けられてしまったかは、親ののみぞ知るところであり、リード本人もよくわかっていない。しかし、IQ187の彼女にとってはそんなことはどうでもいいことで、数学、工学、化学の博士号を持っていて、いつもそのことを熟考できればそれで良いし、分厚い本を与えておけば、機関銃のような専門知識を一方的に喋り続けて周囲を困らせることもなかった。ただし、数冊与えておかなければ、30分もしないうちに、またペラペラと喋り始めてしまうのだが。そんな彼女の服装は、ほとんどルーティーン化している。シャツに細いネクタイにカーディガン。それにボックスプリーツのスカート。それに左右柄違いの靴下だ。靴は黒のコンバース。所謂、私服の制服化・・・というヤツである。その日によって、シャツがチェックだったり、スカートがチェックだったりするが、その両方がチェックということはない。何故なら、おしゃれ番長のガルシアの厳しい査察が入ったからだ。チェック柄は、上半身か、下半身のどちらかに・・・ということらしい。確かに、その方が目がチカチカしないで済むが、如何せん、靴下が左右奇抜な柄違いなので、足元を見ると、目がチカチカすることは否めない。しかし、祖母の教えだから・・・ということで、靴下の件だけは、どんなにガルシアに注意されても直すことはしなかった。意外に頑ななところもある、リードだった。今日はトーンの違った紫色のシャツとネクタイとカーディガンで、スカートはチェック柄だった。靴下は、左が黄色い星柄で、右が赤のストライプだった。流石のガルシアも、靴下については、言うのを諦めたらしい。そんなスペンサー・リードは、毎朝、茶色い斜め掛けバッグの中に、本を詰めてBAUにやって来る。その日によって違うが、円周率や素数や星座の名前や・・・もうBAUの仲間たちが「?」を脳内の浮かべるような独り言を呟きながらオフィスに入って来るのだ。特に今日は意味不明だった。英語とは思えないことをブツブツと呟きながらエレベーターから現れた。

「おはよう、スペンス。今日は何の呪文なの?」

すっかり慣れて、姉のような存在のJJが優しくリードに訪ねた。大きな黒縁眼鏡を掛けたリードが、ニッコリと笑って答えた。

「ジャパンの歴代のテンノーヘーカの諡!」

もうわからない。その場にいるBAUのメンバーにはさっぱりわからない。けれどもJJは、

「そう。リードは博識ね」

と笑顔で受け止めたのだった。さすが、姉もどき。

リードは自分のデスクに茶色いカバンを置くと、中から本を取り出した。

「それはなあに?」

エミリーが尋ねる。

「ジャパンの本!」

「リードは日本語がわかるの?」

「今、勉強中!」

そう言うと、リードは細い指でページを捲りながら、周囲の人間が全く理解できない言葉をブツブツと呟きだした。

「リードは勉強家ね」

自分の世界に入り込んでしまったリードの頭を優しくポンポンと叩きながら、エミリーはコーヒーを淹れに行った。さすが、こちらも姉もどき。

そこへガルシアが現れた。

「おはよう、リード。うん。靴下以外は合格ね。可愛いわ、その紫色」

「ありがとう、ガルシア」

ちらっとガルシアを見てリードが微笑む。本に集中しながらも周囲への注意もきちんと払える能力もあるのだ。激甘のコーヒーをリードのデスクに置くと、ガルシアは言った。

「30分後にミーティングよ」

「事件?」

「まだわからないの。ホッチが先方と確認を取ってる。だから、ミーティングまでに飲み終わってね。猫舌リードのために、少しだけぬるめにしておいたから」

「うん。わかった」

リードは事件が好きだ。もちろん、誰かが酷い目に遭ったり、殺されたりするのは嫌だ。けれども、人を助けるために、自分の能力を発揮することが好きだった。そこに自分の存在意義を感じるからだ。勉強ができて、小さい頃からスキップばかりしていたから、友達はできなかった。友達以前にイジメに遭った。ずっとずっとイジメられていた。体育館の倉庫に閉じ込めら他こともあったし、バスケットゴールの支柱に縛り付けられたこともあった。ブラとパンティの下着姿で。心ない男子にレイプされそうになったこともある。けれども、このBAUはとても居心地が良かった。誰もリードをイジメたりはしない。それどころかみんな優しかった。だからリードはBAUが好きだった。みんなが好きだった。仕事の役に立てることが嬉しかった。

リードはカーディガンの上から嵌めた腕時計を確認した。残り、27分35秒。もう少し、本を読み進めることができそうだった。

********************

「事件だ。集まってくれ」

上からホッチの声がした。反射的にみんながそちらを見る。事件かどうかわからなかったことが、「事件」と判断されたのだ。リードは本を鞄にしまうと、みんなと一緒にブリーフィングルームに向かった。

連続殺人事件。ジェットは290分後に飛ぶことになった。ファイルをバタバタと纏めてメンバーが立ち上がる。不器用なリードは遅れを取った。みんなに追いつこうと慌てて椅子から立ち上がり、後を追おうとした瞬間、その椅子に躓いた。

「うわっ」

バサバサとファイルを落として、床に手をつこうと頑張る。運動神経がほとんどないリードにしてみれば、よくできた反応だった。しかし、床に手はつけたものの、脚の方が疎かになった。というよりも、思わず、足を踏ん張ってしまったのだ。だから、手と膝を床について、腰を高くあげる姿勢になってしまった。そのせいで、自然にボックスプリーツのスカートが捲れあがった。

