いつものように、遅い時間まで書類仕事をし、ようやくアーロン・ホッチナーは帰途についた。陰惨な事件は毎日のように起こるので、書類が減ることはないし、ましてや無くなることもない。街中を歩きながら、今夜の夕食はどうしたものか・・・と考える。が、あまり食に執着がある方でもないので、そこは適当だ。中華のテイクアウトでもいい。少々薄汚れたビルとビルの間の暗がり。そこに無意識に目をやりつつも、ホッチは足を止めることなく歩き続けた。が、数歩ほどの後、立ち止まった。一瞬。ほんの一瞬だが、地べたに投げたされた足のようなものを捉えたような気がしたからだ。無視するか、それとも・・・。FBIの敏腕プロファイラーは、事件性の有無を考えた。そうしたら、答えは1つだった。後悔するよりも、確認したほ方がいい。それが無駄であったのなら、それは街の平和の証拠だからだ。そう考えて、ホッチは踵を返すと、数歩、道を戻って路地に入ったのだった。
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大きなゴミ箱とゴミ箱の間にそれは落ちていた。少々長めのくすんだ金髪に隠れた顔。しかし、それは青年のものとは判断できた。着ているものはあちこち破れていて、汚れている。かろうじて靴は履いていたが、その靴もボロボロだった。ズボンと靴の間から見える靴下は、なぜか左右で柄が違った。一瞬、もう手遅れで死んでいるのかとも思ったが、首筋に指を当てると、きちんと脈打っていた。
「おい。大丈夫か」
ホッチは青年の頬を軽く手の平で叩く。
「ん・・・・・・」
酔っ払いかとも思ったが、酒臭くはなかった。だったら、ジャンキーか?と警戒する。
ゆっくりと開いた瞼から見える瞳は、淀んではいなかった。それよりも、澄んでいる、と言った方が正しい。ジャンキーではなさそうだった。
「大丈夫か?」
ホッチは再度訪ねた。
「・・・・・・お腹・・・空いた・・・」
そう言うと、金髪の青年は溜息をついて、再び瞼を閉じたのだった。
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「うわぁ!美味しい!これも・・・これも!!!」
「美味しいって・・・中華のデリだぞ」
「でも、すっごく美味しい!初めて食べた!!!!」
ダイニングテーブルで中華デリを物凄い勢いで食べている青年を見ながら、ホッチはグラスのウィスキーを一口飲んだ。
あの路地裏で、再び瞼を閉じようとした青年を無理矢理立たせて、表通りまで引きずった。空腹で体に力が入らないらしく、フラフラしてはいたが、それでも何とか、ホッチが止めたタクシーには乗り込めた。運転手は青年の身なりを見て、一瞬嫌な表情を見せたが、ホッチがチップを前払いすると、文句を言わずに車を発進させてくれた。途中、中華のデリを買って、そして現在、ホッチのアパートである。まずはバスルームに突っ込みたかったが、フラフラしている青年が可哀想になり、とりあえず、手だけはしっかりと洗わせて、食卓につかせたのだ。テーブルに並べたられたデリを見ると、青年の意識は覚醒し、橋を握って・・・そう、まさに握って、デリを口の中に入れていったのだった。
「あ・・・ごめんなさい。僕・・・もしかして、貴方の分も食べちゃってる?」
青年は橋を握ったまま、動きを止めると、ホッチに問うた。けれども、ホッチは首を横に振り、青年に食べることを促したのだった。それからは、チラチラとホッチの表情を伺いながら、デリを食べていた青年だったが、ようやくお腹が満足したのか、安心した吐息を漏らすと、ようやく箸を置いたのだった。
「満足したか?」
「うん!今夜のゴミ箱は不作だったんだ!あんまり食べ物がなくって・・・」
「ちょっと待て。君は、ゴミを食べて生活しているのか?」
「・・・まあ・・・そう・・・かな?」
「働いていないのか?」
「んー・・・そういう習慣がない・・・かな?」
「お金は?」
「持ってないよ?」
稼いでいないのなら、そうだろう。しかし、かといって犯罪に手を染めているわけでもなさそうだ。ということは、ホームレスなのか?この青年は。
「何処に住んでる?」
「いろんな所」
どうやら、定住しているホームレスではないらしい。
「今夜は・・・何処で寝るんだ?」
「・・・んー・・・わかんない」
ホッチは小さく溜息をついた。これは放ってはおけない。だから、提案をする。
「今夜は、この部屋に泊まるといい。ただし、その前に風呂に入る、という条件がつくが」
「風呂?・・・風呂って、何?」
「・・・・・・・・・・・・」
何なんだ。この、風呂の存在を知らないというのは。追求したかったが、お腹がいっぱいになった青年の目が、とろんとしてきたのを見て、その課題は後にとっておくことにする。まずは、この青年を風呂に放り込まなければ。
ホッチは、青年を立たせると、手を引いて、バスルームへと連れて行く。
「これが、お風呂?」
