貴方を想いながら

『急遽、人と会うことになった。今夜は行けない』

そっけないメッセージはとてもホッチらしかった。アパートへと歩く道の途中でそのメッセージを読んだリードは小さく溜息をついた。

でも、これは、日常茶飯事のこと。

リードは、キュっと唇を噛むと、再び歩き始めた。

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鞄を小さなソファに放り、自分はベッドへと軽くダイブした。本当なら、隣にはホッチがいるはずで。けれども、現実は独りぼっちだ。

毎日、オフィスで顔を合わせているとはいえ、それは自分のアパートで彼と過ごす時間とは違う。会えると思っていたのに会えない。一緒に過ごせると思っていたのに過ごせない。期待していただけに、心がいつもよりも余計に痛む。ツキンとする。寂しい。

溢れそうになる涙を我慢して、リードは天井を睨みつけた。そして、そっと目を閉じる。

会う。それは逢瀬だった。会えば、身体を重ねる。もっと恋人らしいことをすればいいのかもしれないが、リードは誰かと付き合ったことなどなく、何をしたらいいのかわからない。だから、ホッチと会えば、身体を重ねることがリードにとってのデフォルトだった。

だから、今夜も、そのつもりだったのだ。というよりも、それ以外に何をするかなんて、考えたこともなかった。

リードは手をベルトにかけてカシャカシャと外し始めた。ボタンを外し、前を寛げると、そろそろと手をその中に差し入れた。

「ん・・・・・・」

ブリーフの上から、まだ硬くはなっていないそこを撫でるように触る。思い出すのは、ホッチの指や手の動きだった。ジニアスは、自分が受けた行為を鮮明に覚えている。それをなぞっていくのだ。ホッチが自分に与えてくれた快楽を、記憶から掘り起こす。柔らかく揉むように、それから引っ掻くように。

「ん・・・ふ・・・」

リードは膝を立てて、軽く足を開いた。指先にゆっくりと力を込めていく。ホッチはブリーフを履いたままのリードを弄ってイかせるのが好きだった。リードは両方の手を当てがって、刺激を強くしていく。ホッチが与えてくれる刺激には遠く及ばないが、いないのだから仕方がない。

「あ・・・あ・・・あんっ・・・」

ホッチの手の動きを思い出しながら、それをなぞるようにして手を動かす。決定的イケる刺激がなくて、辛くなる。恋しい。ホッチが・・・恋しい。それでも。ホッチの手の熱さを、巧みな指の動きを、鮮明に思い起こす。耳元で囁かれる、愛の言葉も。

「や・・・あ・・・い・・・く・・・んっ・・・んんっ・・・」

ぴくんっと腰が浮く。と同時に、リードはブリーフに中に精液を放った。

「・・・あ・・・はぁ・・・」

刺激としては物足りないのだが、それでもイケた。

リードは、ゆっくりと身体を起こし、チノパンを脚から抜いて、ベッドの下に落とした。カーディガンも脱ぎ、ネクタイも外す。それからじっとりと濡れてしまった白いブリーフを右脚だけ抜いた。左の太腿に白い布が引っ掛かる。そういうのをホッチが好むから、リードはそうしたのだ。ここにホッチはいない。けれどもリードは彼をいるものとして、行為に耽ることにしたのだ。

リードは横向きに寝ると、右手の指を丁寧に舐めた。自分の性液の味がするが、気にはならない。ホッチの手に絡んだ自分の精液を舐めることはよくある。クチュクチュと舐めると、その指をリードは自分の後孔へともっていった。軽く呼吸を整えると、つぷりと指先を挿入する。

「んっ・・・」

軽く唇を噛みながら、リードはクッと指先をもっと侵入させていく。ぐるりと内壁をなぞるようにして指を動かす。それは、ホッチがリードを解すために、いつもしてくれることだった。今夜はホッチの太くて熱いものはもらえない。けれども、彼を想いながら、自分を慰める。

指を、1本から2本へと増やす。中で指を開き、アナルを広げる。リードが、「欲しい」といえばくれるのに。今はその相手がいない。

「はっ・・・はぁ・・・」

どこか虚しさを感じつつも、リードはもう1本。指を増やした。そして指を抽送させる。奥まで届かないことにもどかしさを感じるが、入り口付近を引っ掻くように刺激するのは良かった。

「ん・・・ん・・・あ・・・あんっ・・・アーロン・・・欲し・・・貴方が・・・欲しい・・・」

思わず、そんなことを呟いてしまう。聞いているのは、アパートの壁だけだというのに。

けれども。

突然、誰かの手によって肩を掴まれ、仰向けにされる。その拍子に、リードの後孔からは指が抜けた。

「ひゃっ・・・あ・・・」

部屋の灯りの眩しさに目がチカチカするのを我慢して、相手を確かめる。それは・・・。

「・・・ホッチ・・・あ、なんで・・・?」

「予定が変わったから。それで、来た。メッセージは送ったんだが・・・まあ、こんなことをしていたら、気がつくわけがないな」

「ふえ・・・」

ホッチいう「こんなこと」の言葉にリードがドキリとする。まさか・・・。

「・・・あの・・・ホッチ・・・いつ・・・来たの・・・?」

「スペンスが後ろで一人遊びを始めるあたりから」

「や・・・だっ・・・もうっ・・・こ、声かけてよぅ・・・」

「こんな可愛らしいスペンスは、そう見られないからな。堪能させてもらった。しかし、ご指名があったからな。・・・欲しいって?俺が」

「・・・ん・・・そんなの・・・決まってる・・・」

「もう一度。言ってみろ」

「・・・えっと・・・その・・・貴方が・・・アーロンが・・・欲しい」

「了解した。・・・前からがいいか?それとも後ろから?」

「・・・アーロンの顔が見たい・・・だって、今夜は会えないって思ってたから」

「そうか」

ホッチは嬉しそうに微かに笑うと、スラックスの前だけを寛げて、リードの細い身体をベッドに押し付けた。リードの左太腿に引っ掛かっている白いブリーフを視界に入れると、満足そうに微笑む。

「スペンスは、本当に俺の好みをわかってるな。いい子だ。いい子にはご褒美をあげないといけないな」

ホッチはリードの両脚を抱えて割り開き、そのブリーフの引っ掛かった白い太腿をじゅっと吸い上げた。リードの放ったものの匂いが鼻腔を掠める。太腿には、すぐに赤い痕が残った。そんな痕をいくつも付けてから、ホッチはようやく、リードの後孔に既に猛った自分自身を当てがい、グッと身体を推し進めたのだった。

「はっ・・・あ・・・ん・・・やっぱり・・・指なんかより・・・アーロンがいい・・・一番・・・いい・・・好き・・・」

ぎゅっとホッチにしがみつき、リードは可愛いセリフを吐いたのだった。ホッチが悦び、余計にリードに無理を強いることをすっかりと忘れて。

激しくて、甘くて。それでも、リードにとって幸せが時間が訪れたのは’確かだった。きっと、夜中過ぎまで続く、激しくて、甘い、時間。

END