「イチゴ柄か」

背後から、ユニットチーフであるホッチの声が聞こえた。

「あ・・・あわわ・・・」

へんてこりんな姿勢になっているリードの斜め後ろに、ホッチは片膝をついた。

「おかしいな。俺が贈った下着はどうした?」

「え?え?・・・そ、その・・・だって・・・あれ・・・ちょっと・・・レースとかフリルとか透けてたりとか・・・」

だんだんとリードの声が小さくなる。

「誰に見せるわけでもなし。今度からちゃんと履くように。返事は?」

「・・・・・・はい・・・・・・」

ホッチはイチゴ柄の尻をひと撫ですると、リードが立つのを助けてやった。出張用のバッグの中に入っているか?」

「・・・いいえ・・・」

「安心しろ。ちゃんと俺が用意してあるから」

「ふえっ・・・」

リードが出張先のホテルで、セクシーランジェリーを身につけることになるのは明白だった。なにせ、それがホッチの趣味なのだから。

END

地上の楽園 赤い風車外伝

ホッチの身体の上に座るリードは、ゆっくりを上下に自分の細い身体を動かしていた。自分が咥え込んでいるホッチの甘い凶器を味わうかのように、抜き差しを繰り返していた。緋牡丹の襦袢は肩から滑り落ち、腕に絡みついているだけだった。ホッチの腹に指先を置き、自分の後孔に感じる質量を楽しんでいる。それが表情に無意識に表情に現れているのだろう。ホッチは感じ入っているリードを眺めながら、好きなようにさせていた。

「ん・・・ん・・・ふ・・・」

小さく開いた唇から漏れる声は可愛らしい。そのうち、自分の胎内の当たると良い所を見つけ、そこを擦っても貰えるように、リードは身体の位置をずらした。上体を少し傾けて、今度は前後に動くようにする。そうすると、大好きな場所にホッチの太くて大きなものが当たるのだ。

「ふ・・・ん・・・あ・・・あんっ・・・」

リードの声は一層甘くなり、ホッチの耳を心地よく掠めた。

「あ・・・あ・・・ん・・・いいよぅ・・・」

リードを頭を横に振りながら、快感を享受する。ホッチの腹に着いていた手を、自分の股間へと移動さえようとしたら、ホッチの手の方が早かった。握り込まれて、すぐに扱き始められた。

「ひゃ・・・はんっ・・・ああんっ・・・」

自分でするよりも、ホッチに愛された方がずっと気持ちが良い。それゆえ、次第にリードの腰の動きが疎かになった。けれどもホッチは気にはしない。自分が突き上げてやればいいだけの話だ。ホッチは片手でリードの腰を支えながら、下から身体を抉ってやった。

「きゃ・・・あ・・・ああんっ・・・」

前と後ろを甘く責められて、リードは可愛らしい、喘ぐ声が溢れた。

「ふ・・・ん・・・んん・・・んんんっ!・・・は・・・あ・・・」

グリッと、いい場所を擦られ、奥を突かれて、リードは息が上がる。胎内の奥底から、じわじわと快楽が肌の表面に滲み出てくるような感じがする。もう、吐き出してしまうことを我慢できそうになかった。リードが白い喉を仰け反らせる。何度も抱いている身体だ。それが何を意味するか、ホッチには充分過ぎるほどわかっていた。ホッチは身体を起こすと、リードの身体を抱き締めてやった。

「ああああああああ~っ・・・あ・・・ああ・・・あ・・・は・・・」

ホッチの腹に白い体液が迸る。それに合わせて、ホッチもリードの胎内に欲望を吐き出した。ホッチの腕の中で、ブルブルと小刻みに震えるリードが、小動物のようで、可愛らしかった。呼吸を整えようとしながらも、小さな喘ぎ声が出てしまうリードも可愛らしかった。全てが、何もかもが愛おしい。

「は・・・あ・・・ホッチ・・・好き・・・大好き・・・」

荒い息の奥で、リードが小さく呟いた。ホッチは短い金髪を優しく撫でてやった。

「・・・貴方といると・・・天国にいるみたい・・・ああ・・・ねえ、天国ってこの地上にあるんじゃいかな?・・・だって・・・天国に一番必要なのは・・・愛って・・・言うでしょ?」

ホッチの肩に鼻を擦り付けながらリードが言った。

「そうだな」

ホッチは賛同し、リードの顎を軽く掴むとキスを与える。リードも素直に受け入れ、しばらく互いの唇や舌を味わった。まだ、ホッチはリードの胎内に入ったままだった。リードの存在そのものに反応して、また自分が熱を腹むのがホッチにはわかった。

「あ・・・ん・・・ふふっ・・・また・・・ホッチの・・・僕の中で大きくなってる・・・」

「疲れたか?」

リードは首を横に振った。

「嬉しい。もっとしたい・・・」

ホッチは素早く、リードの身体を反転させ、粗末なベッドに沈み込ませた。今度は自分が上になり覆い被さる。リードの綺麗な脚を大きく割り開き、身体を押し進めた。

「ん・・・ぐっ・・・」

深い。さっきの体位よりもずっと奥深いところを突かれて、抉られる。けれども、辛くはなかった。ただ、ひたすらに嬉しかった。この美丈夫に貫かれることが。愛する者に蹂躙されることが。それも、愛の一つなのだと、リードは思う。ボン・マルシェに出かけたことも、赤いコートと黒い手袋を買ってもらったことも、愛の一つだ。まだ、自分は何もお返しができていないけれども。けれども、今は自分の身体を差し出すことができる。喜びと共に。

