「綺麗な色だな」
ハーヴィーは小さな声で呟くように言った。
「ふぇ?」
ハーヴィーの膝に乗ったマイクが、首を軽く傾げる。ペントハウスのソファの上で、身体中を触られていい心地だったから、マイクはハーヴィーが何の話をしているのかわからなかった。
「君の羽の色だ」
「・・・ああ」
ハーヴィーが自分の翼に鼻先を埋めたのを見て、マイクは合点がいった。確かに、自分でも「最近の羽、綺麗だな。もしかして天界にいる時よりも綺麗じゃね?」と思うほどに、マイクの翼は真っ白だった。その上、最近では真珠の粉が振りかけられたかのような輝きもある。
「ハーヴィーのおかげだよ。ハーヴィーが真っ黒な僕の羽を綺麗にしてくれたんだよ」
マイクはそう言って、ハーヴィーにキスをする。感謝のキスだ。
天界から下界に落とされて、トレヴァーと付き合い出してから、マイクの羽は純白から灰色へ、そうしてとうとう真っ黒になってしまった。悪いことをしたのもそうだが、一番悪かったのはドラッグをやったことだった。ハッパをやるようになって、マイクの羽は加速度的に黒くなっていった。そんな自分の羽を見て、マイクは青ざめた。この先落ちるところは地獄しかない、と。
そんな時に出会ったのが、ハーヴィーだった。トレヴァーとの最後の仕事。これで縁を切ろう。と思っていた時に、うっかりと紛れ込んでしまったアソシエイトの面接会場。マイクは直感的に、トレヴァーから逃れるチャンスだと思ったのだ。だから、自分の得意技を披露した。運よく、ハーヴィーはマイクを気に入り、アソシエイトにしてくれた。もちろん、堕天使であることは秘密にして。
けれども、月日が経って、上司と部下の関係から、友人関係を経て、最終的に恋人関係になってから、マイクの正体がバレてしまった。初めてセックスした時に、マイクの快感と感情が極まって、イく時に思わず翼を出してしまったからだ。
最初は驚き、それでも冷静な声で、「・・・君は悪魔だったのか?」とハーヴィーが眉を顰めて訊いてきた時には、マイクは全力で首を横に降った。そして、自分が天界で少々悪戯が過ぎて下界に堕とされた堕天使だということ。元は白い羽だったが、悪いことばかりしていて羽がどんどん汚い色になり、とうとう黒くなってしまったことを必死に説明した。
ハーヴィーはリアリストだ。もし、これが誰かに聞いた話なら信じなかっただろう。しかし、自分の目の前に翼を有した者が存在するのだから、信じるしかない。しかも、この青年を愛している。だからハーヴィーは黒い羽を撫でながら訊いた。
「羽を白く戻す方法はあるのか?」
と。マイクは、
「僕がいい子になったら」
と、小さな声で答えた。アソシエイトとして一生懸命働いてはいたが、まだまだ足りなかったらしい。それ以来、ハーヴィーは仕事では厳しくマイクに接して、成果をあげさせた。けれども、夜は、優しくマイクに接した。それから時間をかけてゆっくりとマイクの羽の色は代わり、白を通り越して純白になったのだ。
けれども。マイクはハーヴィーに言わなかったことがあった。本当は「いい子」になるだけでなく、「人を愛して」そして「人に愛される」ことが必要不可欠な条件だったのだ。その時のマイクは、ハーヴィーを愛する自信はあっても、彼から愛される自信がなかったのだ。汚い、悪魔のような羽を持つ自分を愛してはくれないだろうと思ったのだ。しかし、結果は・・・この通りだった。ハーヴィーに目一杯、愛してもらって、マイクは天界にいる時よりも綺麗な羽色を持つ天使になった。
マイクは今、ものすごく幸せで、とても満たされていたのだった。
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その日、マイクは1日中、ハーヴィーと行動を共にすることはなかった。それぞれ抱えている案件が違ったからだ。もちろん、ハーヴィーに頼まれた資料調べはあったから、それは最優先で仕上げた。ただ、タイミングが合わなくて、結局、夜になっても渡せずにいた。別にドナに預けるか、あるいはハーヴィーのデスクに置いておくかすればいいのだが、マイクは直接渡したかった。労いの言葉が欲しいわけではなかった。ただ、大好きな人の顔を見たかっただけだ。けれども、ハーヴィーは外に出ていて、オフィスにはいない。
