いつも通りの時刻に出勤して、いつも通りの砂糖とミルクの分量で自分用のコーヒーを作る。そして、さあ、自分の席について仕事だ!と振り向いて1歩踏み出した瞬間、悲劇は起こった。
「うわぁっ!!!」
「うおっと!!!」
ドンっ!
ひゅーん。がっしょーん。
シーン・・・・。
一瞬の静けさ。しかし、それを先に破ったのはモーガンだった。
「おいっ!リード!大丈夫かっ?熱くねーかっ?火傷なんかしてねーかっ?」
「あっ・・・うん・・・だいじょぶ・・・・どこも・・・熱くない・・・けど・・・ごめん・・・モーガン・・・」
呆然とした表情で佇むリード。その体の前面はコーヒー色に染まっている。背後にモーガンがいることに気付かず、振り向きざまにぶつかってしまったのだ。そして、リードとモーガンの両方のコーヒーを引っ被ってしまう結果となった。モーガンの方はといえば、その身体能力の高さ故に、見事にコーヒーを避け、染み一つ、付くことはなかった。
「「「あらあらあらあら」」」
JJ、エミリー、ガルシア。BAUの女子会メンバーたちがわらわらと集まってきた。
「スペンス、怪我はない?火傷はないって言ってたけど、マグカップの破片で怪我なんかしてない?」
「ありがと、JJ,心配してくれて。でも、服が・・・。あ、でも、大丈夫だ!出張バッグの中に着替えが入ってるから!それに着替えてくる!」
「ちゃんと濡らしたタオルで体も拭いた方がいいわよ?絶対にコーヒーの匂いが肌についてるわ」
と、エミリー。
「うん。そうするね」
「新しいマグカップは私がプレゼントするわ。仕事場にいっぱいあるから。新しいコーヒーも入れといてあげる」
「ありがと、ガルシア」
リードは3人の女子に笑顔を向けると、ロッカーに行くべく、踵を返した。
「床は俺が掃除しとくからなー」
これはモーガン。
「あ、ごめんね、モーガン。僕の方が悪いのに」
振り返ったリードの申し訳無さそうな表情に、モーガンは「気にすんな」と返した。
「スペンス。私も一緒に行くわ。髪をまとめるゴムをおいてあるの。さっきポケットを見たらなくって」
「そうなんだ」
男子ロッカーと女子ロッカーは隣り合っている。JJは「行きましょ」と笑顔で声をかけてリードを促した。
********************
ロッカーの中から出張用のバッグを取り出して、中身を確認する。シャツもカーディガンもネクタイもチノパンもある。リードは安心したように息を吐いた。後は、下着だ。2人分のコヒーを全て被ってしまったので、下着まで濡れてしまっていたのだ。
「あれ?」
リードは、こてんっと首を傾げた。下着が見当たらないのだ。
「あれれれれれれ~?」
リードはバッグの中身をポイポイとそこら辺に放り出す。元々、荷物が少ないリードである。バッグはあっとう間に空になった。しかし、パンツはない。
「ど・・・どうしよう・・・え?・・・ノー・・・パン?うー・・・それはやだなぁ・・・」
その時、男子ロッカーのドアがノックされた。
「スペンス?着替え終わった?」
ドアの向こうからJJの声がする。
「あ・・・ま・・・まだっ・・・」
「どうしたの?何かあった?もしかして、やっぱり火傷、してたの?ちょっと!入るわよ!」
「え?ええ?」
リードの返事などお構いなしに、バンっとロッカールームのドアが開けられる。
「スペンス!本当に大丈夫なの!?ちょっと見せなさい!」
JJは問答無用にリードのカーディガンのボタンを外し、シャツをチノパンから引っ張り出す。そして、その薄い腹を見聞し始めた。
「・・・赤くは・・・なっていないわね。ヒリヒリしない?」
「大丈夫だってば。ほんと、怪我とか火傷とかはしてないんだ。ただ・・・」
「ただ?」
「その・・・」
「その?」
「んっとね・・・んー・・・」
「スペンス?」
JJが腕組みをしてリードを睨め付ける。こういうポーズをとるJJは実は怖い。それで、リードは小さな溜息をつくと、小さな声で言った。
「・・・あのね・・・ないんだ・・・」
「?・・・何が?着替え?だったら、モーガンにでも借りる?」
「着替えはあるんだ!シャツとか・・・そういうのは・・・ただその・・・えっと・・・あの・・・」
口調がモゴモゴとなってしまうリード。けれども、JJの目が細くなってきたので、腹を括った。