「んっ・・・んっ・・・んっ・・・」

ギシギシというベッドの音は、ある意味リズムだ。リードは下から精悍な男の顔を見上げ、細い指先のなぞった。当然自分は愛している。そして、愛されているとも実感できる。

「好き・・・ホッチ・・・もっと・・・もっと酷くされてもいいくらいに・・・好き・・・」

「乱暴か?」

「違う。そんなことない・・・。もっと・・・貴方が欲しい・・・奥まで・・・欲しい・・・」

もし自分が女だったら、きっと子を孕んでしまうくらいに、抱いて欲しかった。自分の胎内の奥深くにまで、注ぎ込んで欲しかった。だから、強請った。

「・・・お願い・・・ホッチ・・・僕、大丈夫だから・・・もっと・・・もっと・・・」

そんなリードの言葉を聞いて、ホッチその細い身体を折りたたむようにして、上からプレスした。

「んあっ・・・」

悲鳴と喘ぎが混ざったような、リードの声が響く。けれども、ホッチは力を緩めることなく、リードを犯した。望んだことを与えられて、リードはより一層の多幸感を味わう。愛されているという、幸せを。ホッチは唇を噛んだ。リードがきゅうきゅうと自分を締め付けてくるからだ。意識的にか、無意識か。おそらく、後者だろう。閨のことに関しては、初心なところがある。セックスは快楽・・・というよりも、愛を確かめ合う行為だと、リードは考えている節がある。ホッチにも異存はなかった。自分もリードを愛しているからこそ、抱くのだ。

「くっ・・・」

ホッチはリードの胎内の良さに我慢しきれず、白濁をその中に吐き出した。

「ああっ・・・」

リードもまた、その先端から白い蜜をトロトロと、溢れ溢したのだった。そして、ゆっくりと目を閉じた。心地よい、暗闇の中に、自分が堕ちていくのを感じながら。そんなリードを見ながら、ホッチはゆっくりと、自分を胎内から引き抜いた。そして身体を離すと、ベッドから降り、気を失ったリードの身体に毛布をかけてやった。

またやってしまったな・・・とホッチは苦笑いをする。リードに強請られると自制が利かなくなる。だから、酷く抱き過ぎてしまうのだ。

ホッチはテーブルの上の水差しからグラスに水を汲むと、ごくごくと飲んだ。コトンとグラスを置くと、籠に入ったレモンに気づいた。昨日、リードがカフェで貰ったものだ。リードはギャルソンとして随分と客からも気に入られているらしい。芸術家たちの集まるモンマルトル。語学の堪能なリードは、様々な国から来ている芸術家たちの橋渡し役ともなっているらしい。その礼として、果物やお菓子などを貰ってくることがよくあった。ホッチはグラスに再び水を注ぐと、今度は小さな果物ナイフを用意した。そしてレモンを半分に切る。切ったレモンの片方を持ち、グラスの上で絞った。簡単なレモン水。

「・・・チ・・・ホッチ・・・」

小さな、自分を呼ぶ声。ホッチがレモン水入りのグラスを持つと、ベッドに戻る。そのベッドでは、リードが唇を可愛らしく尖らせていた。

「貴方が傍にいないのは嫌なの」

「悪かった。喉が乾いたんだ。リードもだろう?レモン水だ。飲むか?」

「飲む。飲みたい」

掠れたような声を出しながら、リードは身体を起こそうとしたが、どうやら上手くいかないらしい。きっと力が入らないのだろう。ホッチは一口レモン水を口に含むと、口移しでリードに飲ませてやった。こくり・・・と喉が動く。

「・・・もっと・・・」

ホッチは、リードに言われるままに、口移しで、レモン水を与えたのだった。

********************

「タイプライターですか?初めて聞きます。それはどういうものなんですか?」

リードは馴染みの客の前にコーヒーを置くと、トレイを両手で抱えて、首を傾げた。

「まあ、簡単にいうとね、紙に活字をい印字する機械だよ。そうだな、大きさはこのくらいかな」

客は両手で大きさを表現した。

「私も最近使い始めたんだがね、これが早くていい。そうだな、同じ時間で手書きの2倍から3倍くらいの文字を打つことができる。だからね、タイプライターのおかげで、私の創作のスピードは上がったんだ。それに、出版社にも大受けでね。ほら、私は悪筆だから」

「そうですか?でも、ムッシューの字は味があると思いますよ。・・・でも、タイプライターかぁ・・・興味あるなぁ・・・」

「最近、いろいろなタイプが出ているから、取り扱う店も増えて来たね。僕が買った店はここだよ」

客は内ポケットから小さなメモ帳を取り出すと、1枚破って、店の住所と名前を書き、リードに渡してくれた。

「そこは、中古品も扱っている。中古と言っても、質は良い。信用のおける店だ」

「ありがとうございます、ムッシュー」

リードは笑顔で礼を言うと、そのテーブルを辞した。

タイプライター。

ホッチは、リードが蚤の市で買った羽根ペンを今でも使っている。けれども、随分と使っているので、もう別な筆記具にしてもいいとリードは思っていた。けれども、それを言うと、ホッチはあまりいい顔をしなかった。最近のホッチはたくさん仕事している。ホッチの書く文章は評判が良くて、色々と書く仕事が増えたのだ。そんなホッチが、タイプライターを使ったら、生産性が上がるのではないか・・・とリードは思った。この間の休みに、リードは赤いコートと黒い手袋を百貨店で買ってっ貰った。そのお返しが、3フランの食事だなんて、申し訳無さすぎる。客に貰ったメモを見たら、その店はこのモンマルトルから割と近くにあった。仕事の帰りに寄ってみようと思った。

********************

「凄い。こんなお店があったんだぁ」

リードはウィンドウに越しにタイプライターを見て、驚いた。タイプライターそのものにも驚いたが、その値段にも驚いた。正直、高かったのだ。これでは、リードには買えない。ちょっとしょんぼりな気持ちになる。けれども、カフェの客は中古品も扱っていると言っていた。

「でもなぁ・・・」

自分は新しいコートと手袋を買って貰ったのだ。それなのに、そのお返しが、お古のタイプライターなんて・・・とリードは思ったのだ。「うーん」とリードが困った顔をしていると、店のドアが開いた。

