ホッチを見送ったリードは、紙箱を大事そうに両手で抱えると、自分の部屋に戻った。優しく箱をベッドの上に置くと、丁寧に身体を清めた。ホッチが愛してくれた身体だから、そこはかとなく嬉しい。身体を綺麗にした後、古くてゴワゴワになってしまっているバスローブを着ると、ベッドに腰掛けた。小さい方の箱を開けると、1つずつ銀紙で包まれた、少し小さめのお菓子が入っている。リードは1つ手にとると、包装を剥がしてみる。チョコレートだった。
「うわぁ・・・美味しそう・・・」
リードは茶色い繊細な塊を口に入れた。甘い。ちょっと歯を立てて齧ってみる。それは、想定外にホロリと砕けた。そして口の中に広がる、トロリとした液体。
「んっ!?」
甘い。しかし、甘いのだが、カッと熱くなるような・・・味。
「・・・お酒?」
お酒自体、飲んだことはないが、ジュースとは思えない。やはり、お酒なのだろう。ゴクリと飲み込むと、喉まで熱くなるような感じがした。けれども、嫌な味ではない。正直、美味しかった。チョコレートを1つ味わった後、今度は大きめの箱を開ける。予想した通りランジェリーだった。紫色のスリップ。その上に羽織るであろう薄衣。もちろんパンティも紫色だった。紫はリードが好きな色だ。リードはちょっと嬉しくなった。自分が好きな色を教えたわけでもないのに、ホッチが紫色を選んでくれたことが嬉しかった。パンティを取り上げる。フロントは綺麗なレースだ。しかし。斜め後ろに2本の紐。完璧にお尻の割れ目が見えてしまうデザインだ。
「え・・・っと・・・」
経験がなくとも、男が男を受け入れる時に使う場所を知らないリードではない。思わず、顔が赤くなる。
「もしかして・・・そういうこと・・・なのかな・・・?」
リードは胸がドキドキとしてきた。
********************
「ねえ、エル・・・僕、どうしたらいいかな?」
「ん?・・・あ、美味しい、これ!ウィスキー・ボンボンね!」
リードはホッチに貰ったお菓子を持って、エルの部屋に来ていた。男と女の違いはあるが、エルは物知りだ。
「で、どうしたらって・・・何が?」
「んっとね。ミスター・ホッチナーが、これを僕にプレゼントしてくれたんだ。今夜は・・・これを着て欲しいって」
リードは小綺麗な紙箱から、紫色のパンティを取り出してエルに見せた。
「わお!すっごく綺麗な紫色ね!それに、セクシーだわ。うふふ。何だか、ミスターの気合いを感じるデザインね」
「やっぱり、そう思う?・・・だからさ、僕、どうしたら上手にできるかわからなくって・・・」
「え?何を言ってるの、リード。初めてじゃあるまいし」
「・・・・・・・・・・・・」
エルの言葉に、リードは黙ってしまった。何故なら、まだホッチとは一線を超えていなかったからだ。
「・・・え・・・まさか・・・嘘・・・嘘でしょうっ!?リード・・・貴方達・・・まだなの!?」
リードはコクリと頷いた。嘘をついても仕方がない。
「貴方・・・あの紳士の専属になったんでしょ?何回かいらっしゃってるでしょ?それなのに?」
エルの声が大きくなる。リードは情けなく、そして恥ずかしくなってしまった。
「・・・やっぱり・・・僕に魅力がないのかなぁ・・・」
「それはないわよ。だって、ちゃんと通って来てくれるんだし、こうやって贈り物だってしてくれるんだから。・・・あ・・・」
「何?エル」
「・・・もしかして・・・勃たない・・・とか?そんなにお年を召した方じゃなかったと思うけど。・・・リード確かめてみた?」
「それは・・・その・・・してないけど・・・」
そうは言ったが、昨夜衣服を脱がせた紳士の身体はとても立派だったと思う。もちろん、じっくりと見たわけではなかったが、・・・あそこも。背後から抱きしめられたときに、腰の辺りに当たる熱も感じた。
「・・・じゃあ・・・」
エルが呟くように言う。
「きっと、リードは大事にされているのね」
「えっ・・・」