「あのね!・・・パ、パンツがないの!」
「・・・あら、まあ・・・。じゃ、今日はノーパンね」
「やだよう・・・なんか・・・やだ・・・」
「うふふ、冗談よ。そうね・・・。あ!そうだ!私のあげるわ」
「へ?JJの?」
「そう!この間、通信販売でまとめ買いしたんだけど、私には合わない色があったのよね。それ、スペンスにあげるわ!ちょっと待ってて!」
「え、ちょっと待って!だって、JJは女性で・・・あ、JJ!・・・あー・・・行っちゃった」
走ってロッカールームを出て行ったJJだったが、1分もしないで戻ってきた。そしてその表情は満面の笑みである。
「はい、これ!」
小さな布切れが無理矢理に渡される。片手に納まってしまうほどの布だ。
「じゃ、それに履いて、さっさと着替えちゃいなさい。ミーティングをするって、ホッチが言ってたわ」
「うわ。じゃあ、急がないと!」
「そうよ。余計なことを考えないで、急がないと、よ?」
JJがウィンクをして、ロッカールームを出て行った。それを見送ってから、リードは手の中の布を見た。
「え・・・やっぱ・・・これ・・・そう・・・だよねぇ・・・」
リードは、赤面しつつ、がっくりと項垂れたのだった。
********************
「今朝は悪かったな」
ミーティングの後、モーガンがリードに声をかける。
「え?あ、あー・・・ううん。全然、平気」
「本当は、軽い火傷とかしたんじゃないか?」
「ん?そんなことないよ?」
「そうか?」
訝しげにモーガンがリードを見る。というのも、ミーティング中、リードが心ここにあらず、といった感じで座っていたからだ。発言を促されたら、ちゃんと答えはするのだが、今ひとつ集中力に欠けているような気がしたからだ。
「まあ、だったら、いいけどな。明日から出張だ。また、忙しくな」
ポンポンとモーガンはリードの頭を軽く叩くと、自席へと戻って行った。リードは資料を持っていない方の手で、自分のカーディガンの裾を軽く引っ張った。チノパンを履いているから、その中が見えているわけではない。けれども、やっぱり、気持ちがもぞもぞするのだ。
「ふぅ・・・絶対に、今日は交通事故とかに巻き込まれたらいけない日だ」
リードは小さな声でぽそっと呟くと、明日からの出張に備えて資料を確認しようと、自分の席へと向かった。その時、携帯が鳴った。見れば、それはホッチからのメールだった。
『書類仕事が終わったら、お前の部屋に行く』
ちょっとそっけない短い文面。けれども、それだけで嬉しくなる。明日は一緒に出勤、ということだ。サラダとパスタぐらいなら、リードにも作ることができる。今日は買い物をして帰ろうと思う。この間テレビで観た、小エビとキノコのペペロンチーノは簡単にできて美味しそうだった。レシピは頭に入っている。手順だって完璧に覚えている。こんな時、一度、見たり、読んだりしたことは忘れない能力があってよかったと思う。自分の体がその通りに動くかどうかはともかく、料理は射撃じゃない。なんとかなる。そう思うことにする。サラダは、ちぎったり切ったりした野菜をお皿に盛り付けてドレッシングをかければいい。スーパーには美味しいドレッシングがいっぱい売っている。困ることはない。リードは頭の中で、夕食のことを考えながら、ガルシアから渡された資料に目を通し始めた。
********************
ホッチやみんなよりも早くオフィスを出る。自分のアパートに近いスーパーに寄って、買い物をする。テレビで観たレシピを思い出しながら、食材をポイポイとカートに入れていく。仕事が忙しいことと、ホッチには最愛の息子であるジャックがいることで、二人っきりで会える時間やタイミングは限られている。時々、寂しいと思うことはあるが、ホッチの負担にはなりたくないから、我儘は絶対に言わない。仕事とジャックを優先してもらって構わない。けれども、今日みたいに、ホッチからアクションがあったときは別だった。こんな時は、リードがホッチを独り占めできる時だ。なかなか訪れないタイミング。だから、大事にしたいと思う。けっして得意とは言えない料理をするのも、ホッチが部屋に来るときだけ。でも、それでいい。