「・・・急ぎじゃないって言ってたから・・・明日の朝一番でもいいかなぁ・・・」
マイクは独り言ちると、資料をデスクの引き出しに入れ、スーツのジャケットを羽織ると、メッセンジャー・バッグを斜めがけにした。アソシエイト・オフィスにはもう誰もおらず、マイクは電灯を決消して、オフィスを後にした。
だいぶ涼しくはなったが、夜の空気は、まだ昼間の熱気を保っていた。少し歩くと、汗が出る。お腹も空いたし、喉も渇いた。アパートまで空腹を我慢できそうにない。マイクは、遅めの夕食を食べてから帰ることにした。けれども、給料日前で、少々懐が寒い。外気の熱気とは裏腹に。けれども、NYにも色々な店がある。ハーヴィーが連れて行ってくれる高級レストランだけでなく、安く美味しいものを食べさせてくれるカジュアルな店もある。そんな店を探しながら歩いていると、偶然、ハーヴィーと一緒に入ったレストランの前を通った。その時のことをふと思い出す。そうだ。初めてハーヴィーとディナーを楽しんだ店だ。と言っても、そんな高級レストランに入るのは初めてで、たくさんあるナイフとフォークに戸惑って、マイク的には楽しむどころではなかったけれども。一番テラス側の席で、ものすごく緊張したのを覚えている。まだ、体も重ねていなかった時のことだ。それでも、隠れてキスだけはしていたなぁ・・・と。そんなことを思い出したら、自然と顔が綻んだ。また、ハーヴィーと来ることができたらいいなぁと思う。そうしたら今度は、テーブルマナーも完璧で、美味しい食事を楽しめるだろう。
マイクはその店の前を通り過ぎながら、自分たちが座った席にチラッと目をやった。
そして。
足を止めた。
ハーヴィーがいたからだ。向かいには、とても綺麗な女性。マイクの知らない女の人。「ああ、きっとクライアントだ」とマイクが思おうとした瞬間、その思考は裏切られた。女性が左手をハーヴィーに差し出し、ハーヴィーが微笑みながら、その手を取ったからだ。そして、指を撫でる。
ツキンっと、マイクの胸が痛んだ。何かが、マイクの胸を刺した。目に見えない、何か。
今までマイクに向けられていた優しい眼差しが、その女性に向けられている。
今までマイクに触れていた指先が、その女性に触れている。
マイクは2、3歩後ずさりをすると、アスファルトを蹴って走り出した。
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「ハーヴィー、これ・・・その、頼まれていた資料・・・」
「ああ、悪かったな。昨日、受け取れなくて」
「んー・・・ドナに預けるとか、デスクの上に置いとけばよかったんだろうけど・・・でも、ハーヴィーの仕事はちゃんとやりたいから」
「いい心がけだ」
翌日のオフィス。ハーヴィーはマイクから頼んでいた資料を受け取った。その指先を見るだけで、マイクの胸が痛む。昨夜、綺麗な女性の手に触れていた指。今まで、自分だけのものと信じて疑わなかった、存在。けれども、それは現実ではなかった。マイクの独りよがりな思いだったにすぎない。
「じゃ、今度はルイスの案件を片付けて来るね」
マイクはなんとか笑みを作って、オフィスを出ようとした。が、ハーヴィーに呼び止められる。
「マイク、今夜、ディナーに行かないか?ほら、初めて2人で行った店を覚えてるか」
ツキン。
マイクの胸に言葉が突き刺さった。ハーヴィーとの大切な思い出の場所は、他の女性の場所でもあったのだ。マイクはなんとか声を絞り出した。
「あ・・・うん・・・お、覚えてるよ。えっとその・・・僕がテーブルマナーわかんなくて、めっちゃ緊張したお店・・・」
「今なら、余裕だろう?」
「ハーヴィーに色々と教えてもらったからね。・・・でも・・・今夜は・・・ちょっと・・・」
「都合が悪いか?」
