25日はクリスマスではあるが、マイクは天界に帰っているのでハーヴィーは遅くまで自分のオフィスで仕事をしていた。そうして、日付が変わる頃にペントハウスへと帰った。
すると。
「ハーヴィー!!」
玄関の前でマイクが座って待っているではないか。
「マイク。・・・もう、戻ってきたのか?」
「うん!だって、25日はさっき終わったもん!・・・迷惑だった?」
「いや。それよりも鍵は渡してあるんだ。部屋に入っていればいいのに。寒かっただろう?」
「僕、天使だから、自分で寒暖調整はある程度できるんだよ?それに天界に行ったばっかりだから、エナジー満タンだもん!それに・・・」
「それに?」
「・・・なんとなく、ここでハーヴィーをお迎えしたかったんだよね・・・。ハーヴィーが玄関から居間に来るまでの間も、惜しいっていうかさ・・・。変化かな?」
マイクが小首を傾げる。
「そんなことはない。さあ、早く部屋に入ろう。いつまでもここで話している理由もない」
「うん!」
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シャワーもそこそこに、二人でベッドに潜り込む。心なしか、マイクの顔色がいい。頰が健康的な薔薇色だ。これも、天界のパワー、というところか。そんなマイクの体を丁寧に時間をかけて優しく抱き終えた後、蜂蜜色の髪の毛を撫でながらハーヴィーは尋ねてみた。
「君は、どんな年越しをしたいんだ?」
「え?」
「31日のことだ」
「・・・31日・・・そっかぁ・・・もう、今年も終わるんだねぇ・・・」
マイクがもぞもぞとハーヴィーの腕の中で身じろぐ。そして、逞しい腕の中に収まり直すと、上目遣いにハーヴィーを見る。
「どうした?」
「・・・あのね・・・もし、ハーヴィーが嫌じゃなかたっら・・・その・・・ね・・・」
「なんだ、言ってみろ」
「でも・・・ハーヴィーは・・・興味ないかもしれないし・・・」
「俺が興味があるのは、マイク、君だ。君の望むことなら叶えてやりたいと思う。だから、遠慮しないで、言ってみろ。ん?」
「・・・その・・・タイムズ・スクエアに・・・行きたい・・・そこで、新年を迎えてみたい・・・」
「ほう。タイムズ・スクエアのカウント・ダウンか」
「ダメ・・・かな?」
「いいだろう」
ハーヴィーは即答した。今まで自分自身、興味を示したことはないが、マイクの望みであれば、十分興味の対象になる。
「それにして・・・そういうのは、とっくに経験済みだと思っていた」
「う・・・ん。その・・・さ、ハーヴィーと出会う前は・・・そのぉ・・・」
ハーヴィーの胸に顔を隠すようにして、マイクは口籠った。後ろめたいことがあるときの仕草だ。それで、ハーヴィーは、「ああ」と合点した。自分と出会う前、マイクはあの腐れ外道っと一緒にいたんだったな、と。おそらくきっと、マリファナ・パーティーでもして、年越しをしていたのだろう。だから、マイクは口籠るのだ。だから、ハーヴィーは優しく言ってやった。
「マイク。今年の大晦日は、タイムズ・スクエアに行こう。そこで、カウントダウンだ」
両手でマイクの頰を掴み、顔をあげさせて、目を合わせて微笑みかけてやる。
おどおどしていた雰囲気が消え、マイクもふわっと笑った。
「ありがとう、ハーヴィー。大好き」
マイクが顔を寄せてキスをしてくる。可愛らしくそんなことをされたら、ハーヴィーが我慢できるはずもなく、再びマイク体の下に敷き込むと、くまなく身体中にキスを与え始めたのだった。
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そして、12月31日。
「さて。そろそろ出かけるか。マイク、準備はいいか?寒暖調整ができる体質とはいえ、寒いぞ」
「えっ!?・・・まだ・・・9:00だよ?」
「やっぱりな」
「・・・どういうこと?」
「カウント・ダウンに行きたいって言っていたわりには、具体的なことはわかっていない辺りが君らしい。どうせなら、いい場所がいいだろう?早い人間は10:00くらいからバリケード内で場所取りをするんだ」
「・・・し・・・知らなかった・・・そんなんだったら、僕、我儘なんか言わなかったのに・・・ごめん、ハーヴィー。・・・えっと・・・その・・・やめる?」
「それは断る。俺は一度決めたことは遂行する主義だ」
「で、こんな早くからなんて知らなくて・・・ハーヴィーに迷惑をかけちゃう・・・」