「タイプライターに興味があるのかね」

どうやら、店の主人のようだった。

「あ、こんにちは。僕、今日、初めてタイプライターっていうものを知って。それで見に来たんです。その・・・知人への贈り物にしたいなぁって。でも、僕にはちょっと手が出ないみたい。もっと働かないと」

「はっはっは。まあ、ウィンドウに並べてあるのはなぁ。どうだ、時間があるなら、中に入って見てごらん。何か掘り出しものがあるかもしれないぞ」

「いいんですか?」

「ああ、もちろんだ」

そう言って、主人はリードを店内へと招き入れた。

「うわぁ・・・これ・・・全部タイプライターですか?」

「ああ。そりゃあ、ここはタイプライターの店だからな」

「近くに住んでるのに、知りませんでした。こういうお店があるってことに」

「知り合いにプレゼントしたいんだって?物書きなのか?」

「はい!えっと、アーロン・ホッチナーっていう人です」

「ほほう。私は、彼の書く新聞小説のファンでな。そうか。彼はまだ、タイプライターを使っていないのか」

「はい。羽根ペンで手書きなんです」

「それは随分と古風だ。悪くはない」

「でも、最近、仕事が増えたみたいで。タイプライターなら、たくさん字が打てるって聞いて」

「まあ、そうだな。最初はキーの配列を覚えるのに手間取るかもしれないが、慣れてしまえば確かに速いよ」

「へぇ・・・」

「使ってみるかい?」

「え?いいんですか?」

「贈り物にしたいなら、どんなものかを知っておかなくちゃな。そうだ、これを使って」

「すでにデスクに置かれているタイプライター」

「これは?」

「私が普段、仕事でつかっているタイプライターだ。まあ、実演用でもあるし、客に実際に使ってみてもらうものでもある。だから、遠慮なく使ってみてくれ。と言っても、教えないとダメだな。はっはっは」

どうやら、この店の主人は、大きな声で笑うのが特徴らしい。

リードは椅子に座らせてもらい、タイプライターの使い方を教えてもらった。最初は戸惑ったが、リードは飲み込みが早い。すぐに、文字を打てるようになった。

「面白い機械ですね。タイプライターって。なんだか、本みたい」

「そうか。面白いか」

「ありがとうございます。タイプライターがどんなものかわかりました。でも・・・」

「まあ、待ってくれ。押し売りをするつもりはないんだがね。あのアーロン・ホッチナーが使うんなら、話は別だ。ここは中古品も扱っている。その中でも、ちゃんと質のいいものもある。そこでだ。いい掘り出し物がある」

主人は、リードを店の奥へと促した。そこにもたくさんのタイプライターがあった。主人はその中から、1つのタイプライターを選ぶと、近くのテーブルに置いた。そして、それに付けてあった値札をリードに見せた。

「これならどうだい?」

「!うわぁ・・・そ、その値段なら、僕にも買えます!」

「そうか。それは良かった。実はな、こいつはすごく良い物なんだが、1つのキーにだけ癖があるんだ。故障じゃない。ちょっとした癖だ。それを使いこなせたら、新品のタイプライターと遜色がない代物だ」

「使わせてもらっても?」

「ああ、もちろん。癖があるのはこのキーだ」

使い方は、さっきのモデルとかわりはない。ただ、確かにそのキーを押すときだけ、ちょっとした違和感があった。少しだけ重く、若干斜めに叩くようにしないといけないのだ。しかし、あまり頻繁に使うアルファベではない。使うのに支障はなさそうだった。それに、このタイプライターはデザインが良かった。優美な感じがした。これがホッチのデスクの上にある様子を想像する。素敵だった。タイプライターを使うホッチの姿はもっと素敵だろう。

「あの・・・明日、お金を持ってきます。だから・・・取り置きしてもらえますか?」

「ああ、もちろんだ。実は、私からも頼みがあるんだが・・・」

「何ですか?」

「この本に、サインをもらえないだろうか?知り合いなんだろう?」

いつの間にか、主人は1冊の本を手にしていた。ホッチが書いた本だ。新聞小説を1冊にまとめたものだ。

「ええ、もちろん!」

ホッチのファンと出会えて、リードは嬉しくなってしまった。リードは大事そうに、本を受け取ると、笑顔で店を出たのだった。

********************

「ホッチは、今日、お出かけの用事があるの?」

翌朝、リードはカフェに出勤する身支度を整えると、ホッチに尋ねた。

「ああ、そうだな。今日は出版社に行く。それが、午後遅くなんだ。もしかしたら、君よりも帰りが遅くなるかもしれない。悪い」

「いいの!お仕事なんだから!・・・それと、お願いがあるんだけど・・・」

「どうした?」

「あのね、貴方のファンに、本のサインを頼まれたの。・・・ダメ・・・かな?」

「いや・・・構わないが・・・サインなんて・・・初めてだ」

「え?そうなの?」

「ああ。ああ、この本か。最初に出した本だ」

「貴方の文章がすごく好きだって言ってた」

「そうか」

ホッチは羽根ペンを手にすると、表紙を開いて、サラサラとサインをした。

「ありがとう、ホッチ」

「構わない。カフェの客か?」

「まあ、そんなところ。あ、じゃあ、僕、そろそろ行くね。サイン、ありがとう!とっても喜ぶと思うよ!」

「だといいが」

リードはちょっとだけ背伸びをすると、ホッチの唇にキスをした。

「言ってくるね」

「ああ。気をつけて」

「うん。ホッチも頑張ってね、お仕事」

「ああ」

毎日のことであるが、名残惜しそうにもう一度キスをして、リードはようやくホッチから離れて部屋を出て行ったのだった。

********************

その日のホッチの打ち合わせ時刻は夕方から始まった。相手の都合で、1時間近く、出版社近くのカフェで待たされたが、次の物語の構想を練ることができたし、ホッチにとって、有意義な時間ではあった。担当者との打ち合わせを終えて、アパルトマンの屋根裏部屋に戻ったときは、すっかりと陽は落ちていた。もう、リードはカフェから帰ってきているだろう。案の定、下から自分の住む屋根裏部屋を見上げると、屋根裏部屋の灯りは点っていた。ミシミシという音を立てながら階段を上る。今夜は冷えそうだ。リードはちゃんと暖炉に火を入れているだろうか。何か暖かい飲み物を飲んでいるだろうか。ちゃんと灯りの傍で本を読んでいるだろうか。心配ばかりしてしまう。ホッチはノックもせずにドアを開けた。