「だって・・・所詮、私たちの仕事って、単なる紳士の性欲処理でしょ?愛とか恋とか、そう言うのとは無縁の世界の中に生きているわけでしょ?・・・私なんか、お金は貰うけど、お菓子やランジェリーなんて贈って貰ったことなんてないわ。あ、これは、やっかみじゃないわよ?私は自分の身分や立場を心得てる。それに、自分で選んだ道だしね。・・・だから、分かるの。リードは大切にされてるんだって。最後まで抱かないにも関わらず、素敵な贈り物をして貰えるんだから」
「・・・そっかぁ・・・」
「でも、リード。今夜はキメるわよ、その紳士。だって、こんなパンティだもの」
エルがニヤッと笑う。
「あ、やっぱりそう思う?」
リードの目が上目遣いになる。
「そりゃそうでしょうよ。だって、お尻丸出しだもの」
「・・・だよね」
「怖い?」
「ううん。怖くない。・・・あ、でもちょっと怖いかな。ミスターを満足させられなかったら、怖い」
「あ、そっち」
「うん。・・・そりゃ、知識としては、何となくわかってるけど・・・僕、ちゃんとできるかなって」
「そうね。・・・んー・・・ねえ、リード、クローブ油は持ってる?」
「あ、うん。女将さんが、くれたけど。何に使うのかなぁって思ってた」
「まったく。ストラウスったら、中途半端なんだから」
エルは溜息をついて、指摘する。
「えっとね、リード。自分の何処を使って紳士を受け入れるかはわかってるわよね?」
「うん。僕は女性じゃないから、それはわかってる」
「普通、そこって何かを入れる場所?」
「違う。排泄器官」
「ダイレクトに言うわね。でも、まあ、そう。合ってる。だからね、受け入れるときって、すっごく痛いらしいの。怪我をするときもあるって聞いたことがあるわ」
「うん」
リードは物凄く真剣にエルの話を聞く。
「だからね、滑りを良くするためにオイルを使うのよ。クローブには麻酔作用もあるから、少しは痛みが軽くなると思う」
「そうなんだー。エルって物知りだね」
「っていうかね。知らないで、受け入れて、お尻が壊れちゃったらどうするのよ」
「そ、そうだよね」
「やっぱり、怖くなった?」
「ううん!僕、頑張る!」
「あ、それとね、先に口で奉仕するといいわよ。まあ、それはもうやってるか」
「・・・・・・・・・・・・」
「え?・・・それも・・・してないの?」
「・・・させてくださらないんだ」
しょんぼりとリードが言う。
「・・・はぁ・・・相当ね。本当に大事にされ過ぎ」
呆れながらも、嬉しそうにエルは言った。
********************
夜の帳が下りて来たので、リードは緋色の部屋に蝋燭を灯した。身に付けているランジェリーは当然、ホッチから贈られたものだ。ほとんどお尻が丸出しになってしまうパンティがギリギリ隠れるくらいの丈のスリップ。その上に、透ける薄衣を羽織る。色はどれも紫色。以前、女将のストラウスから貰ったクローブ油の小瓶を何処に置こうか考える。ずっと手に持っているのもおかしい。だったら、ベッド横の小さなテーブル?・・・いや、それもなあからさまだな、と思う。結局リードは、小瓶を枕の下に押し込んだ。そして、枕を整え終わったとき、丁度ドアがノックされて、重たい扉が開いた。
「あ、アーロン!」
駆け寄れば、ちゃんと抱き締めてくれる。
「今夜は、少し早く来ることができた」
「お仕事は大丈夫ですか?」
「ああ。ちゃんと終わらせて来たさ。朝は悪かったな」
「そんなことないです。また、こうして来ていただけて嬉しいです。それと、美味しいお菓子もありがとうございます。エルが、ウィスキー・ボンボンだって教えてくれました。初めて食べました。あれって、お酒が入ってるんですね」
「ああ。リキュールが入っている。・・・そうか・・・君は酒を飲んだことはなかったか。・・・それはまずかったな。違う、もっと甘い菓子にすればよかったか」
「そんなことないですよ?とっても美味しかったです。喉が一瞬、カッて熱くなりましたけど、ちゃんと甘い味も口に広がりました」
「そうか?気に入ったか?」
「ちょっと大人のお菓子ですね。それと・・・これもありがとうございます。これは僕の好きな色なんですよ?」
リードが薄衣を触りながら言った。
「そうか。スペンスに似合うだろうと思ってはいたが・・・こうして着ているのを見ると、俺の見立ては間違っていなかったな」
