地上の楽園 赤い風車外伝

ホッチの身体の上に座るリードは、ゆっくりを上下に自分の細い身体を動かしていた。自分が咥え込んでいるホッチの甘い凶器を味わうかのように、抜き差しを繰り返していた。緋牡丹の襦袢は肩から滑り落ち、腕に絡みついているだけだった。ホッチの腹に指先を置き、自分の後孔に感じる質量を楽しんでいる。それが表情に無意識に表情に現れているのだろう。ホッチは感じ入っているリードを眺めながら、好きなようにさせていた。

「ん・・・ん・・・ふ・・・」

小さく開いた唇から漏れる声は可愛らしい。そのうち、自分の胎内の当たると良い所を見つけ、そこを擦っても貰えるように、リードは身体の位置をずらした。上体を少し傾けて、今度は前後に動くようにする。そうすると、大好きな場所にホッチの太くて大きなものが当たるのだ。

「ふ・・・ん・・・あ・・・あんっ・・・」

リードの声は一層甘くなり、ホッチの耳を心地よく掠めた。

「あ・・・あ・・・ん・・・いいよぅ・・・」

リードを頭を横に振りながら、快感を享受する。ホッチの腹に着いていた手を、自分の股間へと移動さえようとしたら、ホッチの手の方が早かった。握り込まれて、すぐに扱き始められた。

「ひゃ・・・はんっ・・・ああんっ・・・」

自分でするよりも、ホッチに愛された方がずっと気持ちが良い。それゆえ、次第にリードの腰の動きが疎かになった。けれどもホッチは気にはしない。自分が突き上げてやればいいだけの話だ。ホッチは片手でリードの腰を支えながら、下から身体を抉ってやった。

「きゃ・・・あ・・・ああんっ・・・」

前と後ろを甘く責められて、リードは可愛らしい、喘ぐ声が溢れた。

「ふ・・・ん・・・んん・・・んんんっ!・・・は・・・あ・・・」

グリッと、いい場所を擦られ、奥を突かれて、リードは息が上がる。胎内の奥底から、じわじわと快楽が肌の表面に滲み出てくるような感じがする。もう、吐き出してしまうことを我慢できそうになかった。リードが白い喉を仰け反らせる。何度も抱いている身体だ。それが何を意味するか、ホッチには充分過ぎるほどわかっていた。ホッチは身体を起こすと、リードの身体を抱き締めてやった。

「ああああああああ~っ・・・あ・・・ああ・・・あ・・・は・・・」

ホッチの腹に白い体液が迸る。それに合わせて、ホッチもリードの胎内に欲望を吐き出した。ホッチの腕の中で、ブルブルと小刻みに震えるリードが、小動物のようで、可愛らしかった。呼吸を整えようとしながらも、小さな喘ぎ声が出てしまうリードも可愛らしかった。全てが、何もかもが愛おしい。

「は・・・あ・・・ホッチ・・・好き・・・大好き・・・」

荒い息の奥で、リードが小さく呟いた。ホッチは短い金髪を優しく撫でてやった。

「・・・貴方といると・・・天国にいるみたい・・・ああ・・・ねえ、天国ってこの地上にあるんじゃいかな?・・・だって・・・天国に一番必要なのは・・・愛って・・・言うでしょ?」

ホッチの肩に鼻を擦り付けながらリードが言った。

「そうだな」

ホッチは賛同し、リードの顎を軽く掴むとキスを与える。リードも素直に受け入れ、しばらく互いの唇や舌を味わった。まだ、ホッチはリードの胎内に入ったままだった。リードの存在そのものに反応して、また自分が熱を腹むのがホッチにはわかった。

「あ・・・ん・・・ふふっ・・・また・・・ホッチの・・・僕の中で大きくなってる・・・」

「疲れたか?」

リードは首を横に振った。

「嬉しい。もっとしたい・・・」

ホッチは素早く、リードの身体を反転させ、粗末なベッドに沈み込ませた。今度は自分が上になり覆い被さる。リードの綺麗な脚を大きく割り開き、身体を押し進めた。

「ん・・・ぐっ・・・」

深い。さっきの体位よりもずっと奥深いところを突かれて、抉られる。けれども、辛くはなかった。ただ、ひたすらに嬉しかった。この美丈夫に貫かれることが。愛する者に蹂躙されることが。それも、愛の一つなのだと、リードは思う。ボン・マルシェに出かけたことも、赤いコートと黒い手袋を買ってもらったことも、愛の一つだ。まだ、自分は何もお返しができていないけれども。けれども、今は自分の身体を差し出すことができる。喜びと共に。