「ただいま。リード」

「あ!おかえり!ホッチ!」

屋根裏部屋はほんのりと暖かかった。ちゃんと暖炉に火を入れたらしい。リードはテーブルの椅子に座って、本を読んでいた。ちゃんとランプの灯りの傍で。立ち上がったリードはホッチに近づくと抱きついてきた。

「リード。俺の身体は冷たいから・・・」

「あったかいよ!」

「リード・・・」

それ以上は言えなくて、リードの好きにさせる。しかし、いつもよりホッチにじゃれつく時間は短かく、表情がまるで悪戯っ子のようにキラキラと輝いていた。

「・・・どうした?リード。何か、カフェで楽しいことでもあったか?」

コートを脱ぎなら、リードの話を聞こうとした。しかし、リードはホッチの腕を取ると、「こっち!」と言って、古びた机に引っ張っていた。ホッチがいつも書物をする机だ。

「見て!」

リードが手で指し示した場所には、見慣れないもの、タイプライターが鎮座していた。

「これは・・・」

思わず驚きで言葉が詰まってしまう。

「ねえねえ、どう?タイプライター!!」

「リード。一体どうしたんだ?これは。そんな簡単に変えるものじゃないだろう?」

ホッチは少しきつい口調でリードに問うた。リードの懐具合は分かっている。カフェに給金で変えるようなものではないはずだ。

「え・・・怒ってる?ホッチ?」

「怒ってるわけじゃない。ただ・・・」

まさか、このタイプライターを買うために、ムーラン・ルージュで働き始めたのかと思ったのだ。それならそれで、自分に相談してくれてもいいものを・・・と思ったのだ。

「・・・ごめんなさい」

さっきまでとは打って変わって、リードはしょんぼりと項垂れた。

「・・・カフェにお客さんがタイプライターの話をしてて・・・これならいっぱい文字を打てるって・・・ホッチは最近お仕事がいっぱいだから・・・役に立つかなって・・・それに・・・この間、コートと手袋を買ってもらって・・・そのお礼もしたくて・・・でも・・・貴方を怒らせたいわけじゃなくて・・・」

「お金はどうしたんだ?」

一番心配なことを尋ねる。

「もちろん!カフェのお給金だよ!」

「こんな言い方はしたくないが、買えるわけがない」

「・・・ごめんなさい。・・・実は・・・新品じゃないの・・・中古品なの・・・店の主人が貴方のファンで・・・おまけもしてくれたの・・・だから・・・買えたの・・・ごめんなさい・・・新しいのじゃなくて・・・」

ホッチの意図とはズレたことを謝ってくるリードに、「そうじゃない」と言いたかったが、とにかく、無理をしなかったことは救いだった。

「何か、カフェ以外の仕事をしたりしたんじゃないんだな?」

「違うよ?ちゃんとお金を貯めてた」

「自分の大切なものを売ったりしていないんだな?」

「貴方以外に大切なものなんてないし、貴方のことは売れないよ!」

またズレた反応に肩を落としそうになったが、その表情を見ると、本当に無理はしていないらしい。

「リード。すまない。ただ、心配しただけなんだ」

「じゃあ、嬉しい?」

「まずは、驚いている。けれども・・・嬉しい。欲しいとは思っていたんだ」

出版社や新聞社から、「そろそろタイプライター使ったらどうだ」とは言われていた。しかし、リードから貰った羽根ペンを大事に使いたいという思いもあった。だいぶ、くたびれてしまってはいたのだが。

「良かった!じゃあね、座って!僕、ちゃんと使い方を教わってきたの!あ、それとね、もう一つごめんなさいがあるの。このタイプライターね、1つのキーだけちょっと癖があるの。でもそのおかげで安かったんだけど。それとね、ホッチのサインを欲しがったの、お店の主人なの。だからサインの分もおまけしてくれたんだよ!」

再び饒舌になったリードの話を聞きながら、ホッチは椅子に座ったのだった。

********************

「んっ・・・ふっ・・・や・・・あ・・・あん・・・」

リードは尻を高く上げて、顔をベッドのシーツに押し付けていた。ぴちゃぴちゃとした音が屋根裏部屋に響く。ホッチが「お礼を」と言ったら、「これはコートと手袋のお礼だから」とリードは答えた。けれども、そのあと、遠慮がちに恥ずかしがりながら言ったのだ。「ホッチとベッドに行きたい」と。すっかり女性器のような形に変形してしまった後孔を、ホッチが舌を使って愛撫する。もし、自分に恩恵を与えてくれる芸術の女神、ミューズがいるとするのならば、それはリードだと思う。リードといると、創作意欲が枯れることがない。次から次へと、物語が浮かんでくる。