「ル・・・ルイスの案件が、なんだか面倒臭い内容でさ・・・ちょっと苦戦しそう。今日は絶対に残業確定」
マイクはもう一度笑みを作った。ハーヴィーの目にぎこちなく映らなかっただろうか。
「じゃ、早速、その仕事に取りかかるね!」
マイクはハーヴィーの顔を見ないようにしながら、ガラス張りのオフィスを後にした。
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ぽけっと、マイクはアソシエイト・オフィスの天井を眺めていた。ルイスの仕事は午前中に終えてしまった。午後はプロボノの仕事をした。けれども、ハーヴィーに「残業」と言った手前、仕事をしなくちゃ・・・とは思う。しかし、何をしたらいいか、思い浮かばない。いつも先を読んで仕事ができるのに、今のマイクはそれができなかった。ちらつくのは、あの綺麗な女性と、それを見つめるハーヴィーの笑顔だ。
「あ・・・ダメだ。うん。今日の僕は全然使い物にならない」
マイクはスーツのジャケットとメッセンジャーバッグを置き去りにしたまま、アソシエイト・オフィスを出ることにした。こうすれば、ハーヴィーが覗きに来ても、残業途中にコーヒーでも飲みに行っただろうと、そう思ってくれると考えたからだ。マイクはスマホと財布だけを持ってオフィスを出た。
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店の天井からぶら下がったモニターに、アメフトの試合が映っている。認識しているのはそれだけだ。何も食べずに、ビールをグイッと飲む。味はよくわからない。とりあえず、何かしていないと落ちつかないだけだ。
せっかく綺麗な羽の天使になったのに。昨夜、自分の部屋で翼を広げて驚いた。わずかではあるが、くすんでいたからだ。もう、ハーヴィーが褒めてくれた、純白の羽ではなくなっている。原因は・・・醜い嫉妬心だ。マイクは、ハーヴィーが微笑みを向けた女性に嫉妬している。そして、その女性に微笑みを与えたハーヴィーを軽く恨んでいる。裏切られた。そう感じた。そんな醜いマイクの感情が、羽色をくすませている。黒から白に戻すときは、ものすごい時間がかかったのに、汚い色に変わるのはあっという間だった。
3杯目のビールが空になって、4杯目をオーダーしようと上げた手を、誰かに掴まれた。思わずムカついて、その手を振りほどき、キッした目で睨みつける。そして・・・唖然とした。
ハーヴィーだったからだ。
「な・・・んで・・・?」
「君が嘘をつくからだ。今夜は残業だったんじゃないのか」
「・・・僕・・・結構仕事できるから・・・ルイスの仕事もプロボノの仕事も・・・終わらせたよ。だから・・・いいじゃん。ご褒美に飲んだって」
「ジャケットも鞄もオフィスに置いてか?」
「・・・飲んだら・・・オフィスに戻って、仕事しようかなって・・・」
「その必要はないな」
バサッと、ハーヴィーがマイクのジャケットとメッセンジャー・バッグを小さな丸テーブルの上に置いた。
「誤魔化すな。嘘をつくな。天使のくせに」
口調が厳しい。
「・・・どうせ・・・僕は堕天使だもん・・・」
生意気に応える。
「どうした。何があった?」
一転して、心配げな声。
「・・・別に・・・」
「何か気に入らないことがあるんだろう?そういう顔だ」
「・・・別にって言ってんじゃん。僕のことなんか、放っておいて、昨夜の美女とデートでも楽しめば!?僕は、1人でビールを楽しむの!!!」
マイクは口を尖らせて、そっぽを向いた。
「ちょっと待て。美女って何だ?」
「昨日の夜、デートしてたじゃん。・・・あのレストランで。何?あそこって、ハーヴィーがそういう目的のために使う店なわけ?」
棘のある口調でマイクが言う。言いながら、自分の体の中で、羽はどんどん汚くなっているだろうと思う。けれども、もう止められない。
「もういいよ。・・・僕は男だし、人間じゃないし・・・貴方に愛してもらえるなんて思ってたこと自体が間違いだった。だから放っておいて!!」