「んっ・・・んっ・・・んっ・・・」

ギシギシというベッドの音は、ある意味リズムだ。リードは下から精悍な男の顔を見上げ、細い指先のなぞった。当然自分は愛している。そして、愛されているとも実感できる。

「好き・・・ホッチ・・・もっと・・・もっと酷くされてもいいくらいに・・・好き・・・」

「乱暴か?」

「違う。そんなことない・・・。もっと・・・貴方が欲しい・・・奥まで・・・欲しい・・・」

もし自分が女だったら、きっと子を孕んでしまうくらいに、抱いて欲しかった。自分の胎内の奥深くにまで、注ぎ込んで欲しかった。だから、強請った。

「・・・お願い・・・ホッチ・・・僕、大丈夫だから・・・もっと・・・もっと・・・」

そんなリードの言葉を聞いて、ホッチその細い身体を折りたたむようにして、上からプレスした。

「んあっ・・・」

悲鳴と喘ぎが混ざったような、リードの声が響く。けれども、ホッチは力を緩めることなく、リードを犯した。望んだことを与えられて、リードはより一層の多幸感を味わう。愛されているという、幸せを。ホッチは唇を噛んだ。リードがきゅうきゅうと自分を締め付けてくるからだ。意識的にか、無意識か。おそらく、後者だろう。閨のことに関しては、初心なところがある。セックスは快楽・・・というよりも、愛を確かめ合う行為だと、リードは考えている節がある。ホッチにも異存はなかった。自分もリードを愛しているからこそ、抱くのだ。

「くっ・・・」

ホッチはリードの胎内の良さに我慢しきれず、白濁をその中に吐き出した。

「ああっ・・・」

リードもまた、その先端から白い蜜をトロトロと、溢れ溢したのだった。そして、ゆっくりと目を閉じた。心地よい、暗闇の中に、自分が堕ちていくのを感じながら。そんなリードを見ながら、ホッチはゆっくりと、自分を胎内から引き抜いた。そして身体を離すと、ベッドから降り、気を失ったリードの身体に毛布をかけてやった。

またやってしまったな・・・とホッチは苦笑いをする。リードに強請られると自制が利かなくなる。だから、酷く抱き過ぎてしまうのだ。

ホッチはテーブルの上の水差しからグラスに水を汲むと、ごくごくと飲んだ。コトンとグラスを置くと、籠に入ったレモンに気づいた。昨日、リードがカフェで貰ったものだ。リードはギャルソンとして随分と客からも気に入られているらしい。芸術家たちの集まるモンマルトル。語学の堪能なリードは、様々な国から来ている芸術家たちの橋渡し役ともなっているらしい。その礼として、果物やお菓子などを貰ってくることがよくあった。ホッチはグラスに再び水を注ぐと、今度は小さな果物ナイフを用意した。そしてレモンを半分に切る。切ったレモンの片方を持ち、グラスの上で絞った。簡単なレモン水。

「・・・チ・・・ホッチ・・・」

小さな、自分を呼ぶ声。ホッチがレモン水入りのグラスを持つと、ベッドに戻る。そのベッドでは、リードが唇を可愛らしく尖らせていた。

「貴方が傍にいないのは嫌なの」

「悪かった。喉が乾いたんだ。リードもだろう?レモン水だ。飲むか?」

「飲む。飲みたい」

掠れたような声を出しながら、リードは身体を起こそうとしたが、どうやら上手くいかないらしい。きっと力が入らないのだろう。ホッチは一口レモン水を口に含むと、口移しでリードに飲ませてやった。こくり・・・と喉が動く。

「・・・もっと・・・」

ホッチは、リードに言われるままに、口移しで、レモン水を与えたのだった。

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「タイプライターですか?初めて聞きます。それはどういうものなんですか?」

リードは馴染みの客の前にコーヒーを置くと、トレイを両手で抱えて、首を傾げた。

「まあ、簡単にいうとね、紙に活字をい印字する機械だよ。そうだな、大きさはこのくらいかな」

客は両手で大きさを表現した。

「私も最近使い始めたんだがね、これが早くていい。そうだな、同じ時間で手書きの2倍から3倍くらいの文字を打つことができる。だからね、タイプライターのおかげで、私の創作のスピードは上がったんだ。それに、出版社にも大受けでね。ほら、私は悪筆だから」

