籠の鳥 愛の個人授業 04

ベルギーレースで彩られたベビードールはとても生地が薄い。だから、リードの平らな胸の飾りはとても綺麗に透けて見えていた。薄紅色のささやかな突起である。そこをホッチは生地の上からこすりあげた。

「あ・・・」

リードは小さな声を漏らし、うっとりと目を伏せた。商売なのは分かってはいたが、リードはこの紳士に触れられることが嬉しかった。女将のストラウスや先輩の娼婦たちから、自分が受ける扱いのことを聞いてはいたが、何だかそれとは違っていた。無体なことはされず、とても優しく扱って貰える。専属になったとはいえ、これがいつまでも続くわけではないだろう。ただ、この瞬間の幸せを噛み締めたかった。だから、リードはホッチの指の暖かさを覚えるかのように、素直に受け入れた。胸を擦りあげられ、押しつぶされ、摘まれる。そんな動きに、リードは小さな声をあげ続けた。ホッチの方も、そんな素直なリードの様子に満足げな笑みを浮かべた。擦れていない、純真無垢な青年。その花を手折っているのは自分なのだという優越感。とにかく、自分好みにしたいと思った。

「は・・・あ・・・ん・・・」

気持ち良さを享受するかのように、リードの身体が揺らめいた。素質のある子なのだろう。ホッチはベビードールの肩紐をするりと外し、落とした。桃色の乳首が露わになる。それはすでにぷっくりと立ち上がっていた。今度は生地越しではなく、直接その突起を摘み、刺激を与える。

「ああっ・・・」

ひくんっとリードの体が動き、腰が揺らめく。その姿が、愛らしく、好ましく、可愛らしい。ふと視線を落とすと、青年の股間もふっくらと形を成してきている。

「リード」

ホッチは青年の名を優しく呼ぶと、その手を取って、彼の下腹部へと導いた。

「自分で触ってみるといい」

少し意地悪かと思いながらも、ホッチはリードが自分で慰めるところが見たかった。リードは逆らう素振りなど微塵も見せずに、自分の綺麗な指を白いパンティの上に置いた。そして、ゆっくりと動かし始める。その姿を眺めながらも、ホッチは青年の胸を責めることを続ける。リードの指の動きが早くなる。

「あっ・・・ああっ・・・あっ・・・あっ・・・」

胸に与えられる刺激。自分で下腹部に与える刺激。その両方を享受しながら、リードは美しい声をあげた。その喘ぎ声はホッチの耳にも心地よい。

「ひゃっ・・・あっ・・・あああああああっ・・・・」

限界に達したにだろう。リードの身体が緋色のカウチの上で跳ねた。

「あ・・・は・・・・」

倒れそうになる身体をホッチが抱きとめた。

「いい子だ」

「はぁ・・・はぁ・・・あ・・・ごめんなさい・・・また・・・僕、一人で・・・」

「いいんだ。充分に楽しませてもらっているからな」

青い瞳が申し訳無さそうに揺れ、それでもホッチを見る。奉仕しなければならないのは自分なのに、それなのに自分だけが気持ちの良い思いをしてしまっているのではないかと心配になってしまう。けれども、ホッチは満足そうに笑い、先ほどの紙箱を取った。

「さあ、ご褒美だ」

ホッチはショコラ・ド・オランジュを1つ取り出すと、それをリードの口の中に差し込んだ。先ほどと同じ、甘い香りと味が口の中に広がる。本当に美味しい。

「気に入ったんだな」

「はい。とっても美味しいです。この世の中には、こんなに美味しいものがあったんですね」

「・・・君は、普段、一体どんなものを食べているんだ?」

ホッチが尋ねると、リードは隠す風でもなく、答える。

「そうですねぇ・・・幼い頃から、食事はパンとスープばかりでした。でも、パンだけってこともあったかなぁ・・・。だから、スープがあると嬉しかったです。でも、この娼館に来てからは、毎日パンとスープを食べることができるようになりました」

そんなリードの説明に、ホッチが微かに眉間に皺を寄せた。随分と身体の細い青年だとは思っていたが、幼少期の不十分な食事がそうさせているのだろう。階級社会ゆえに、そういった層が社会に存在していることは知っていたし、ましてやここは娼館だ。貧しい人間が集まる場所といっても過言ではない。ホッチは思わず、その細い身体を引き寄せて抱きしめた

「あ・・・あの・・・ミスター・ホッチナー?」

本当に、この青年を専属にして良かったと思う。庇護欲。守ってやりたいという感情が沸き起こってくる。

「何か不自由なことはないのか?」

「いいえ!・・・貴方が僕を専属にしてくださったおかげで、パンとスープ以外の物も食べられるようになりました。・・・それに、お給金も良くなるので、ありがたいです。早く借金が返せそうです」

「借金があるのか?」

娼婦にかける言葉としては、当たり前すぎなのだろうが、思わずホッチは問い返してしまった。

「はい。母が病気なので。その病院代が必要なんです」

「それじゃあ、君がこの娼館に来た理由は・・・」

「母を良い病院に入れるためです。本当は、下男として働く予定だったんですが、外見がこうなので・・・女将さんが物は試しにって・・・あの催しに出ました。そうしたら、貴方が僕を買ってくださったので。本当にありがとうございます」

リードは花のように笑うと、軽く小首を傾げた。屈託のない笑みだった。娼婦にありがちな、卑屈で、薄暗い影など、何一つ見えなかった。この青年は、純粋に母を助けたかったのだろう。そのために、自分の身体を犠牲にすることなど厭わなかったのだろう。

「リード、おいで」

ホッチはリードの手を取って、カウチから立たせた。そうしてベッドへと誘う。リードは、「ああ、いよいよだな」と思った。昨夜は、何の奉仕もせずに、紳士を帰してしまった。娼館で働く者としては最低な行為だ。ホッチは、リードをベッドに座らせた。

「あの・・・今夜は、僕にご奉仕させていただけませんか?それが・・・僕の仕事ですし・・・」

「いや。それは、また今度の楽しみにしておこう。さあ、寝るといい。今夜も君が眠るまで付いててやろう」

「え・・・そんなの・・・ダメですよ」

「いいから」

ホッチはリードをベッドに横にすると、自分はベッドの端に腰掛けた。

「君の可愛らしい寝顔を見るのも悪くない。むしろ、楽しませてもらっている」

「・・・申し訳・・・ないです・・・」

「身体を売るだけが、娼館で働く人間の仕事ではない。ほら、目を瞑って」

「貴方の顔を・・・もう少し見ていたいです・・・」

「また、来るんだから」

ホッチが手の背で、リードの頬を優しく撫でてやる。リードは両手を伸ばしてホッチの手を緩く掴むと、チュッと唇を寄せた。愛しい手だった。母親を思い出す。決して、自分を甘やかすことのない母親で、何処からかもらって来た小難しい本を子守唄代わりに読んで聞かせるような母親だった。それでも、自分には大切な母親だった。そんな母親のために、自分が苦界に身を落とすことは平気だった。本当なら・・・自分はもっと辛い目にあっているはずだった。それなので、このアーロン・ホッチナーという貴族のおかげで、自分は幸福感に満たされている。たとえ、その幸福感が続くのが、ほんの少しの間だとしても、自分はこの瞬間の暖かな思い出だけで生きていけそうな気がした。リードは、うっとりとホッチに微笑みかけると、そっと瞳を閉じた。そんなリードの美しい顔を見ながら、ホッチは笑みを浮かべ、その額に小さなキスを落としたのだった。

to be  continued