マイクが唇を噛む。そんなマイクの様子を見て、ハーヴィーは少し驚いていた。こんなに感情的なマイクを見るのは初めてだったからだ。いつも、自分にどこか引け目を感じているような素振りが
多かった。だから・・・。
「マイク・・・」
ハーヴィーは優しい声でその名を呼び、そして蜂蜜色の髪に触った。
「あれは・・・あの女性は義理の妹だ」
「・・・はいはい。それを信じろって?無理ー。だって、あの女人の手を取って撫でくり回してたじゃん!!」
「ああ・・・そう見えたか。しかし、本当に彼女は俺の弟の奥さんだ。珍しく、自分の旦那に指輪を買って貰って、そしてNYには友人に会いに来たそうだ。友人に指輪を自慢した後に、俺にも自慢したくなったらしい。あのレストランで会ったのは、彼女が泊まっているホテルに近かったからだ」
「・・・随分と出来たシナリオだよね。でも、僕相手にそんな手の込んだ言い訳なんかしなくたっていいよ」
「マイク・・・どうしたら、信じるんだ?」
「何で、僕が信じる必要があるの?・・・いいんだよ、もう」
「俺は君に信じてもらいたい、マイク」
マイクは再び唇を噛んで、ハーヴィーを睨めつけた。そして・・・ようやく口を開くと挑戦的に言った。
「じゃあ・・・キスして。ここで。今すぐに」
どうせ出来っこない。するわけない。そう思って発した言葉だった。
しかし、ハーヴィーはその言葉を聞くと、微かに笑って、マイクの頸に手を伸ばし、その体を引き寄せた。そして、唇を奪った。深く。長く。
周囲から、口笛の音がする。それと微かなどよめきと。
ここはそういう店ではない。普通のカジュアルなバーだ。だから、まさかハーヴィーが本当に自分にキスをするだなんて思わなかった。マイクは驚きのあまり、体も思考も停止してしまった。ハーヴィーはマイクを離すことなく、より一層深く口付け、舌まで絡ませてきた。
ぼうっとなる寸前、ようやくマイクは自我を取り戻し、拳でトンっとハーヴィーの胸を叩いた。それでもハーヴィーは離れない。もう一度、拳で胸を叩く。それを何度か繰り返して、ようやくハーヴィーが少しだけマイクから離れた。そして、
「マイク。俺の本気を甘く見るなよ」
と言って、その腰を掴んで、店を出るべく、力ずくでマイクを歩かせ始めた。もちろん、空いた手には、マイクのジャケットと鞄を持って。
********************
ペントハウスに帰ることはせず、ハーヴィーはマイクを近くのホテルに引き摺り込んだ。もちろん、星が4つか5つはつくホテルだった。そしてその最上階の部屋に連れ込んだ。そしてマイクは抵抗する間も無く、ベッドの端っこに座らせられた。
さっきまでの悪態は何処へやら、マイクは不安そうな表情で、部屋とハーヴィーを見た。そんなマイクには御構い無しに、ハーヴィーはマイクの緩んだネクタイと抜きさり、ワイシャツのボタンを外して脱がせてしまった。
「マイク。翼を」
「・・・・・・」
マイクは膝の上で両手を握りしめた。
「マーイク」
ハーヴィーは床に膝をつき、マイクの頰を両手で包んだ。そんなハーヴィーに対して、マイクは爪が手のひらに食い込むほどに、ますます拳を握りしめた。
「マイク。怒らないから、翼を見せるんだ」
「・・・や・・・だ・・・」
「どうして?」
「だって・・・汚いもん・・・昨日の夜見たら・・・汚くなってた。・・・今日は・・・もっと汚い・・・」
「・・・俺のせいだな?俺が、君を不安にさせたからだな?」
「ち・・違う・・・。僕が・・・嫉妬したから・・・。そういう醜い感情をもったから・・・」
「そうさせたのは・・・俺だろう?」
「・・・ハーヴィーを信じなかった・・・僕が悪いんだ・・・」
「じゃあ・・・今は俺の話を信じるんだな?」
マイクは小さく頷いた。あんな公衆の面前で、あんなキスをされたら、もう信じるしかない。けれども、信じたからと言って、羽がすぐに戻るわけでもない。
「マイク・・・」
ハーヴィーが優しく名前を呼んで、肩甲骨をそっと撫でた。ヒクリ、とマイクの体が震える。
「本当に・・・汚いんだ・・・僕・・・」
