「俺は二人にきちんと言っておいた方がいいと思う。いや、むしろ言うべきだ」
「はぁ?あんた、何、言っちゃってんの?朝っぱらから!朝飯に変なもんでも食ったか?」
「俺は真面目な話をしているんだ。ちゃんと聞いてくれ」
「今の話の一体どこが真面目な話なんだよ。世の中には、言っていいことと、悪いことがあんの。今、あんたがチンとコノに言おうとしていることは、後者なの?わかる?」
「どうしてだ?」
「なんで、いちいち仕事仲間に自分の夜のセックス事情を言わなきゃならんわけ?」
「そういうことを言いたいんじゃない。俺とダニーがきちんと付き合ってるってことを言いたいだけだ」
「やめて。やーめーてー。マジ、やめて。あのね、俺は。あんたも男。それが、付き合ってまーす!ベッドも共にしてまーす!なんて、同僚にいうアホはいない。いやさ、俺もそういう性のマイノリティに対する偏見はないよ?全然、ない。けどさ、あえて公にする必要もない。大体、俺はゲイじゃない。可愛い女の子だーい好き!」
「俺だって、男はお前だけだ、ダニー。ゲイってわけじゃない」
「・・・シールズ時代になんか、やってそうだけど・・・・・・」
「確かに、軍ではそういう事例がなきにしもあらずだが、俺は違う」
「あーはいはい。一応、信じとくね」
「妬いてるのか」
『妬いてねーよ!ぶあーか!とにかく!この話はここでおしまい」
「勝手に終わらせるな。俺は納得していない」
「頼むから、納得して。お願い。プリーズ」
「一体、何の問題があるんだ」
「問題だらけでしょうが!聞かされるチンとコノの身にもなってみろよ!ボスとその相棒がセックスしてます!なんて、聞いちゃったら、可哀想でしょうが!」
「二人はただの同僚じゃない。家族だ。オハナだ。だから、言っておきたい」
「・・・あのさー。結婚を控えたカップルじゃないんだしさー、そんな結婚の挨拶に両親のところに行く的な、そういうの、いちいちいらないの!」
「俺はダニーと結婚してもいいと思ってる」
「ぶっ・・・げほっ。あ、あのさ、コーヒーを吹き出しちゃうような、そういう突拍子もない発言やめて」
「キャルバリー・バイ・ザ・シーがいいか?セントラルユニオンもあるし、ハワイ・カイ・マリーナもあるが・・・俺としては、キャルバリーがいいと思う」
「死ね。お前、一回、死ね。何、リサーチ済なんだよ!」
「俺とダニーの将来に備えて、常日頃からいろいろと考えている。仕事のことを考えて夫婦別姓は構わない。ただ、新居は俺の家でいいか?グレイスと3人で住むには十分の広さがある。何せ、昔は家族4人で暮らしていた家だ。目に前にはビーチもあるし、環境はいい」
「・・・・・・は?環境がいい?あの家、これまでに何回襲撃されてると思ってんだよ!どの面下げて、環境がいいだ?ああん?グレイスをあんなあっぶねー家に住まわせるわけにはいかねーよ!」
「わかった。じゃあ、世界最高水準のセキュリティ・システムを契約する」
「そういう問題じゃねーよ!スティーヴ、あんた自身が危険なの!俺はともかく、グレイスが巻き添えを食うなんてぜってー許さねえからな!」
「わかった。身辺整理をする。俺を狙う人間をリストアップして、片っ端から・・・」
「やめれ」
「どうしてだ」
「くだらねえことで、犯罪者になるな。アホ」
「心配してくれるんだな。ありがとう。愛してる、ダニー」
「ギャー!!!くっつくな!抱きつくな!抱きしめるな!この馬鹿力!」
「あ、すまん。ちょっと幸せになった」
「あんたって、変なスイッチ持ってるよな!とりあえず、離れろよ!」
「いや、もう少し、このままで」
「首筋に顔をうずめるな!匂いを嗅ぐな!減る!」
「つれないな、ダニー」
「この状態で、どうして、その満面の笑みが浮かんでくるのか、俺には理解不能だ、スティーヴ」
「好きな相手とを将来について話し合うって幸せなことだろう」
「誰が!いつ!将来のについて!話し合ってんだよ!あんたが一方的に話を進めてるだけじゃねーか!」
「そうか。それは悪かった。ちょっと強引すぎたかな。シールズの悪い癖だ。そうだよな。ダニーの意見もちゃんと聞かないとな。で?俺のおすすめはキャルバリーなんだが、ダニーはどう思う?」
「そこに話を戻すな」
「実は夫婦別姓が嫌だったとか?ダニー・マクギャレット・・・ああ。なかなかいい響だな」
「俺は一生、ダニー・ウィリアムズでいいんだよ!」
「家のセキュリティのことなら、これから早速TeleSignに行って・・・」
「俺、あんたんちに住まないし」
「そうだ。まずは、チンとコノに俺たちのことを報告しよう!」
「あー・・・振り出しにもどちゃったのね」
「ねえ、チン。私思うんだけど、ボスのオフィスはガラス張りをやめて、防音壁にしたらいいと思うの」
「そうだね、コノ。でも、そんな改装をしたら、二人は閉じこもったまま出てこないかもしれないね」
「それもそうね。でも、ガラス越しに、ああいうのを見せつけるなんて、私に対するセクハラだわ」
「コノは反対なのかい?」
「ううん。二人のことは祝福するわ。でも、TPOってあると思うの」
「そうだね」
「とりあえず・・・」
「ノックをしようか」
「事件も起きたことだしね、チン。で?どっちがノックする?」
「えっと・・・それは・・・」
「今、ドアを開けたら、馬鹿っぷる菌に感染しそうな気がするの」
「それもそうだね。ああ、いいアイディアがある。スティーヴの携帯を鳴らそう」
「それがいいわ!」
FIVE-0本部は、今日もそこはかとく平和です。
END