「君と一緒にいることは迷惑じゃない。喜びだ。ああ、コートの下にはダウンベストを着た方がいいな。貸してやる。それから、マフラーに手袋。帽子・・・」
言いながら、ハーヴィーがクローゼットから防寒グッズを出してくる。
「ぼ、僕よりも自分の心配をしてよ!ハーヴィー!僕はある程度寒暖調整できるんだから!」
「ああ。それなら、俺は君で暖を取ることにしよう」
マイクの話を聞き流しながら、ハーヴィーはどんどん防寒グッズをマイクに身に付けさせていく。そして、自分が満足すると、マイクの腰に手を回し、部屋を出るべくのその体を促したのだった。
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「ねえ、寒くない?ハーヴィー?」
マイクのこのセリフは一体何回目だろう。もう数十回以上は言っている。その度にハーヴィーはマイクの体を後ろから抱きしめた。マイクを安心させるためもあるが、マイクの自身の体が暖かいからだ。どうやら、自分で熱を発しているらしい。本人にその自覚はないようだが。仕事の話はあまりせず、一緒に観た映画の話や一緒に聴いた音楽の話をする。新年封切りの観たい映画の話なども。途中、ハーヴィーが懐に忍ばせておいたビスケットを齧ったりしながら、夜が来るのを待つ。ふたりとも、不思議と時間を持て余さなかった。仕事でもプライベートでも一緒にいることが多いが、話すことはいっぱいあった。特に、マイクは天界から戻ってきたばかりだ。天使のとしてのマイクの昔話を聞くことも楽しかった。
そして午後6時。ニュイヤーズイブボールが点灯され上がっていく。
「うわぁ・・・」
「この後、伝統的な中国のダンスパフォーマンスがある」
「楽しみ」
「ああ。真夜中まで、結構楽しめるぞ」
「僕ね。あえて、検索しなかったんだよね」
「そうみたいだな」
「何が起こるかわからないワクワク感ってあるじゃない?」
「じゃあ、俺は黙っていた方がいいか?」
「やだ。解説して。ハーヴィーはちゃんと調べてきたんでしょ?」
「まあな」
「それなら、僕にその度ごとに色々と解説して。僕、ハーヴィーの声好きだし」
「君は可愛らしいことをさらっと言うな」
ハーヴィーは自分のコートの前を開けて、その中にマイクを入れてしまった。
「ハーヴィー?」
「この方があったかい。ああ、俺がだ。君は本当に体がポカポカしてるな」
「あ、僕の天使機能、役に立ってる?」
「ああ。ものすごく。暖かい」
ハーヴィーは自分のコートに中で、マイクの体を後ろから抱きしめた。
ダンス、ライブ、パフォーマンス。それらを楽しんでいるうちに、真夜中が近づいて来る。
そして、午後11時59分。60秒カウント・ダウンが始まり、ボールドロップが落ちる。
後ろからマイクの表情を見ると、瞳がキラキラしている。よほど、楽しみにしていたのだろう。
午前0時。
花火の音。そして紙吹雪。周囲から聞こえる「Happy New Year」の声。
ハーヴィーはコートの中でマイクを反転させると、小さな声で「Happpy New Year」と言うと、深いキスをした。それも長い時間。
マイクはびっくりしたが、ちらりと横目で周囲を見ると、確かにキスをしている人ばかりだ。だから、マイクはそっと目を閉じて、ハーヴィーの唇の感触を味わう。その唇は冷たかった。だから、マイクは自分の意識を集中させて、そこへ体温を集めるようにする。口の中に入り込んで来るハーヴィーの舌に絡める自分の舌も暖かくする。「あるがとう」と「愛してる」の思いを込めて。
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「あったか~い!!!」
バスタブに溜めたお湯の中で、マイクが気持ち用さそうな声をあげる。外でと同じように、後ろからハーヴィーに抱かれている。
「寒かっただろう?」
「それはハーヴィーの方でしょ?・・・本当にごめんね。僕の我儘に付き合わせちゃって」
「いや、俺も楽しかった」
「・・・僕、あんな外でハーヴィーとキスができて・・・その・・・嬉しかったんだ。だって・・・僕は男でしょう?普通は、みんなの前でキスはできないでしょう?」
「大晦日のカウント・ダウンではなんでもアリだ。それに・・・俺は、大晦日でなくても、タイムズ・スクエアのカウント・ダウンでなくても、何処でだって、キスはするぞ」
「えっ・・・それは・・・どうかなぁ・・・」