「そうですか?でも、ムッシューの字は味があると思いますよ。・・・でも、タイプライターかぁ・・・興味あるなぁ・・・」

「最近、いろいろなタイプが出ているから、取り扱う店も増えて来たね。僕が買った店はここだよ」

客は内ポケットから小さなメモ帳を取り出すと、1枚破って、店の住所と名前を書き、リードに渡してくれた。

「そこは、中古品も扱っている。中古と言っても、質は良い。信用のおける店だ」

「ありがとうございます、ムッシュー」

リードは笑顔で礼を言うと、そのテーブルを辞した。

タイプライター。

ホッチは、リードが蚤の市で買った羽根ペンを今でも使っている。けれども、随分と使っているので、もう別な筆記具にしてもいいとリードは思っていた。けれども、それを言うと、ホッチはあまりいい顔をしなかった。最近のホッチはたくさん仕事している。ホッチの書く文章は評判が良くて、色々と書く仕事が増えたのだ。そんなホッチが、タイプライターを使ったら、生産性が上がるのではないか・・・とリードは思った。この間の休みに、リードは赤いコートと黒い手袋を百貨店で買ってっ貰った。そのお返しが、3フランの食事だなんて、申し訳無さすぎる。客に貰ったメモを見たら、その店はこのモンマルトルから割と近くにあった。仕事の帰りに寄ってみようと思った。

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「凄い。こんなお店があったんだぁ」

リードはウィンドウに越しにタイプライターを見て、驚いた。タイプライターそのものにも驚いたが、その値段にも驚いた。正直、高かったのだ。これでは、リードには買えない。ちょっとしょんぼりな気持ちになる。けれども、カフェの客は中古品も扱っていると言っていた。

「でもなぁ・・・」

自分は新しいコートと手袋を買って貰ったのだ。それなのに、そのお返しが、お古のタイプライターなんて・・・とリードは思ったのだ。「うーん」とリードが困った顔をしていると、店のドアが開いた。

「タイプライターに興味があるのかね」

どうやら、店の主人のようだった。

「あ、こんにちは。僕、今日、初めてタイプライターっていうものを知って。それで見に来たんです。その・・・知人への贈り物にしたいなぁって。でも、僕にはちょっと手が出ないみたい。もっと働かないと」

「はっはっは。まあ、ウィンドウに並べてあるのはなぁ。どうだ、時間があるなら、中に入って見てごらん。何か掘り出しものがあるかもしれないぞ」

「いいんですか?」

「ああ、もちろんだ」

そう言って、主人はリードを店内へと招き入れた。

「うわぁ・・・これ・・・全部タイプライターですか?」

「ああ。そりゃあ、ここはタイプライターの店だからな」

「近くに住んでるのに、知りませんでした。こういうお店があるってことに」

「知り合いにプレゼントしたいんだって?物書きなのか?」

「はい!えっと、アーロン・ホッチナーっていう人です」

「ほほう。私は、彼の書く新聞小説のファンでな。そうか。彼はまだ、タイプライターを使っていないのか」

「はい。羽根ペンで手書きなんです」

「それは随分と古風だ。悪くはない」

「でも、最近、仕事が増えたみたいで。タイプライターなら、たくさん字が打てるって聞いて」

「まあ、そうだな。最初はキーの配列を覚えるのに手間取るかもしれないが、慣れてしまえば確かに速いよ」

「へぇ・・・」

「使ってみるかい?」

「え?いいんですか?」

「贈り物にしたいなら、どんなものかを知っておかなくちゃな。そうだ、これを使って」

「すでにデスクに置かれているタイプライター」

「これは?」

「私が普段、仕事でつかっているタイプライターだ。まあ、実演用でもあるし、客に実際に使ってみてもらうものでもある。だから、遠慮なく使ってみてくれ。と言っても、教えないとダメだな。はっはっは」

どうやら、この店の主人は、大きな声で笑うのが特徴らしい。

リードは椅子に座らせてもらい、タイプライターの使い方を教えてもらった。最初は戸惑ったが、リードは飲み込みが早い。すぐに、文字を打てるようになった。

「面白い機械ですね。タイプライターって。なんだか、本みたい」

「そうか。面白いか」

「ありがとうございます。タイプライターがどんなものかわかりました。でも・・・」

「まあ、待ってくれ。押し売りをするつもりはないんだがね。あのアーロン・ホッチナーが使うんなら、話は別だ。ここは中古品も扱っている。その中でも、ちゃんと質のいいものもある。そこでだ。いい掘り出し物がある」

