公共の交通機関を降りて、リードは腕時計を見た。予定の時刻よりも遅い。オフィスで面白い書類に没頭していたせいだ。せっかくの逢瀬なのに。ホッチは会議の会場から直接、リードのアパートに来ると言った。だから、自分はそれよりも先に帰って、簡単な夕食くらいは作って待っていたいと思ってた。それなのに。不覚。何かに夢中になると、周囲が見えなくなるのが自分の悪い癖だ。こんな癖のせいで、愛する人に嫌われるのが怖い。リードは足早に階段を駆け上がり、駅を出た。が、外は雨。
「嘘・・・」
踏んだり蹴ったりとはこのことか。夕食の材料を昨日のうちに買っておいたことだけが、正解だった。
「ホッチは大丈夫かな。雨とかに当たってないかな」
しとしとと雨を降らせる天空を見ながら、リードは走り出した。
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「ごめんなさい、ホッチ!待たせちゃった?あっ・・・うわっ・・・」
部屋のドアを開けるなり、視界を塞がれる。そして、髪をゴシゴシとされた。
「んっ・・・ホッチっ!・・・はふっ・・・」
ようやく自分の視界を遮ったものが取り払われると、目の前に、タオルを持ったホッチが怒った表情で立っていた。どうやら、自分は濡れた髪を拭いてもらった・・・ということらしい。
「えっと・・・」
「窓から、お前が走って来るのが見えたから。天気予報は?見なかったのか?」
「うん。でも、オフィスを出るときは降ってなくて・・・」
「ついさっきだ。振り始めたのは。俺がここに来るときも降ってはいなかった。まあ、俺も天気予報は見ちゃいなかったがな」
そう言って、ふっとホッチがようやく笑った。
「随分と濡れたな。ほら、鞄を下ろして・・・」
リードが斜めがけの鞄を外して床に下ろすと、ホッチはリードからカーディガンを脱がせ、細いネクタイも抜き散ってしまった。
「濡れた服をいつまでもいているのは良くない。ああ、やっぱりシャツも湿っているな」
ホッチがリードのチェック柄のシャツに触れると、タオルを当てて、水気を取ろうとする。
「ふふっ・・・」
「どうした?何がおかしい?」
「だって。ホッチってば、パパみたいなんだもん。心配性なパパ」
「・・・息子がこんなに色っぽいとは困ったものだな」
「え?」
ホッチがリードの体を引っ張って、腕の中に抱き込む。「濡れちゃうよ」と言おうとしたリードの言葉は、ホッチの唇に塞がれた。腕の中は暖かくて、居心地が良かった。唇で熱を交換し合ってから、
ホッチは一言呟いた。
「まずは、息子を風呂に入れるとするか」
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シャワーの音は雨の音に似ている。けれども暖かさは全然違う。泡だらけのバスタブに二人で浸かりながら、シャワーの雨に当たりつつ、ホッチとリードは抱き合っていた。
「やっ・・・んっ・・・あんっ・・・あ・・・パパぁ・・・」
リードの体の中には、ホッチの楔がすでに打ち込まれている。
「ひゃんっ・・・も・・・また・・・おっきくなってるぅ・・・ん・・・パパったらぁ・・・」
リードがホッチを「パパ」と呼ぶ度に、自分の体の中で大きく存在を主張する怒張に、若い恋人は悪い気はしていない。それに年上の恋人を「パパ」と呼ぶのは、どこか背徳的だった。
「パパ・・・好き・・・」
ホッチの頬を両手で包んで、キスをすると、ホッチもすぐにそれに対して情熱的に応える。
「随分と淫乱な息子だな」
湯の中でリードを握り込んでやると、その背中が仰け反った。
「あっ・・・」
泡のぬめりと、湯による摩擦の具合で、いつもよりも感じ方が違う。もどかしような、気持ちが良いような。いや、それよりも、この年上の恋人を「パパ」と呼びながら喘ぐことの、非日常的な状況に酔っているのかもしれない。それはホッチも同じであって、「パパ」と呼ばれる度に無意識に反応してしまう自分に苦笑がこみ上げて来る。
「スペンス、イくか?」
リードはこくりと頷いた。ただし、ねっとりとした薄い瞳で、「パパも一緒なら・・・ね」と蠱惑的に言って除けるのだった。
「まったく・・・とんでもない、息子だ」
湯船の中で、自分をリードの中から引き抜く。そして、立ち上がらせた。
「壁に手をついて」
「ん・・・わかった・・・パパの言う通りにする・・・」