「んあ・・・ホッチ・・・お願い・・・も・・・挿れて・・・」

リードが腰を揺らして強請った。ホッチはその桃のような尻たぶに吸い付いてから、身体を起こすと、リードの中へと入り込んだのだった。

ここは。

地上の楽園だった。

リードが言ったように。

END

休日の遅く起きた朝に@バスルームで

リードは両手をバスルームの壁に付いて、尻を後方に軽く突き出していた。暖かなシャワーの湯が身体にかかる。背後にはホッチがいて、太い指を2本、リードの後孔に差し込んでいた。柔らかな体内をぐるりと掻き混ぜて、指を左右に開くと、割れた孔から白濁が溢れ、湯と一緒にリードの太股の内側を伝ってバスルームの床へと落ちる。

「あ・・・あ・・・ホッチ・・・・んん・・・んぅ・・・」

リードは思わず、脚を閉じてしまいそうになる。しかし、ホッチの脚がそれを阻んだ。

「ちゃんと掻き出さないと、大変だろう?」

「ん・・・で・・・でも・・・でもっ・・・」

「どうした?リード」

「・・・もったいない・・・せっかく、お腹にいっぱい、貴方を貰ったのに・・・」

「ああ、そうだな。リードが女の子だったら、孕んでいたかもしれないな」

「孕む?・・・赤ちゃん・・・出来ちゃう・・・?」

「じゃ・・・じゃあ、やだ。そのままにして・・・ホッチの赤ちゃん・・・欲しい・・・」

リードは身体を捩らせて、ホッチから逃げようとした。けれども、ホッチは指は抜いてやったものの、リードの身体を離す気配はなかった。それどころか、ぎゅっと後ろから抱きすくめる。そして耳朶を甘く咬む。

「ふっ・・・ん・・・」

リードが感じ入った声を上げる。

「リード。バスタブに湯が溜まったぞ。温まろうか?」

「ん・・・」

リードは素直に手を引かれて、バスタブの中に入る。リードが選んだ香りのバブルバス。ふわふわの泡の中にホッチと一緒に身体を沈める。

「シトラスムスクか・・・お前のことだから、バニラあたりを選ぶのかと思った」

「だって、ホッチも入るんだよ?ホッチの身体からバニラの香りなんて変でしょ?」

「どうせ、休みだ。リードの好きな香りにして良かったんだぞ?」

「そんなの・・・もし、急に仕事で呼び出されたらどうするの?BAUでバニラの香りをさせてるホッチなんて変だよ。・・・それに、仕事じゃなくったって、貴方がバニラの香りをさせてたら、ジャックがびっくりしちゃうよ!」

「喜びそうな気もするが・・・」

「もうっ・・・そんなこと言って!」

リードがぷうっと頬を膨らませる。ホッチは笑いながら、泡風呂の中で、リードの腹を撫でた。肉の薄い、平らな腹だ。どんなにホッチが精を注ぎ入れても、膨らむことのない腹。しかし、ホッチは愛しそうにその腹を撫で回した。

「・・・ごめんね、ホッチ」

「何がだ?」

「僕が女の子じゃなくって。・・・あ、でも、いいのか。僕が男だから、面倒臭いことにならないで済んでるんだもんね」

「面倒?どういうことだ?」

「・・・だって・・・僕が妊娠しちゃったら、ホッチは困るでしょう?ジャックだって・・・驚いちゃうと思うし・・・ジャックのママは・・・ヘイリーだけなんだし・・・」

「さっきは俺の子どもが欲しいって言っていたくせに」

「・・・それは・・・ちょっとした・・・その・・・冗談だもん・・・そんなことあり得ないし」

「俺は・・・欲しいと思うがな。リードなら、きっと可愛いママになる」

「・・・ホッチってば、真面目な口調ですっごい冗談を言うんだね」

「冗談じゃない。言っただろう?指輪を買おうって」

「・・・本気・・・なの?」

「きっとジャックも喜ぶ」

「凄い、自信をもって言うんだね、ホッチってば」

「本当にそう思うからな。・・・リードがジャックのママになったら、ジャックも喜ぶ」

「そうかなぁ・・・」

リードは両手に乗せた泡を、ふうっと吹いて飛ばした。シトラスムスクの香りは、自分が持っているバブルバスの中で、唯一、ホッチらしいと思った香りだ。いろいろなバブルバスをガルシアからもらったが、どれも甘いお菓子のような香りだった。けれども、このシトラスムスクのバブルバスは、リードが自分で選んだものだ。ホッチの姿を思い浮かべながら。一人で風呂に入るときも、リードは時々、このバブルバスを使う。それは、ホッチがいなくて、寂しい時だ。今はホッチがいるけれども、やはり、ホッチがバニラやビーチの香りをしていたら絶対におかしいと思う。・・・ジャックは、どんな香りのバブルバスが好きだろうか。まだ幼いから、シトラスムスクよりは、きっと甘い香りが好きなのかな・・・と考える。

「どうした?」

「ううん。なんでもない。・・・そう・・・もし、僕とジャックがお風呂に入るとしたら、どんな香りのバブルバスかなぁって・・・考えてた」

「俺も入る」

「あはは。3人は狭いよぅ」

リードが肩を震わせて笑った。そして、背中をホッチに預けて、体重をかける。そうすると、ホッチの左手がリードの腹部に絡まり、右手が太股から足の付け根へと撫で上げてくる。ぬるりとした感触。すぐに、リードの中心がホッチの大きな手に捉えられる。

「あ・・・ダメ・・・も、無理・・・」

「それはどうかな」

バブルバスの滑りを借りながら、ホッチがリードの中心を扱き上げる。親指で先端をグリグリと抉るように刺激する。

「ひゃっ・・・あ・・・だ・・・め・・・。も・・・出ないってばぁ・・・」

「それでも、気持ちはいいだろうか?」

遠慮なく扱いてくるホッチの手の動きに、リードの身体が震える。昨夜から散々イカされて、もうリードのミルクタンクは空っぽだった。それなのに、身体の中心の奥底から、不思議な感覚が迫り上がってくる。