「あの・・・今日は・・・僕にご奉仕させていただけますか?」
「そうだな。しかし、無理はしなくていいんだぞ?」
「無理じゃないです。・・・貴方に・・・アーロンにもっと触れたいです!」
真剣な眼差しをホッチに向ける。ホッチはリードの金髪をひと撫ですると、すいっと身体を掬い上げるようにして横抱きにした。
「歩けますよ」
「紳士はこうするものなんだ」
その言葉に、リードは素直にホッチの首に腕を回した。そこそこ広い緋色の部屋とはいえ、ベッドにはすぐに着く。リードはガラス細工を扱うかのごとく、静かにベッドに降ろされる。そしてホッチもベッドに乗り上げた。リードは綺麗にベッドの上に座り、ホッチの着衣に手をかけた。上等な生地を痛めないように、一枚ずつ、丁寧に脱がせると、これまた丁寧に畳んで整え、ベッド脇のテーブルの上に置く。それを数度、繰り返した。逞しい、鍛え上げられた身体が現れる。
「・・・凄いや・・・」
「どうした?」
「貴方の身体・・・とてもかっこいいです」
言いながら視線を下に落とすと、ホッチの分身はすでにいきり勃っていた。リードは自分の肘と膝で身体を支え、腰を高く上げて四つ這いになると、ホッチ自身に
唇を寄せて、ちろりと先端を舐める。ほろ苦い味が口の中に広がったが、決して嫌なものではなかった。菓子とはとは違った意味で美味しいと思った。そして、ようやく自分の口で奉仕できる喜びも味わう。嬉しくて、幸せな気分。自然と高揚感が生まれる。リードは深く咥え込むと、じゅうっと吸い上げてみた。口の中で、ドクンと脈打つのがわかる。それからは、舌や唇を使って一生懸命奉仕する。そう。昨夜、ホッチが自分にしてくれたことを思い出しながら。リードが奉仕する間、ホッチはゆっくりと静かに優しく、リードの金髪を梳いてやる。時折、耳朶や頰をするりと撫でる。
「ん、ん・・・んん・・・んぐ・・・」
あまりにも一生懸命なリードの姿に、ホッチは堪らなくなった。そこで、リードの頰を両手で包み込むと、そっと自分から引き剥がした。
「は・・・あ・・・」
リードの唇が唾液とホッチの先端から滲み出た体液で光っている。
「・・・あ・・・今夜は僕にご奉仕させてくださるって言ったのに・・・」
リードが濡れた唇を軽く尖らせる。
「奉仕に使う場所はここだけじゃないだろう?」
ホッチがリードの唇を親指の腹でなぞった。そして、そのまま、身体のラインを辿りながら、スリップが捲れ上がって完全に見えてしまっている、桃のような双丘を掴み、割り開く。
「あ・・・」
普段は隠れている襞が空気に晒される。
「あ・・・アーロン・・・?」
「嫌か?」
リードは首を横に振った。
「そんなこと、あるわけないです。あ・・・でも・・・ちょっと待ってください。準備しますから」
「準備?」
リードは身体を起こして微笑むと、枕の下に片手を突っ込んだ。そしてクローブ油の小瓶を掴んで引っ張り出す。
「ちょっと待っててくださいね」
リードが小瓶の蓋を開けようとするのを、ホッチが止めた。そして容易くリードの手から取り上げてしまう。蓋を開けて香りを嗅ぐ。
「ほう・・・クローブか」
「あ・・・返してくださいませんか?・・・僕、ちゃんと準備しますから・・・」
「断る」
「・・・・・・」
リードは、唇を噛んだ。自分が否定されたと思ったのだ。それが表情に出てしまったらしい。ホッチは困ったように笑うと、優しい口調で言った。
「俺が準備をしてやりたいと言ったら・・・嫌か?」
「え・・・そんなのダメです。それは僕がしなくっちゃ・・・」
「どうして?」
「どうしてって・・・それが・・・その・・・僕の仕事ですし・・・」
「・・・仕事・・・か・・・」
ホッチはリードの脇に手を差し込み、軽く持ち上げると自分の膝の上に座らせる。
「君が・・・今まで俺と同衾していたのは、仕事だから?それだけか?」
「・・・・・・・・・・・・」
リードは考える。身体を売るのが自分の仕事だ。しかも自分はこの紳士に買われた身だ。けれども、純粋にアーロン・ホッチナーという人間に会うことを、いつも心待ちにしている自分がいたのも事実だった。お金も贈り物も関係なく、ただ、紳士を恋しく思った。だからリードは言った。