初めて見るかのように、キョロキョロとする。ホッチはバスタブに湯をためながら、青年い言った。
「服を脱いで」
「ん?うん」
恥ずかしがる風でもなく、青年はポイポイと衣服を脱いでいった。どう考えても、捨ててもいいような衣服を。せっかく体を綺麗にしても、それをまた着たら意味はない。とりあえず、バスローブを着せて、その後は自分のシャツでも貸せばいいだろう。いや・・・くれてやる、と言った方が正しいかもしれない。
「さあ、バスタブに入れ」
ホッチが指さすと、青年は素直にバスタブに入った。
「わお!あったかい!」
そう言って、青年は立ったままだ。次に何をすべきかはわからないらしい。ホッチは腕まくりをして、今度はバスタブの中で座るように命じた。そして、シャンプーを泡立てると、それを青年の頭に乗せ、指を使って洗ってやる。
「ねえ、これって、何?どうして頭をゴシゴシするの?」
「これはシャンプーだ。髪を洗っているんだ」
シャンプーの泡のせいで、顔の汚れも落ちる。想像していたのと違う、色白な肌が見えた。しかし、それも熱い湯のせいで、薄く桃色がかる。石鹸で顔を拭うようにして洗う。今度はスポンジを泡でいっぱいにして、それを青年に渡した。が、やはり、首を傾げられてしまう。「どうするの?これ?」という表情だ。体を洗う、ということがわからないらしい。ホッチはスポンジを取り上げると、背中から、青年の体を洗い始める。
「んー・・・何だか、気持ちいいね、お風呂って!」
「そうか、それは良かった」
不思議で、可笑しいことではあったが、ホッチはこの状況を案外、楽しんでいた。薄汚い青年の体が、どんどん泡で美しくなっていく。薄桃色に染まった陶器のような皮膚。風呂の熱が冷めたら、きっとそれは白磁に変わるに違いない。
全身の汚れを泡と一緒にシャワーで洗い流すと、ホッチは青年にバスローブを纏わせた。そして、そこで初めて、思い出したように名前を聞いたのだった。
「僕?リード!スペンサー・リード!」
美しくなった金髪の青年は、にっこりと笑って答えたのだった。
「貴方は?」
「アローン・ホッチナー」
ホッチも少しだけ笑って答えた。
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別に青年・・・リードをソファで寝かせても良かったのだが、どうせダブル・ベッドであったので、ホッチはリードをベッドに促した。ホッチのシャツを借りたリードは、嬉しそうにそれに従った。一人暮らしとはいえ、仕事で疲れた体には、質の良い睡眠が必要と感じたので、ホッチは部屋にダブル・ベッドを置いていたのだった。
「久しぶりのベッドだぁ」
風呂は知らなくても、ベッドは知っているのか、と思わずツッコミそうになったが、それを堪えてホッチはリードを先にベッドに寝かせる。リードはちゃんとホッチのスペースを開けて毛布に潜り込んだ。そういうこともわかって入るらしい。
ホッチもベッドに入り、ベッドサイドの灯りだけにする。寝る前の習慣で、本を数ページだけ読むのだ。
「それ・・・面白いの?」
「犯罪心理学の本だ。君・・・リードは、本を読んだことは?」
「あるよ!いっぱい読んで勉強した!」
「しかし、風呂は知らないんだな」
「だって、僕が読んだ本には書いてなかったもん」
一体、何処で、どのような本を読んだのか気になったが、まずは寝かせてやろうと思い、ホッチはリードの頭をぽんぽんと叩くと、本に目を落とした。
しばらくして・・・。
きゅう・・・・。
お腹の鳴る音がした。自分ではない。ホッチは隣に横たわるリードに目をやった。彼は眠ってはおらず、じっと自分を見ていたらしかった。
「あれだけ食べて、またお腹が空いたのか?」
「ん・・・だって・・・主食じゃなかいから・・・」
「まあ、確かに中華のデリだったしな。・・・何か・・・作るか?」
しかし、リードは首を横に振った。
「人間の食べ物は、おやつみたいなものだから、どれだけ食べても、すぐにお腹が空いちゃうの」
「・・・・・・は?」
「あのね」
リードは毛布から出て、ベッドの上に正座をして姿勢を正した。それを見て思わず、ホッチも背筋を伸ばす。
「何だ?」
「僕・・・人間じゃないないの。えっと・・・その・・・淫魔・・・なの・・・」
最後の方はかなり声が小さくなっていたが、ホッチの耳にはしっかりと聞こえた。「淫魔」というワードが。
「・・・説明しろ」
「あの・・・僕、魔界からきたスペンサー・リードっていう名前の淫魔なの。数日前に、もうお前は人間界で生きていけって言われて、魔界卒業なの。・・・本当はもっと早くにご主人様を見つけて生活をしなくちゃいけなかったんだけど、僕、そういうの人を見つけるのが苦手で・・・。あ、でも、自分で言うのも何だけど、優秀ではあるんだよ?今期の淫魔の中ではペーパーテスト、1位だから!!僕、勉強は得意なんだ!」
「勉強って、一体どういう勉強なんだ?」