「あ・・・ああ・・・あああああああ・・・」

もうイケないと思っているのに、それとは裏腹に身体は快感を覚えている。ぎゅうっと力強く握り込まれて、先端を弄られて、脚がビクンッと跳ね上がる。バシャンっと泡風呂も跳ねる。

「ひゃっ・・・あ・・・あー・・・あー・・・」

白い喉を仰け反らせながら、リードは声を上げた。バスルームの中で、木霊のように、その甘ったるい声が響く。射精感はなかった。ただ、身体のずっと奥がヒクヒクと蠢くような感覚だけが全身を襲った。身体の痙攣が止まらず、バブルバスの中で仰け反りながらも、全身をホッチに預けるしかなかった。

「あー・・・あ・・・へ・・・ん・・・ホッチ・・・へ・・・ん・・・なの・・・」

「どんなふうに?」

「からだ・・・へん・・・おかしいの・・・びくびくが・・・とまんないの・・・」

小刻みに引き引くと震える細い身体を抱きしめながら、ホッチはリードの耳元に口を寄せて言った。

「リードは、俺の女の子だからな」

「おんなのこ・・・?」

「そうだ。女の子みたいにイッたんだ」

所謂メスイキだった。射精を伴わないそれは、快楽でリードの身体を蝕む。瘧のような身体の震えが止まらず、ヒクヒクと捉えどころのない感情がリードを襲った。

「や・・・これ・・・へん・・・なの・・・や・・・」

そんな可愛らしい拒否の言葉になど、耳を貸さずに、ホッチは執拗に、リードの果実を弄び続けたのだった。

to be continued

休日の遅く起きた朝に @ベッドで

カーテンの隙間から差し込む初夏の朝日が、リードの顔を微かに照らす。リードは少し眩しいような気がして、「んんっ」と身じろぎをした。手探りで傍にいる筈であろう年上の美丈夫を探す。その逞しい腕はすぐに見つかり、リードは目を閉じたまま、その腕の中に潜ろうとズリズリと身体を動かした。すぐにリードの身体は抱きすくめられ、金髪の頭のてっぺんにキスを一つ落ちされた。「ふふ」と嬉しそうに笑うと、リードはグリグリと顔を毛深い胸に押し付けた。さらにぎゅうっと抱きしめられる。それが心地よくて、リードは本当に幸せな気持ちになった。今日は二人とも休日だ。もしかしたら、急な事件で呼び出されるかもしれないけれども、ホッチの携帯端末が鳴るまでは二人だけに時間だ。

「起きる気がないって感じだな」

低いものの甘いトーンの声が聞こえる。リードは目を瞑ったまま答えた。

「だって・・・幸せなんだもん・・・」

「そうか。・・・そうだな」

リードの身体を抱きしめていたその腕が静かに動き始めた。大きな掌が、リードの身体をゆっくりと弄るように撫でる。頭。耳。顔。首筋。腕。背中。腰。それがすっと上がって胸。そして。その突起。

「んっ・・・あ・・・」

昨夜、散々嬲られたそこは、まだ熱を孕んでいて感じやすくなっている。けれども、リードは逃げることなく、よりいっそう身体をホッチに擦り寄せる。小さく開いた唇から、甘ったるい声が漏れる。胸を触られただけではなく、ピッタリと寄り添ったホッチの身体の中心が高ぶっていて、それがリードの身体に触れたせいもある。はしたなくも、思わず、期待してしまう。

「・・・ん・・・ホッチ・・・おっきぃ・・・」

ホッチの手が下に降り、リードの淡い茂みに隠れた果実を握り込む。

「お前もな」

「・・・ホッチの方が凄いもん」

リードは薄く目を開けると、ホッチを見上げて笑った。

「そうかな・・・お前のここの方が凄いと思うぞ」

ホッチの手がリードの尻に回り、その双丘を割った。すぐに、昨夜思いっきり愛おしんだ場所に指を当てる。そこはジュクジュクとしていて、しっとりと濡れていた。

「すぐに挿れても良さそうだ」

リードは身体を動かすと、細い両腕をホッチに首に回した。

「僕は・・・いつだってOKだよ・・・」

「ずいぶんと積極的だな」

「・・・こういう僕は嫌い?」

「いいや。可愛らしくて、いい」

ホッチはつぷりと、リードの後孔に指を差し込んだ。

「は・・・あんっ・・・」

リードが背中と首を仰け反らせた。そこはまだ熱く、昨夜の名残が残っていた。数度、指の抜き差しを繰り返し、ぐるりと円を描くようにしてぐるりと指を回す。

「あ・・・あ・・・ホッチ・・・もっと・・・もっと、おっきいのが欲しいの・・・」

リードがホッチの顎を軽く噛むようにしながら強請る。

「ああ、いいぞ。好きなだけ、貪るといい」

ホッチはベッドに仰向けになると、自分の身体の上にリードを乗せた。リードはホッチの鍛えられた腹に指先をそっと置くと、にっこりと微笑んで、それから屈み、愛する人に口付けた。自分とは違う、鍛え上げられた身体で、頭脳明晰で、頼り甲斐があって、逞しくて、頼りになるリーダーで。・・・こんなに素敵な人が自分と同衾するなんて、最初は信じられなかった。「愛してる」という言葉が与えられるなんて信じられなかった。リードは腰を上げると、ホッチの昂りに手を添えて、そっと静かに、ゆっくりと身体を下ろした。その熱い雄を、自分の中に丁寧に招き入れるように。