「僕・・・貴方に会えるのが嬉しくて・・・貴方が来てくださらなかった1週間は本当に寂しくて、辛くて。僕・・・貴方に会えるだけで・・・幸せ・・・」
「そうか。それを聞いて、俺は嬉しい」
「嬉しい?」
「ああ。そういうのを何ていうか知ってるか?」
「・・・・・・」
リードは首を傾げた。
「・・・『愛してる』・・・というんだ」
「愛・・・してる?」
リードは驚いたように目を見開いた。
「そうだ。それに、俺も君を愛してる。だから、俺とスペンスは対等なんだよ」
「・・・対等?」
リードにとってはとても恐れ多い言葉。自分が貴族と対等だなんて有り得ない。
「スペンス・・・愛してる・・・」
言いながら、ホッチはクローブ油を手に取ると、指でリードの双丘の隙間をなぞった。少しずつ、その狭間の深いところに指を侵入させる。
「あ・・・」
ホッチの指先が、リードの入り口に触れる。
「力を抜くんだ。ゆっくりと呼吸をして」
窄まりを撫でるように擦り摩る。そして、つぷっと差し込む。
「はんっ・・・あ・・・」
初めて経験する感触に、リードの身体が震える。まるで、全身に電気が走ったようだった。
「ゆっくりと四つ這いになれるか」
リードはホッチの指を後ろに咥え込んだまま、何とか、ホッチが求める態勢をとる。紫色の薄衣もスリップも大きく捲れ上がり、高く上げた白い臀部が露わになる。ホッチにとってはとても良い眺めだった。リードの背後に回り、ゆっくりと指の抜き差しを続ける。時々、ぐるりと大きく指を回す。その度、リードの声が上がる。
「んっ・・・あっ・・・」
「辛くないか?痛くはないか?」
「だ・・・大丈夫・・・です・・・でも・・・何だか・・・変な感じ・・・んっ・・・」
リードの様子を伺いながら、指の本数を増やす。クローブ油のせいもあるのだろう。後孔は容易く開き、素直に指を受け入れた。
「う・・・あ・・・」
口から漏れ出る声質は、苦しそうなものではなかった。快楽のせいと思うのは、ホッチの独りよがりだろうか。しかし、この痴態を見ると、もっと先へと進みたくなる。ホッチはスッと指を抜いた。十分に解された後孔がぽっかりと緩んでいる。襞も物欲しげにひくついている。ホッチは再度クローブ油を手に取ると、自分の剛直を扱いた。それから、リードに宛てがい、ゆっくりと腰を進める。高く突き出された尻を掴んで。
「は・・・ぐっ・・・うう・・・」
「さっきも言っただろう?力を抜いて・・・ゆっくりと呼吸をして・・・できるか?」
リードは、うんうんと頷いた。返事はできない。自分を貫く太い物を受け入れることで頭がいっぱいになる。しかし痛くはないし、苦しくもない。愛する人を受け入れることができた喜びがあるだけだ。ホッチはゆっくりと突き上げ始めた。奥へ奥へと自分を穿つ。緑のランジェリーを纏い、揺れるリードの身体が美しい。
「スペンスの身体はとてもいいな。見た目も美しいが、中も最高級品だ」
「んっ・・・んっ・・・んっ・・・」
もう、リードはホッチの律動に併せて、うめき声をあげることしかできなかった。けれども、ようやくきちんとホッチに抱いてもらえたことがこの上なく嬉しかった。
「スペンス、前も触るぞ。そうしたら、もっと気持ちが良くなるから」
リードの返事は待たずに、ホッチは片手を前に回し、軽く勃っているリードの可愛いモノを包み、扱き始めた。
「あっ・・・はっ・・・あんっ・・・ああんっ・・・ひあ・・・」
リードの漏らす声が艶めき始める。ホッチは思わず、舌なめずりをした。この美しい青年を、自分だけのものにしたいと思った。綺麗な部屋に閉じ込めて、ずっと可愛がり、愛したいと思った。けれども、それは、この青年がもつ才能を潰すことになるだろう。もっと、別な形で花開かせてやりたいと思う。
「スペンス・・・いいぞ・・・締めつけ方がとても上手だ」
言われて、リードはぎゅっと後ろに力を入れた。
「はっ・・・す・・・好き・・・アーロン・・・好き・・・んんうっ!!!!」
ホッチの手の中でリードの果実が爆ぜる。その熱さを手に感じながら、ホッチは抜き差しを激しくしたのだった。