主人は、リードを店の奥へと促した。そこにもたくさんのタイプライターがあった。主人はその中から、1つのタイプライターを選ぶと、近くのテーブルに置いた。そして、それに付けてあった値札をリードに見せた。

「これならどうだい?」

「!うわぁ・・・そ、その値段なら、僕にも買えます!」

「そうか。それは良かった。実はな、こいつはすごく良い物なんだが、1つのキーにだけ癖があるんだ。故障じゃない。ちょっとした癖だ。それを使いこなせたら、新品のタイプライターと遜色がない代物だ」

「使わせてもらっても?」

「ああ、もちろん。癖があるのはこのキーだ」

使い方は、さっきのモデルとかわりはない。ただ、確かにそのキーを押すときだけ、ちょっとした違和感があった。少しだけ重く、若干斜めに叩くようにしないといけないのだ。しかし、あまり頻繁に使うアルファベではない。使うのに支障はなさそうだった。それに、このタイプライターはデザインが良かった。優美な感じがした。これがホッチのデスクの上にある様子を想像する。素敵だった。タイプライターを使うホッチの姿はもっと素敵だろう。

「あの・・・明日、お金を持ってきます。だから・・・取り置きしてもらえますか?」

「ああ、もちろんだ。実は、私からも頼みがあるんだが・・・」

「何ですか?」

「この本に、サインをもらえないだろうか?知り合いなんだろう?」

いつの間にか、主人は1冊の本を手にしていた。ホッチが書いた本だ。新聞小説を1冊にまとめたものだ。

「ええ、もちろん!」

ホッチのファンと出会えて、リードは嬉しくなってしまった。リードは大事そうに、本を受け取ると、笑顔で店を出たのだった。

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「ホッチは、今日、お出かけの用事があるの?」

翌朝、リードはカフェに出勤する身支度を整えると、ホッチに尋ねた。

「ああ、そうだな。今日は出版社に行く。それが、午後遅くなんだ。もしかしたら、君よりも帰りが遅くなるかもしれない。悪い」

「いいの!お仕事なんだから!・・・それと、お願いがあるんだけど・・・」

「どうした?」

「あのね、貴方のファンに、本のサインを頼まれたの。・・・ダメ・・・かな?」

「いや・・・構わないが・・・サインなんて・・・初めてだ」

「え?そうなの?」

「ああ。ああ、この本か。最初に出した本だ」

「貴方の文章がすごく好きだって言ってた」

「そうか」

ホッチは羽根ペンを手にすると、表紙を開いて、サラサラとサインをした。

「ありがとう、ホッチ」

「構わない。カフェの客か?」

「まあ、そんなところ。あ、じゃあ、僕、そろそろ行くね。サイン、ありがとう!とっても喜ぶと思うよ!」

「だといいが」

リードはちょっとだけ背伸びをすると、ホッチの唇にキスをした。

「言ってくるね」

「ああ。気をつけて」

「うん。ホッチも頑張ってね、お仕事」

「ああ」

毎日のことであるが、名残惜しそうにもう一度キスをして、リードはようやくホッチから離れて部屋を出て行ったのだった。

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その日のホッチの打ち合わせ時刻は夕方から始まった。相手の都合で、1時間近く、出版社近くのカフェで待たされたが、次の物語の構想を練ることができたし、ホッチにとって、有意義な時間ではあった。担当者との打ち合わせを終えて、アパルトマンの屋根裏部屋に戻ったときは、すっかりと陽は落ちていた。もう、リードはカフェから帰ってきているだろう。案の定、下から自分の住む屋根裏部屋を見上げると、屋根裏部屋の灯りは点っていた。ミシミシという音を立てながら階段を上る。今夜は冷えそうだ。リードはちゃんと暖炉に火を入れているだろうか。何か暖かい飲み物を飲んでいるだろうか。ちゃんと灯りの傍で本を読んでいるだろうか。心配ばかりしてしまう。ホッチはノックもせずにドアを開けた。

「ただいま。リード」

「あ!おかえり!ホッチ!」

屋根裏部屋はほんのりと暖かかった。ちゃんと暖炉に火を入れたらしい。リードはテーブルの椅子に座って、本を読んでいた。ちゃんとランプの灯りの傍で。立ち上がったリードはホッチに近づくと抱きついてきた。