「ふっ・・・あっ・・・ああっ・・・」

昨夜、充分に解された雄膣は、滑るようにホッチを受け入れ、全てを飲み込んだ。自重で奥まで届く、その素晴らしく大きな雄は、リードを喜ばせ、甘く啼かせるためにあるかのようだった。ホッチはリードの細腰をしっかりと掴み、BAUでは、ひ弱と言われる身体を支えてやる。リードは腰浮かせることと、尻をグッとホッチに押し付けることをゆっくりと繰り返した。

「はっ・・・あっ・・・ああんっ・・・あ・・・あ・・・」

ホッチは下からリードの痴態を眺めながら、広角を上げて微笑んだ。肩に掛かりそうな柔らかな巻き毛の金髪。とても賢く、美しい青年。ガラス細工のように壊れそうな、そんな精神をもっているような容姿。しかし、本当は、強い。しなやかに、強いのだ。その明晰な頭脳で、あらゆる疑問も問題も解決してしまう。BAUにはなくてはならない存在。ホッチは下から手を伸ばし、胸の飾りを軽く引っ張ってやる。

「ひゃんっ・・・んっ・・・」

ぶるぶるとリードの体が震える。何も知らなかった、無垢な青年をこんなにも淫らに人間に変えたのが自分かと思うと、誇らしくなる。カーテンの隙間から差し込む朝日に所々照らされた白い肌が扇情的だった。一生懸命に動くリード。しかし、ホッチは次第に物足りなくなってしまった。もっと、めちゃくちゃに抱き潰してやりたいと思う。手にした繊細なグラスを、突然手から落として割ってしまいたくなるような、そんな感情。それを時折、リードに対して抱いてしまう。そして、身動きができなくなるほど、抱き潰してしまう。壊れやすいガラス細工の人形を、乱暴に扱ってしまいたくなる。愛ゆえに。表現しようのない、愛情を抱えているからこその感情。ホッチは堪らなくなって、上体を起こすと、リードをベッドに縫い止めて、ニヤリと笑った。きっと自分は何処か、少し、凶暴な表情をしているのかもしれない。愛しているからこその、独占欲。自分を見上げるリードの顔は少しも歪んでおらず、恐怖の表情もない。すっかりと自分を信じ、自分を疑うことなど感がえてもいないような表情。人の身体はそう簡単には壊れない。リードもそうだ。しかし、心は脆く、すぐにでも壊れてしまうだろう。しかし、ホッチはそんなものを見たいとは思わなかった。自分を信じる顔。自分に全てを投げだす意志。自分を慕う愛情。それを独り占めしたいと思う気持ちがホッチにはあった。この青年を繫ぎ止めるためなら、自分はなんだってするだろう。

「リード・・・」

「なあに?ホッチ・・・」

うっとりとした声でリードが反応する。

「・・・時々、お前を壊してしまいたいほど、抱きたくなる」

「・・・うん。いいよ。・・・僕を壊していいよ、ホッチ。・・・僕はね、貴方になら何をされたっていいんだ。全然、平気なんだ。ただ・・・1つだけお願いがあるとしたら・・・」

「願い?」

「・・・1つだけ、願いが叶うなら・・・僕を・・・捨てないで。貴方が、ヘイリーの思い出やジャックを大切にするのはいいんだ。それはとても大事なことだから。・・・だから、貴方の心や身体のほんと僅かな隙間でいいから・・・僕を存在させて?・・・それだけでいいんだ。貴方が、僕をそうやって捨てないでくれたら・・・僕は、それだけで生きていけるから・・・」

「リード」

「・・・あはは・・・やっぱり、それって我儘が過ぎるのかな・・・ごめんなさい・・・」

「謝ることはない。・・・俺は・・・お前を捨てない。ヘイリーやジャックは別の問題だ。・・・大切の種類が違う。・・・いつか、俺とお前とジャックと3人で暮らせたら・・・そう思う」

「・・・ホッチ・・・あは・・・嘘でも嬉しいや・・・」

リードの瞳がほんの少しだけ涙目になる。ホッチはその目尻に軽いキスを落とすと、リードの左手を取り、その薬指の根元を軽く噛んだ。

「今度、この指に似合う指輪を買おう」

「ありがとう、ホッチ。嘘でも嬉しい。とっても優しい嘘だね」

リードが笑う。

「いや、嘘じゃない。ジャックと3人で買いに行ってもいい」

「・・・・・・それが・・・叶ったら・・・僕、死んじゃうかもしれない・・・天国に行っちゃう」

「今、天国に逝かせてやる。覚悟しろ」

リードの体内に穿ったままに楔を、ホッチはより一層、奥まったところへと突き立てた。

「は・・・くっ・・・んぅっ・・・」

リードはその衝撃に思わず、目を瞑った。ガツガツと突かれて、リードの身体が揺さぶられる。

「く・・・あ・・・あぐっ・・・・う・・・ううっ・・・」

「苦しいか?」

リードは首を横に振った。細くて長い脚を上げ、ホッチの腰に絡め引き寄せる。もっと、もっと欲しいと全身で強請る。

「もっと・・・滅茶苦茶にして・・・壊れてもいいんだ・・・貴方に壊されるなら・・・いいんだ・・・どんなに深い傷になっても・・・いいんだ・・・だって・・・僕は、貴方を愛しているんだから・・・本当だよ、ホッチ・・・」

息も絶え絶えになりながら、リードが言う。内壁を擦り上げてくる昂りが愛おしい。この瞬間だけは自分のものだ。今日は休日で、まだ呼び出しもない。電話がなるまで、ずっと、こうやって抱き合っていたい。二人の身体が融けて、ぐずぐずになって、何処がどちらの身体かわからなくなってしまうほどに、愛し合っていたい。

リードは熱い吐息を漏らしながら、自分の身体を蹂躙する、逞しい男の首元に顔を埋めたのだった。

to be continued