リードは、食材の入ったエコバッグを持って、アパートに帰った。時間は決めていないけれども、後2時間くらいしないとホッチは来ないだろう。その間に、することを頭の中で考える。料理は後回しにする。先に朝やらなかったベッドメイク。それから明日の出張の用意。バッグはロッカーにあるから、衣類だけを持って行けばいい。そう・・・そこまで考えて、リードはハッと思い出した。そうだった。着替えだ。まず、自分が着替えなければならない。何故なら、今、リードが履いている下着は、JJがくれた・・・。
リードはカバンとエコバッグをテーブルの上に置くと、慌ててカーディガンのボタンに指をかける。ネクタイも抜き、チノパンも脱ぐ。そして、シャツを脱ごうとしたとき、インターホンが鳴った。
「え?・・・こんな時に来客?・・・宅配便?いや、最近ネットで買い物してないし・・・」
そんなことを呟いていたら、ガチャリと鍵が回る音がした。
ホッチだ。
この部屋の鍵を持っているのは、自分とホッチしかいない。合鍵を使って、ホッチが鍵を開けたのだ。すぐに、ガチャリとノブが回ってドアが開いた。
「・・・ホッチ・・・は・・・早くない?」
「書類の量が少なかった。・・・着替え中だったんだな。悪かった」
ホッチはすぐにドアを後ろ手に閉めた。シャツと靴下だけの、こんな可愛らしい恋人の姿など、通りすがりのアパートの住人には見せたくない。
「こ、この前テレビで観た、パスタを作ろうかな・・・なんて思って、それで買い物してて・・・だから、僕も今、帰ってきたばかりなんだ。で、着替えなくちゃって思って・・・」
「?・・・もう、パジャマにか?」
「いや・・・そうじゃないんだけど・・・その・・・えっと・・・と、とにかく!き、着替えて来るから!ホッチはちょっと座ってて!!!」
リードは慌てつつも、強めの口調で言って、小さなソファを指差した。そして、ホッチに背を向けてクローゼットの方へと行こうとする。しかし、すぐに、ウエストを逞しい腕に掬い取られた。
「や・・・ホッチ・・・」
ホッチはリードの体を背後から抱きすくめると、その耳元で囁いた。
「着替えるのは、俺に見せてからでもいいだろう?何やら、いつもとは趣の違った下着を履いてるそうじゃないか」
「なっ・・・なんで、それっ・・・!」
「JJから聞いた。それもあって、早くここに来たんだ」
そう言いながら、ホッチは左腕だけでリードの体をホールドすると、右手で、シャツの裾を捲り始めた。
「駄目だってば!」
「俺の知らないリードがいる方が駄目、だろう?」
「知らなくてもいいってばぁ!」
ホッチの腕の中でもがくが、鍛えた体躯の持ち主はビクともしない。スッとリードのシャツを臍の辺りまで引き上げた。
「やっ・・・見ないでっ!」
「ほぅ・・・。なるほどな」
ホッチの視界に入ったのは、ブルーグリーンの総レースヒップハングショーツだった。いつもは白いブリーフのリードだから、とても目に鮮やかで意外性もあり、何より非日常的であった。
「もういいでしょ?ねえ・・・着替えて晩御飯を作るから・・・その・・・離して・・・?」
「いや、まずはこちらを食べさせてもらおう」
ホッチはリードを軽々と担ぎ上げると、あまり丁寧にはメイキングされていないベッドへと運んだのだった。
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ホッチがベッドに座り、その膝にリードを座らせる。そしてリードのシャツのボタンを全て外すと背中の方へと回し。緩くであるが、その細い両腕を絡め纏めてしまった。
「え・・・し、縛るの?」
「緩いから、痛くはないだろう?」
「痛くないけど・・・でも・・・なんで?」
「じっくりと見たいから」
「う・・・・・・」
顔を真っ赤にして俯く。そうすると、自分が履いている総レースのヒップハングショーツが視界に入ってしまう。それも恥ずかしくて、リードは顔を横に向けた。本当に恥ずかしい。
「モーガンとぶつかって、コーヒーがかかったんだって?」
「うん。でも、モーガンは悪くないよ?僕の不注意だったんだ」
「そうか。・・・やけどは・・・していないようだな」
「それは大丈夫。全然、熱くなかった。ただ、量が多くて、すごく服が汚れちゃって・・・」
「それで着替えようとしたんだな」
「そう・・・けど・・・」
「下着だけがなかったと」
「・・・うっかり、補充し忘れてたんだと思う」