「今度、ドナの前でしてみるか?ああ、レイチェルの前でもいいぞ。どうせ、知ってるんだし」
「やめてー。恥ずかしいー」
マイクが慌ててバスタブの湯をパシャパシャする。
「もう・・・。それにしても、ハーヴィーっては準備がいいよね。ホテルをキープしておくなんて」
「新年をタイムズ・スクエアで迎えた後は、俺の望みをきいてもらおうと思ってな」
「なあに?ハーヴィーのお願いなら何でもきくよ!」
「そうか」
「だって、僕のお願いをきいてくれたんだもん!」
「そうか、それなら、今日は1日ベッドから出られないと思え」
「え?」
「俺の望みをきいてくれるんだろう?ああ、安心しろ。食事はルームサービスを取ってやるから」
そう言って、ハーヴィーがマイクの肩甲骨に口付ける。
「あっ!だめっ!そこ・・・羽が出ちゃうっ!羽が濡れたら・・・乾かすのが大変だよう・・。」
「そうか。じゃあ、ここにキスをするのはベッドまでとっておこう」
ハーヴィーはマイクの顎に指をかけると、振り向かせて、バスルームの湯気の中でキスをした。そしてそのまま、マイクを立ち上がらせて、キスをしたまま、ベッドルームへと移動したのだった。
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「あっ・・・んっ・・・はぁ・・・ん・・・あ・・・こ、これが・・・ハーヴィーの・・・望み?」
ハーヴィーの腹に指先を付いたマイクが体を自分で揺らす。否、下にいるハーヴィーからも揺らされている。
「ああ。1月1日に、君を独り占めすること。25日は一人きりだったからな。その分だ」
「ああ・・・ごめんね・・・」
「天使なんだから、仕方がない。・・・それに、天界に戻ることを許されたのだから、君はよほど良い天使になったのだろう」
「・・・レイチェルに・・・聞いた?」
「ああ。俺と出会う前は出禁だったらしいな」
「うん。・・・僕、悪い子だったから・・・ひゃっ・・・あんっ」
ぐいっと下から突き上げられて、マイクの背がしなる。
「あ・・・出る・・・羽・・・」
「ああ。それはいいな。広げて見せろ。その綺麗な真っ白な翼を」
ハーヴィーの指が肩甲骨を撫で上げる。
「あ・・・ああああああーっ・・・」
バサリと真っ白な羽が広がる。
天界から戻って以来、マイクの羽には変化が訪れていた。白いことに変わりはないのだが、それに真珠のような煌めきが加わったような感じがする。どんな宝飾品よりも美しい。いや、羽だけでなく、それを有するマイク自身が。そして、愛しい。
「ハーヴィー・・・お願い。・・・抱きしめて・・・」
ハーヴィーは片手をベッドについて起き上がると、マイクの羽を潰さない位置に両腕を回してやる。そして、力を込める。
「ああ・・・大好き・・・ハーヴィー・・・どうしよう・・・もうね、歯止めが聞かないくらい、僕、貴方のことが好きなんだよ・・・泣きそうなくらい、好き、なんだ・・・」
ハーヴィーを首筋に顔を埋めて、本当に泣きそうな声を出す。
「俺もだ。言葉を尽くせないくらいに、君が好きだ。愛してる」
「貴方に、僕のだって、印をつけたいくらい・・・好き」
「いいぞ」
「え?」
「俺がいつも君につけてるヤツ。まあ、俺は見えないところのつけてるが・・・」
「じゃあ・・・僕も・・・」
「いや。ちょうど、君の顔は俺の首にあるんだ。そこに付けたらいいだろう」
「でも・・・見えちゃうよ?ワイシャツで隠れないよ?ここ」
「それも一興だろう。俺は構わない」
「・・・いいの?」
「ああ」
マイクが唾を飲み込む。ハーヴィーの首筋はとても魅惑的だ。そこに、自分の唇で紅い印をつけることができたら、どんなにか幸せだろう。
「マイク」
ハーヴィーは少し首を傾ける。
「本当に・・・いいの?」
「ああ、もちろん。君の望みは俺の望みと言っただろう?」
「ありがとう・・・ハーヴィー・・・。僕、とっても嬉しいよ」
そう言って、マイクはそっとハーヴィーの首筋に唇を当てた。そして、キュッと吸い上げる。最初は躊躇いがちに。けれども、我慢できなくて、強く吸い上げる。それだけの行為なのに、不思議と心の中に安心感が芽生える。ハーヴィーは自分のもの。
マイクは堪え切れないほど嬉しくなって、ぎゅっとハーヴィーにしがみついた。そして、ハーヴィーもまた、マイクが愛しくなって、そのパール感のある真っ白な羽を有した愛する天使を揺さぶり始めたのだった。
Happy New Year !