「リード。俺の身体は冷たいから・・・」

「あったかいよ!」

「リード・・・」

それ以上は言えなくて、リードの好きにさせる。しかし、いつもよりホッチにじゃれつく時間は短かく、表情がまるで悪戯っ子のようにキラキラと輝いていた。

「・・・どうした?リード。何か、カフェで楽しいことでもあったか?」

コートを脱ぎなら、リードの話を聞こうとした。しかし、リードはホッチの腕を取ると、「こっち!」と言って、古びた机に引っ張っていた。ホッチがいつも書物をする机だ。

「見て!」

リードが手で指し示した場所には、見慣れないもの、タイプライターが鎮座していた。

「これは・・・」

思わず驚きで言葉が詰まってしまう。

「ねえねえ、どう?タイプライター!!」

「リード。一体どうしたんだ?これは。そんな簡単に変えるものじゃないだろう?」

ホッチは少しきつい口調でリードに問うた。リードの懐具合は分かっている。カフェに給金で変えるようなものではないはずだ。

「え・・・怒ってる?ホッチ?」

「怒ってるわけじゃない。ただ・・・」

まさか、このタイプライターを買うために、ムーラン・ルージュで働き始めたのかと思ったのだ。それならそれで、自分に相談してくれてもいいものを・・・と思ったのだ。

「・・・ごめんなさい」

さっきまでとは打って変わって、リードはしょんぼりと項垂れた。

「・・・カフェにお客さんがタイプライターの話をしてて・・・これならいっぱい文字を打てるって・・・ホッチは最近お仕事がいっぱいだから・・・役に立つかなって・・・それに・・・この間、コートと手袋を買ってもらって・・・そのお礼もしたくて・・・でも・・・貴方を怒らせたいわけじゃなくて・・・」

「お金はどうしたんだ?」

一番心配なことを尋ねる。

「もちろん!カフェのお給金だよ!」

「こんな言い方はしたくないが、買えるわけがない」

「・・・ごめんなさい。・・・実は・・・新品じゃないの・・・中古品なの・・・店の主人が貴方のファンで・・・おまけもしてくれたの・・・だから・・・買えたの・・・ごめんなさい・・・新しいのじゃなくて・・・」

ホッチの意図とはズレたことを謝ってくるリードに、「そうじゃない」と言いたかったが、とにかく、無理をしなかったことは救いだった。

「何か、カフェ以外の仕事をしたりしたんじゃないんだな?」

「違うよ?ちゃんとお金を貯めてた」

「自分の大切なものを売ったりしていないんだな?」

「貴方以外に大切なものなんてないし、貴方のことは売れないよ!」

またズレた反応に肩を落としそうになったが、その表情を見ると、本当に無理はしていないらしい。

「リード。すまない。ただ、心配しただけなんだ」

「じゃあ、嬉しい?」

「まずは、驚いている。けれども・・・嬉しい。欲しいとは思っていたんだ」

出版社や新聞社から、「そろそろタイプライター使ったらどうだ」とは言われていた。しかし、リードから貰った羽根ペンを大事に使いたいという思いもあった。だいぶ、くたびれてしまってはいたのだが。

「良かった!じゃあね、座って!僕、ちゃんと使い方を教わってきたの!あ、それとね、もう一つごめんなさいがあるの。このタイプライターね、1つのキーだけちょっと癖があるの。でもそのおかげで安かったんだけど。それとね、ホッチのサインを欲しがったの、お店の主人なの。だからサインの分もおまけしてくれたんだよ!」

再び饒舌になったリードの話を聞きながら、ホッチは椅子に座ったのだった。

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「んっ・・・ふっ・・・や・・・あ・・・あん・・・」

リードは尻を高く上げて、顔をベッドのシーツに押し付けていた。ぴちゃぴちゃとした音が屋根裏部屋に響く。ホッチが「お礼を」と言ったら、「これはコートと手袋のお礼だから」とリードは答えた。けれども、そのあと、遠慮がちに恥ずかしがりながら言ったのだ。「ホッチとベッドに行きたい」と。すっかり女性器のような形に変形してしまった後孔を、ホッチが舌を使って愛撫する。もし、自分に恩恵を与えてくれる芸術の女神、ミューズがいるとするのならば、それはリードだと思う。リードといると、創作意欲が枯れることがない。次から次へと、物語が浮かんでくる。

「んあ・・・ホッチ・・・お願い・・・も・・・挿れて・・・」

リードが腰を揺らして強請った。ホッチはその桃のような尻たぶに吸い付いてから、身体を起こすと、リードの中へと入り込んだのだった。

ここは。

地上の楽園だった。

リードが言ったように。

END