「まあ、JJから貰ったからいいじゃないか」
「よ、よくないよ!だって・・・だって・・・これ・・・女の子の下着だよ!?」
「しかし、似合ってる」
「に・・・似合ってる?・・・う、嘘!それ絶対に嘘でしょ!だって、僕、女子じゃないもん!」
「BAUの女子枠だと聞いているが?」
「そりゃ、JJやエミリーやガルシアと一緒に出かけることはあるけど・・・でも!僕は男だからね!もう・・・着替えさせてってばぁ」
「却下。スペンスは男だけれども、体が細いから似合うんだな」
「ん・・・」
ファースト・ネームで呼ばれると、弱い。思わず、スイッチが入りそうになる。
「・・・アーロン・・・変だって思わないの?こういうの。僕、変じゃない?」
「全然。早く部屋に来て正解だった。こんなスペンスはなかなか見られないからな」
「・・・楽しいの?」
「そうだな。スペンスといるときはいつでも楽しいと感じるが・・・今夜はまた格別だな」
「僕・・・喜ぶ・・・べき?」
「俺の方が喜んでる・・・」
「アーロン・・・」
ホッチは両手でリードの腰を支えると、その薄い唇をキスを送る。リードもそれを素直に受け止める。最初は唇を合わせるだけのキスが次第に深いものへと変化する。ピチャピチャと音を立てて、互いの唾液が互いの口腔へと移動する。リードの口の中を蹂躙するホッチの舌を追うようにして、リードも必死に舌を動かす。そのうち、じゅっという音と共に舌を吸われる。
「んう・・う・・・んん・・・」
だんだん頭がぼうっとしてくる。ホッチのキスが巧みすぎて、いつもこうなってしまうのだ。リードは瞳を閉じて、唇に与えられる快楽を享受する。そうしているうちに、体全体がホッチを望むようになる。もっと、いろんなところを触って欲しい。それを伝えたくて、唇を離そうとするのだが、相手はそれを許してはくれなかった。だったら、指先で思いを伝えようとしようとしても、今は後ろ手に縛られているので、それもできない。リードはもぞもぞと腰を動かした。すると・・・。
「んっ・・・んんんんんーっ!」
いつに間にか、ホッチの両手がリードの腰から離れ、胸の飾りに移動し、指でそこを摘んだのだ。
「んっんっんっ~・・・」
指先で擦られ、摘まれ、こねくりまわされる。そして、ようやくリードの唇が解放された。
「あっ・・・あっ・・・あっ・・・」
ホッチの手にかかれば、全身が性感帯のようになってしまうリードだったが、最近は乳首を責められることが多くなった。最初は、「女の子じゃないんだから、つまらないでしょ?」とか「女の子じゃないんだから、そんなとこ感じないよ?」と言っていたリードだったが、今では立派な性感帯の1つだった。
「やっ・・・やっ・・・あ・・・・やっ・・・ホッチ・・・」
名前を呼んだ瞬間、痛いほどに指先で乳首を潰される。
「あうっ・・・いっ・・・」
「スペンス?」
「あ・・・ごめんなさい・・・ア、アーロン・・・」
プライベートなときは、ファースト・ネームで呼び合うのが二人の約束事だった。
「痛かったか?」
リードはゆるゆると首を横に振った。
「き・・・きもち・・・い・・・は・・・ふ・・・」
ホッチが視線を下に落とすと、形を成したリードのそれが、レースの生地を押し上げているのが分かる。女性用の下着のせいで、一層エロティックに感じられる。意識しているのか無意識か、ホッチの膝の上で、リードが腰をもぞもぞと動かしている。折った膝。その先には左右で柄の違う靴下に包まれた足。この姿を見ただけで、明日からの出張も頑張れそうな気がしてくる。
「イきたいか?」
コクコクとリードが頷く。
「それなら、ここだけで・・・イくといい」
そう言って、乳首への責めを再開する。
「やぁ・・・ん・・・ん・・・も・・・そこだけ・・・?」
「嫌いじゃないだろう?スペンス」
「ん・・・」
リードは目を閉じると、ぽてんっと額をホッチの肩に乗せた。そして、彼の指先の動きに集中する。
確かに、嫌いではない。ホッチが与えてくれる快楽は全て好きだった。最初は、「女の子じゃないんだし」という思いもあったが、確かに、もはや胸は、感じる場所の1つとなってしまった。摩られ、弄られるのも良かったが、実のところ、痛いくらいに摘まれ、責め立てられることが好きな場所だった。何故かはわからない。ただ、優しくそこを触られると、物足りなさを感じてしまうのだ。それを知ってか知らずか、ホッチの指はソフトタッチだった。リードは唇を噛む。イきたいのに、イけないもどかしさを感じる。リードを顔をあげると、ツンっと胸を反らし、ホッチの方へと突き出した。