「え?・・・まあ、その・・・えっと・・・その・・・ベッドの中ではどうすべきかっていう・・・」
「つまり、セックスってことだな」
「・・・そう」
「それで?」
ホッチは読みかけの本をベッドサイドに置いて言った。
「ベッドの中では、どうすべきなんだ?」
自分の白いシャツを着たリードにのしかかり、ホッチは重たい声で尋ねたのだった。
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「やっ・・・あっ・・・あんっ・・・やぁ・・・ち、違うのぉ・・・」
「何が違うんだ?」
ホッチがリードの可愛らしいペニスをしゃぶりながら、その口の隙間で尋ねる。
「んっ・・・ぼっ・・・僕が・・・ホッチのを、お口でするのぉ・・・」
「ああ・・・それは、後でお願いするとしよう」
「ふえ・・・やんっ・・・い・・・イっちゃう・・・出ちゃうよぅ・・・」
リードは両脚の太腿をがっしりと掴まれている。もちろん、体を割り開かれて。リードは指先でシーツを握りしめて、頭を左右に振りながら、絶頂を我慢している。この行為は知っていた。魔界で勉強した。けれども、自分は淫魔だから、「される」より「する」方の勉強の方が多かった。何故なら、口での精飲は淫魔の食事になるからだ。
「あっ・・・だめっ・・・も・・・や・・・むり・・・イっちゃうっ・・・」
「いいぞ、いけ」
くぐもった声で言うと、ホッチは口をすぼめて、十分自分の口に収まるペニスを吸い上げた。
「ひっ・・・あああああああ・・・・あ・・・ああんっ・・・んん~・・・」
一瞬、腰を跳ね上げる。そして落ちるその腰をホッチの逞しい腕が捉えて、そっとベッドに降ろした。
「淫魔なら、こんなこと、初めてでもないだろうに」
リードの金髪を梳きながら、ホッチが言った。その言葉にリードは唇を噛んで、横を向いた。
「どうした?リード」
「・・・本当は僕がするのに・・・。でも・・・こんなに気持ちいいなんて・・・知らなかった・・・僕」
「されるのは初めてか」
「・・・するのも初めてだから・・・下手だったらごめんなさい。・・・あ、でも僕、主席で卒業はしてるからね!」
「初めて?」
「うん」
「あー・・・・魔界では・・・その・・・実地訓練とかなかったのか?」
「動画は見た」
「つまり・・・君は・・・バージンなのか?」
「人間界の言葉で言うなら・・・まあ・・・そう・・・かな?」
その言葉に、ホッチが心の中で舌なめずりをする。
処女の淫魔。
こんな体験をすることができるのはそうないだろう。
リードの体はホッチにとって好ましかった。堕ちた・・・と言っても過言ではない。
「リードの食事は、こっちの口でもいいのか?」
するりと、後孔を撫でる。
「あんっ・・・」
突然の刺激に一瞬、体を浮かせるが、リードはすぐにコクリと頷いた。要は、人間の精を体に取り込めばいいのだ。
「それなら・・・」
ホッチはリードの両足を抱え上げると、そこを後孔を露わにする。そしてそこへ顔を寄せ、舌で舐め、解し始めた。
「あ・・・ん・・・く・・・くれるの?ホッチ・・・僕に・・・くれるの?」
「好きなだけ飲むといい。こっちで口でな」
リードの両足を割り開いたまま、体重をかけると、ホッチは己の切っ先をリードの薄桃色の孔へと押し込んだ。そこはほんの少しだけホッチを拒んだが、淫魔の特性なのか、すぐにゆるりとホッチを受け入れた。
「辛くないか?」
「大丈夫・・・これって、僕の食事だから」
にこりと微笑むと、リードは細い両手をホッチの首に絡めた。そして、
「動いて?僕、初めてだけど・・・今、すっごく、貴方のことが欲しい」
「初めてなら、少しは優しくしないとな」
言いながら、ホッチは動き始めた。口では言ったものの、優しくできる自信は全くなかったのだが。
「ああ・・・すご・・・ホッチ・・・奥・・・来てる・・・んぅ・・・当たってるの・・・」
リードがホッチにしがみつきながら、その耳元で言う。その言葉が一層ホッチを煽る。リードの柔らかい内壁が、自分を絡め取るように、纏わり付く。それを押し開くように、腰を進め、穿つ。何度も叩きつける。その度に、自分がリードの奥深くに侵入しているのがわかる。
「きっ・・・気持ち・・・いいよぅ・・・こんなに・・・凄いって・・・わからなかった・・・」
「そうだな。座学だけじゃ、わからないよな。それで?・・・美味いか?」
きっと先走りの液体は、リードの奥に染み込んでいるはずだ。
「うっ・・・うん・・・美味しい・・・ホッチの・・・美味しいの・・・もっと、もっと美味しいの・・・ちょうだい?」
「もちろんだ」
明日も仕事ではあるが、今はこの体を離すつもりはない。ほんの偶然で拾った淫魔ではあるが、もしかすると、これは神の采配なのかもしれない。体の下で可愛らしく揺れて悶えるリードを見ながら、ホッチはその細い指に自分の指を絡めた。今夜だけではなく、明日も、明後日も、この体を抱いていたいと思いながら。
END