聡いリードは先を読む。両手のひらをバスルームの壁に付くと、くいっと白い尻を突き出した。
「パパ・・・来て・・・入れて・・・突いて・・・」
「そんなに欲しいか?スペンス」
「うん。パパの・・・ちょうだい?僕、お利口にするから・・・」
言いながら、頭を下げる。そうすると、余計に尻がホッチの方へと差し出される形になる。
「パパ・・・」
ホッチは大きな手で尻を掴み、指を使って尻たぶを左右に割り開く。さっきまで自分を飲み込んでいたそこは、ぱっくりと開いており、ひくひくと待ちわびていた。
「あ・・・ん・・・パパぁ・・・やだ・・・焦らさないで・・・ちょうだい・・・」
「ああ、そうだな」
ホッチは、リードの後孔に自分を充てがうと、一気に腰を推し進めた。
「んっああっ・・・好きっ・・・パパ・・・もっと・・・もっとぉ・・・」
そんな擬似息子のリクエストに、ホッチはガツガツと腰を押し込んだ。
「スペンス・・・そんなにパパのが好きか?」
「ん・・・好き・・・大好き・・・パパとするの・・・好きぃ・・・」
それからバウルームに響くのは父と息子の荒い呼吸音だけだった。しばらくして、細い嬌声が響く。その声とともに、ホッチはリードの中に、リードはバスルームの壁へと、白い精を放ったのだった。
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「んもうっ・・・大丈夫だってば。一人で拭けるってば」
「いいから、やらせろ」
「ふふっ・・・過保護。さすが、僕のパパ」
「スペンス、そういうことを言うと・・・」
ホッチがリードをちろりと睨む。
ここは乾いたベッドの上だった。バスルームでくたりとしてしまったリードをホッチは慌ててベッドに運び、その体を拭いているのだった。
「・・・パパ・・・」
「・・・スペンス・・・・」
「パパの・・・また、おっきくなってる。・・・ねえ、今度は口でしてもいい?パパの、僕のお口に入れてもいい?」
上目遣いにリードが強請る。ホッチは思わず、天井を見上げてしまったが、リードの行動力の方が早かった。するりとベッドから降り、ペタンと床に座ると、すかさずホッチを熱い口腔に含んだ。バスルームで吐き出した後とは思えないほど、それはまだ硬く大きかった。口に含みきれない根元の部分は、細い指先を使って丁寧に愛撫する。先端は自分の喉奥に当たるほどに飲み込んだ。
クチュッ・・・じゅ・・・。
淫猥な音が部屋に響く。
ホッチはまだ濡れているリードの髪を指で梳いてやった。セックスを続行するのは構わなかったが、リードが風邪をひかないように、もう少し髪を乾かしてやりたかった。が、どうやらリードの欲は強く、それを拒み切れるほどの強さを自分は持っていなかった。
それにしても・・・と思う。リードの口から発せられる「パパ」と言う言葉が、これほど自分の理性を失わせてくれるとは知らなかった。
「んっ・・・おいひい・・・」
ホッチは優しくリードの頭を掴むと、ゆっくりと自分から引き剥がした。
「あっ・・・ん?パパ?」
「スペンス、口もいいが、もっと違うところに入らせてもらおうか」
「ん・・・僕・・・下手だった?パパ」
困ったような顔をして、首を傾げるリードに、ホッチは首を横に振った。
「いいや。上手だ。今日だけじゃなく、いつも、な。しかし・・・パパのお願いを聞いてくれないか?」
「お願い?もちろん!パパのお願いなら、何でも聞くよ!」
それを聞いて、ホッチはリードの体をベッドに押し倒した。
「ねえ、パパ・・・どんなお願い?」
「そうだな・・・パパの子どもを孕んでもらおうか」
「子ども・・・赤ちゃん?パパと僕の・・・赤ちゃん?」
「そうだな。パパとスペンスの赤ちゃんだな」
「うん!・・・だったら・・・パパ、僕の中にいっぱい出して!」
そう言って、リードは細い両脚をホッチの体に絡めた。
「辛くても、やめないぞ?」
「辛くないもん。・・・パパとのセックス・・・好きだもん・・・だから・・・パパ、赤ちゃん、作ろう?」
リードは手のひらで自分の薄い腹を撫でた。
「ここに、いっぱい、パパの赤ちゃんの種をちょうだい?」
期待に満ちた声。
「ああ、いっぱい、出してやるからな」
「うん」
ホッチは、甘ったるいキスをしながら、幾たびめかの欲望を、リードの中に押し込んだった。
END