「お願い・・・アーロン・・・もっと・・・酷くして?」
うるうるとした瞳をもって願いを伝える。
「そんな可愛らしい願いは聞き届けないとな」
そう言って、指先に力を込める。潰すように摘み、軽く引っ張る。
「ひっ・・・あっ・・・あああああああっ・・・あ・・・んあっ・・・」
欲しかった刺激。その強烈な痛みに、リードは自分の太腿でホッチの脚を挟み、体を仰け反らせる。ホッチは剥き出しになった喉に唇を這わせ、グリッと乳首を捻るようにして、責めた。
「やあっ・・・あああああ・・・んっ・・・んっんっんっ~・・・」
リードの身体が硬く緊張する。しかし、その後ゆっくりとし弛緩し始めた。その身体が後ろに倒れそうになるのをホッチが支える。それが自然と細い体を抱きしめる形となる。グリーンブルーの下着を見れば、レース生地の細やかな隙間から、白濁が滲んでいるのが分かる。ぐっしょりと白いブリーフを濡らす様を見るのもいいが、これもいい。ホッチに凭れかかって、浅い呼吸をしているリードの手首を戒めているシャツを解いてやる。
「・・・アーロン・・・」
リードはゆっくりと両腕をホッチの首に絡ませた。
「・・・ふふっ・・・やっと・・・アーロンに触れたぁ・・・」
嬉しそうにリードが言う。
「イけたか?」
分かり切ったことをわざと言ってやる。
「・・・ん・・・」
顔を赤らめながら、リードは小さく頷いた。
「・・・ね?・・・もう・・・これ、脱いでいい?」
「駄目だな」
「えええええっ」
リードが目を見開く。もう、この小さなレースの布地から解放されると思ったのに。
「もう少し、楽しみたい」
「うう・・・僕ばっかり。・・・アーロンは、まだ服も脱いでないのに」
ホッチはジャケットを脱いだだけで、ネクタイもそのままだった。そんなホッチの襟元にリードの指がかかる。
「脱がせても・・・いい?」
「ああ」
リードは目を輝かせると、いそいそとホッチのネクタイを解き始めた。それからワイシャツ。鍛えられた胸筋が露わになる。本当に自分の貧相な体とは大違いだと、リードは思う。そんなことを考えていたら、急にホッチに押し倒された。
「え?やだ。まだ、全部、脱がせてないのに~」
「いいから」
リードの身体をシーツに縫い留めると、自分でベルトを外し、スラックスも脱ぐ。リードに脱がせてもらうのも嫌ではないが、今は早く、この細い身体を堪能したい。
ホッチは指先で、濡れたレース生地をひと撫でした。
「んっ・・・駄目・・・僕、イッたばっかりで、触られたら・・・変になっちゃう・・・」
「変になればいいだろうに」
濡れた生地で指先を湿らせると、リードの両足を抱え上げ割り開く。ショーツを脱がすことなく、ただずらすだけにする。そして、露わになった後孔に、つぷりと指先を差し込んだ。
「あ・・・う・・・」
ホッチとキスを交わしていた時から疼いていた場所に刺激を与えられて、悦びの吐息が上がる。
「んっ・・・くぅ・・・あ・・・そこ・・・あ・・・や・・・」
身体の中のぷくりと膨れた部分を探し当てて、そこを押すようすると、リードの声が次第に甘ったるくなってくる。
「あ・・・や・・・ら・・・そ・・・そこ・・・んぅ・・・んん・・・んあ・・・あ・・・アーロン・・・」
伸びてきたリードの腕を受け入れるように、ホッチは上半身をリードに近づける。そうすると、自然とその細い体は折りたたまれる形になる。
「欲しいか?」
「ほ・・・ほし・・・アーロン・・・ほし・・・い・・・よ・・・ちょう・・・だい・・・アーロンの・・・ね・・・?」
ホッチは臀部のレースをさらにグイッとずらすと、既に昂ぶっている自分自身の切っ先をリードに当てがった。その刺激にリードは吐息を漏らす。そして、腕をホッチの首に絡め、受け入れる体勢を整える。ホッチは、ほぼ真上から押さえつけるようにして、ズブズブとリードの中へと入っていった。
「あっあっあっ・・・ああっ・・・アーロンっ・・・んっ・・・すきっ・・・もっと・・・ひどくしていいからぁっ・・・」
