Baby On Board

新たなミッションの為に再びトップガンの卒業生、トップ・オブ・ザ・トップたちが召集された。作戦指導者はピート”マーヴェリック”ミッチェル。伝説のアヴィエイター。彼はモニターを使いながら、ミッション完遂のために必要な訓練内容を説明していた。

が。

「あれ、人形じゃないよな」

「手が動いてるし、『あぶあぶ』言ってるからな、生物だ」

「だよな。人形の方がかえって怖いよな」

「しかし、片手で抱っこできるなんて、大佐の筋力もすげーけど、あの赤ん坊のバランス感覚もすげえよな」

「親子なら分かるし」

「んなわけねえだろ。いつ産んだんだよ。雄鶏知ってる?」

「知るか。こっちが聞きたい」

「伝説のアヴィエイターが産休を取ったらすぐに噂になるだろうが」

「大佐って産休はとっても育休は取らなさそう」

「言えてる。産んだ翌日には飛んでそうだよな」

「わかるー」

「ところで父親は誰だよ」

「そんな当たり前のこと聞くなよ。違う名前が出てきたら、不敬罪で首が飛ぶぞ」

「だよな。やっぱ海軍大将だろ。結婚してるんだし」

「強いなー、海軍大将」

「でも、高齢出産だよな。産める?」

「いや、年齢の問題じゃねえだろ」

「いやぁ、生命の神秘だよな」

「あ、わかった!大佐って実はΩだったんじゃない?」

「おいおい。そこで特殊BL設定を持ち出してくるんじゃねえよ」

「何それ」

「オメガバース。今度、詳しい薄い本を貸してあげる」

「いや、いい。何か違う扉を開けちまいそうだから」

「んじゃあ・・・処女受胎だ」

「なるほどなー。マーヴェリックのMはマリアのMか!」

「そう言えばさー、処女受胎の告知したのガブリエルじゃん?あるドラマでガブリエルを演じた役者がシンプソン中将にそっくりなんだよなー」

「え?何?シンプソン中将が大佐に『あなたは孕って男子を産むが、その子をイエスと名づけなさい』って言うのか」

「ちょっと待て。マーヴが処女だって思うか?結婚30年だぞ?」

「あーないわー」

「だろ。あそこレス夫婦じゃないし」

「じゃ、やっぱり大将の子じゃん」

「強いなー、海軍大将」

「でも、高齢出産だよな。産める?」

「いや、年齢の問題じゃねえだろ」

「いやぁ、生命の神秘だよな」

・・・以下、エンドレス。

つまり、若鷹たちに講義するマーヴェリックは左腕で赤ん坊を抱えているのである。

「と言うことで、今日はドッグファイトと行こう。でも僕はこの子がいるから今日は飛ばない。代わりに君たちの相手をしてくれる優秀なアヴィエイターを紹介しよう。1988年のトップガン首席だ。

「「「「ええっ?」」」」

若鷹たちが振り向くと、そこにはパイロットスーツに身を包んだボー”サイクロン”シンプソン中将が立っていたのだった。

「出た!ガブリエル!」

「ちげーしっ」

戸愚呂を巻く蛇とトルネードを背負った88年のトップが、不敵に笑うのを見て、若鷹たちは背筋を凍らせたのだった。

***

「どうだ。ドッグファイトは」

「あ、アイス。さすが、サイクロンはトップガン首席だねー。キルしまくってるよ。あ、抱っこする?」

「ああ」

マーヴェリックから赤子がアイスマンに渡される。それを器用にあやしながら抱く。

「あぶあぶ・・・あっぶー・・・ぶぶーきゃっきゃっ!」

「僕や君みたいに空が好きみたいだよ」

「そのようだな」

無線からは若鷹たちの声が聞こえる。

「やだー!キルするならサクッとして欲しい!!!!」

「げっ!背後取られた!!」

「そこからが長いぞ!」

「すんげーいたぶられている気分!!!」

「オメーそこどけろよ!」

「しゃあねえだろ!サイクロン機が被さってきてんだよっ!ぎゃー!!!」

その声をアイスマンとマーヴェリックはニコニコしながら聞いてる。

「楽しそうだねー」

「明日は私は赤ん坊を預かるから、マーヴェリックが飛ぶといい」

「大丈夫なのか?」

「さっき、執務室に赤ん坊スペースを作らせた」

「さすが、仕事が早い」

仲良し海軍夫婦は、とても幸せそうに赤子をあやしながら、空を見上げたのだった。

***

「で?マーヴ。お願い。説明して」

アイスマンとマーヴェリックの家。ソファに座ったルースターが半泣きになっている。反対側に座るのはアイスマンとマーヴェリック。赤ん坊はマーヴェリックが抱いている。

「ああ。この子はね、ペニーの友人の子だよ。本当はペニーが預かるはずだったんだけど、都合が悪くなっちゃって。でも友人は数日出かけなくちゃいけないしで。それで僕が預かることにしたんだ。ほら、赤ん坊の世話は、君で・・・ブラッドで慣れているからね」

そしてキラキラと何かよくわからない神々しい光を放って笑うマーヴェリック。あ、これは最早、聖母マリアの光背じゃんよ。とはいえ、赤子の出自がわかったので、とりあえず納得するルースター。

「しばらくはこの子を連れて基地に行くけど、明日はアイスが執務室で預かってくれるから、ドッグファイトは僕が飛ぶね」

「は?え?海軍大将が子守すんの?いいの?」

「別に問題はないぞ、ブラッド」

アイスマンがツラッとした表情でいう。その表情を見て、「’あー・・・絶対に権力を持たせちゃいけない人だったんじゃね?アイスおじさんって。大体、マーヴを飛ばせ続けるために海軍大将まで昇進するって・・・公私混同も甚だしいよ」と、心が遠い目になるルースターだった。

「マーヴェリック、サイクロンからテキストだ」

スマホを操作していたアイスマンが言った。

「何だって?お説教?」

「明日のドッグファイトも飛ぶそうだ」

「え!じゃあ、僕と一緒にルースターたちを特訓するってこと?」

「明日だけは、僚機の座をサイクロンに貸してやろう」

そんな二人の会話を聞いて、心の中でルースターは十字を切った。

END