マイクは覚悟を決めて静かに目を閉じた。そして背中に意識を集中させた。軽く首を仰け反らせると、バサッという羽音とともに、翼が広がった。そして、すぐに折りたたまれる。マイクが言った通り、その羽は純白ではなかった。けれども、ハーヴィーは愛しそうに、その羽に口付けた。
「ハーヴィー・・・汚いでしょ?・・・僕の羽・・・」
「いや・・・綺麗だ。艶があって、柔らかい」
「でも、白くないんだ・・・」
「それでも、綺麗だ」
「・・・なんで?・・・こんな・・・汚い色なのに・・・」
「色は関係ない。翼を持った君は・・・美しいと思う。翼は君の象徴だろう。君が君である、アイデンティティだ。そうだろう?俺の天使・・・」
「ハーヴィー・・・」
マイクは嬉しくなって、その胸に縋り付いた。
「すまなかったな。君に嫌な思いをさせて」
「違うんだ。僕の嫉妬心が強いのがいけないんだ」
「それは・・・最上級の愛の言葉だな」
「え?」
「嫉妬されるほど、俺は君に愛されているんだろう?」
ハーヴィーは嬉しそうに、ニヤリと笑ったのだった。
********************
その夜は、後ろから犯された。ハーヴィーがマイクの羽を愛撫したがったからだ。背後からマイクの体の奥を突きながら、ハーヴィーはくすんだ羽に口付けた。それと翼が現れる肩甲骨へと。
「ひゃっ・・・あっ・・・あっ・・・」
ベッドに両手を付きながら、体が崩れ落ちそうになるのを必死で堪える。後ろからであっても、いつもと同じ、愛情深いセックスだった。何故、自分は、この愛する人を疑ってしまったのだろう。嫉妬。天使のくせに。自分はまだまだ未熟なのだと思う。愛を疑う天使は・・・本当に堕天使だ。けれども、堕天使であるがゆえに、ハーヴィーと出逢えた。そして愛してももらえた。それはまるで奇跡に等しい。
マイクの陰茎に絡むハーヴィーの指が、滑りで速くなる。前も後ろも刺激されて、頭の中がチカチカする。セックスなんて概念も行為も、ハーヴィーを好きになって初めて知った。愛を確認して、愛を深める行為であることを教わった。ずっと一緒にいたい。天界に帰らず、堕天使のままでいいから、ずっとハーヴィーと暮らしていたい。その方法がたった1つだけある。それは、マイクがハーヴィーの守護天使になることだ。けれども、自分の感情をコントロールできずに、羽の色が変わってしまうようでは、守護天使にはなれない。自分にはまだまだ、修行が必要だと思う。
「マイク・・・何を考えてる?」
「・・・もちろん・・・あなたのことだよ・・・ハーヴィー・・・ねぇ・・・もう・・・イキたい・・・イかせて?」
マイクが可愛らしい声でおねだりをする。
「ああ・・・いいだろう」
ハーヴィーが背後からのストロークとグラインドを激しくする。それに合わせて、マイクの陰茎を握る手にも力を込めた。
「あっ・・・あっ・・・あっ・・・」
マイクの翼が徐々に広がる。ハーヴィーはその絵なかの中心に唇を当て、きつく吸い上げた。
「やぁっ・・・そこっ・・・うそ・・・ああんっ・・・・」
まさか、そんな場所が気持ちいいとは夢にも思わず、マイクは背中を仰け反らせてハーヴィーの手の中で爆ぜた。もちろん、それに合わせるようにして、ハーヴィーもまたマイクの中に白濁を放った。その瞬間、心なしか、くすんだ翼が、光ったように見えたのだった。
********************
くったりとベッドに俯せになって横たわるマイクを眺めながら、ハーヴィーはくすんでしまったその翼を撫でる。けれども、その色を汚いとは思わなかった。やはり、艶があって、滑らかで、心地よい。ハーヴィーはマイクの全てを愛している。翼を含めて、全てのものを。本当なら、天界に帰れないように、鳥籠にでも閉じ込めておきたいくらいなのだ。
「ハーヴィー・・・」
「どうした?」
「ん・・・好き・・・だから・・・僕・・・頑張る・・・」
「何をだ?」
返事はなかった。マイクは、疲れ切って、すうっと、眠りに落ち低てしまったからだ。
ハーヴィーは、蜂蜜色の柔らかな髪と、くすんでいても美しいと思える翼を、飽きることなく、撫で続けた。
END