その言葉を聞いて、ギリギリまで引き抜いてから、勢いよく再奥まで突き上げる。それを繰り返す。何度も。何度も。何度も。
終わることのない抽送。
リードはそれを享受する。
この体は、もう自分のものではない。愛する人のものだ。だから、自分は壊れてもいいし、どうなってもいい。この繋がりがあるだけ、自分は幸せになれる。今、自分は幸福の真っ只中にいる。今だけは、この愛する人は自分だけのものになる。
「アーロン・・・すき・・・もっと・・・もっと・・・ひどくして・・・だい・・・すき・・・」
そんな言葉をリードが口から零す度に、中できゅうきゅうと締め付けられる。ホッチはその心地良さに軽く眉を潜めながら、自分もまたその快楽を受け入れる。自分はどれだけ、この可愛らしい恋人を我慢させているのか。仕方のないこととはいえ、罪悪感はある。ホッチは、リードの唇を吸い上げながら、身体の奥を責め立て、そして可憐な乳首を抓り上げた。おそらく、これが身体の下で喘いでいる恋人が、今、望んでいることだ。
「は・・・あ・・・アーロン・・・も・・・い・・・く・・・イっちゃう・・・」
「そうだな・・・いいぞ・・・」
ホッチは真上からプレスするように、グイグイと体の中の行き止まりのような部分に先端を押し付けた。
「ひあっ・・・あーっ!!!!」
揺らめいていたリードの脚が、ホッチの背中に絡む。よりいっそう、自分の体を愛する人に密着させるかのように。ビクビクと震える身体の中へと、ホッチもまた白濁を放った。
********************
「小エビとキノコのペペロンチーノ・・・」
「ん?」
「今夜、作ろうって思ってたんだ」
「・・・しかし・・・スペンスの身体は動きそうにないな」
「うう・・・」
悲しそうな表情をするリード。そんな彼を見て、ホッチはラフに衣服を身につけると立ち上がった。
「俺が作ろう」
「でも!・・・レシピは僕の頭の中にあるんだ・・・・・・」
「ふむ」
こういうところは、妙にリードはこだわる。自分の頭の中にあるレシピ通りのパスタでなければ、納得はしないのだろう。
「絶対に美味しいよ、そのパスタ」
「わかった。じゃあ、教えてくれ。その通りに作るから。キッチンに椅子を持ってきて座っていれば、身体は辛くないだろう」
「うん!あ、じゃあ、着替えるね。もう、JJがくれた下着、ぐっしょりなんだもん」
ぷうっとほっぺたを膨らませるリードはリスみたいだった。しかし。
「ああ。そうだな。それなら、これに履き替えるといい」
ホッチは鞄の中から小さな紙袋を取り出した。
「なあに?それ」
「JJが寄越した。君に、と言っていたぞ」
ニヤリと笑いながら紙袋を渡してくるホッチに訝しげな視線を送りながら、リードは紙袋を受け取った。そして中身を取り出して小さな悲鳴をあげる。
「やだー!!!もうっ!!!僕は男だってばぁ!!!!!」
「そう言うな。グリーンブルーもいいが、その色も似合うと思うぞ」
リードの手の中には、可愛らしいショッキング・ピンクの総レースヒップハングショーツが握られていたのだった。
「さあ。さっさとそれに履き替えて、パスタのレシピを教えてくれ」
「・・・履かなかったら・・・?」
「・・・パスタは・・・作らない」
「ううう・・・アーロンの意地悪ぅ・・・」
「どうする?」
「・・・わかったよぅ・・・。でも、恥ずかしいから、履き替えるところは見ないで!」
「もっと恥ずかしいことはしているのに?」
「あれとこれとは別なの!」
「あーわかったわかった。じゃあ、先にキッチンで準備をしている。だから、早く来い」
キッチンへ行くホッチの背中を見送り、リードは項垂れる。
「もう・・・JJったらぁ・・・」
けれども、自分の精液で濡れてしまったショーツは早く脱ぎたい。そしていつものブリーフだとホッチはペペロンチーノを作ってくれない。
リードは覚悟を決めた。どうせ、今夜だけのことだ、と。
ショッキング・ピンクの総レースヒップハングショーツを履き、その上にさっき脱いだシャツを羽織ってベッドから降りる。その時、キッチンから声がかかった。
「スペンス。シャツの下の方はボタンを留めるな」
「え?なんでー?」
「せっかくの下着が見えないから」
「・・・ア、アーロンのエッチ!!!!」
リードの悲鳴にも似た叫びこ声が、小さなアパートの部屋に響いたのだった。
END