堕天使であるマイクは、スマホを片手に資料室の床にしゃがみこんでいた。壮絶に途方にくれた表情をして。さっきからずっと、大きなため息をつきながら、心の中では「どうしようどうしようどうしよう・・・」が繰り返されている。
百数回めのため息をついたところで、資料室のドアが開いた。が、マイクは気付かない。もう、思考がそういうことに無頓着になっているのだ。
「マイク?どうしたの?何をしているの?」
声をかけられて、ようやく顔を上げるマイク。そこには、書類を持ったレイチェルが立っていた。上級天使、レイチェル。マイクの監督者。しかし、世を忍ぶ仮の姿は、事務所の優秀なパラリーガルだ。
「え・・・まさか、またエナジー不足?顔色が悪いわよ?」
ヒールを鳴らして、つかつかと近寄って来るレイチェルに、マイクは首をブンブンと横に振った。
「ちっ、違うよ!違うんだ!」
「じゃあ、その蒼白な表情はなんなのよ」
「僕・・・失敗しちゃったんだ・・・どうしよう・・・」
レイチェルは首を傾げた。確かに堕天使マイクは優秀な天使とはいえない。しかも下界に堕ちてからは悪い友人と悪いことをやって羽が黒くもなってしまった。しかし、この事務所に、正確にいえば、ハーヴィーに拾われてこの事務所に来てからは、優秀なアソシエイトの部類に入る。仕事だって、ハーヴィーのお眼鏡に叶っている。
「どうしたの?仕事の失敗?だったら、取り返せばいいんじゃない」
「ダメなんだ!もう取り返せないんだ!何処も・・・何処のレストランも、予約でいっぱいなんだ!!!!!!!」
「・・・・・・はい?」
レイチェルは、さらに首を傾げ、目を細くしながら、マイクを見つめたのだった。
********************
マイクはもう、涙目になっていた。レイチェルもしゃがみこんで話を聞いてやる。
「僕、いっつもハーヴィーのお世話になってるから、何かお礼をしたいなって、ずっと思ってたんだ。そうしたら、下界では、クリスマスは恋人や家族と一緒に過ごすんでしょ?それで、テレビとか雑誌を見てたらさ、すっごく素敵なレストランで食事をして、プレゼントを渡すっていうのが定番だってやってて・・・」
「ああ、それで、高級レストランを予約しようと?」
「うん。僕のお給料だから、最高級は無理だけど。でも・・・」
「そういうクリスマスの過ごし方に気付くのが遅すぎて、片っ端からレストランに予約の電話をしたものの、断られ続けているってことね?」
マイクはコクコクとい頷いた。
「それにね、ハーヴィーに何をあげていいかもわからないんだ!!!・・・だって・・・ハーヴィーは何でも持ってるから・・・」
とうとうマイクはいじけて、指で床に円を描き始めた。その様子を見て、今度はレイチェルがため息をつく番だった。
「ねえ、マイク。去年のクリスマスは、貴方はトレヴァーといて何をしてた?」
「・・・マリファナパーティー」
しょんぼりとマイクが言う。
「そうね。だから、私も貴方のことは無視した。でもね、今の貴方はしっかりとやってる。立派な白い天使よ?だからね?」
「だから?」
「クリスマスは天界に帰らないとダメなの!!」
「えっ!?ええええええええ!?・・・・そうなの?」
「当たり前じゃないの!!生誕祭よ!ハーヴィーよりも神様優先でしょうが!!!!」
「・・・どうしよう・・・僕、そのことハーヴィーに言ってない・・・」
「クリスマス休暇があるから、仕事は大丈夫でしょ」
「そうじゃなくて!!!・・・クリスマスは一緒に過ごしたいなぁ・・・って言っちゃったんだ」
「・・・レストランの予約も取れてないのにね」
「ううううううう」
「まったく。とにかく、12月25日は、私と一緒に天界に行くわよ?いいわね?それと・・・」
レイチェルは美しいラインのシャツの胸ポケットから、細くて赤いリボンを取り出した。そして、それをマイクに渡す。
「使い道は自分で考えなさい。じゃあね、素敵なクリスマス・イブを!」
「レイチェル~・・・」
某国の青い猫型ロボットに縋るような声で、マイクはレイチェルの名前を呼んだが、彼女はさっさと資料室から出て行ってしまった。がっくりとうなだれるマイク。
もし、自分に家事能力があったなら、素敵なディナーを作ることもできるのに。しかし、マイクにはキッチンの破壊能力しかない。クリスマス・イブは今日なのに。そして、明日は天界に帰らなくてはならなくなった。素敵なクリスマスが遠のいて行く。ハーヴィーを喜ばせるために何もできない自分が’情けない。
マイクはふらふらと立ち上がり、よろよろとアソシエイト・オフィスへと歩いて行ったのだった。
********************
ぼうっとしながらも、仕事を進めることができるあたりは、マイクの美点である。ハーヴィーからの仕事もルイスからの仕事も、マイクはいつものようにそつなくこなした。処理の終わった書類を揃えて紙ファイルに挟む。周囲をみると、アソシエイト仲間は浮き足立っているようだった。クリスマス・イブ。彼女や友人と楽しく過ごすために、みんな今夜は早く帰る雰囲気だ。マイクも、早く決断しなければならない。唇をキュッと噛みしめる。仕事のファイルを渡すためにハーヴィーのオフィスに行こう。そして謝ろう。自分の情けなさを。大好きな人に、何もしてあげられない、情けなさを。
マイクはファイルを持って立ち上がった。そして、ドキドキしながらハーヴィーのオフィスに向かう。何て言おう。どんな顔をしよう。まずは謝罪からだろうか。
ハーヴィーのオフィスに行くと、門番であるドナはすでにいなかった。だから、マイクはそのままガラス張りのオフィスに入る。ちょうどハーヴィーはマフラーをして、黒いコートを着るところだった。
「あ・・・ハーヴィー・・・出かけるの?・・・えっと・・・その・・・書類仕事終わったから、届けに来たんだ・・・」
「ああ。助かる。デスクの上において置いてくれ。明日、見る」
「・・・クリスマスなのに、仕事なの?」
「そうだな。君もいないことだしな」
「えっ?」
「さっきレイチェルが来た。明日は彼女と天界に帰るんだろう?」
「あっ・・・うん・・・そうなんだ」
「だから、これからアソシエイト・オフィスに君を迎えに行こうと思っていた」
「・・・そうだったの?」
「君だろう、言ったのは。クリスマスは一緒に過ごしたいって・・・」
「そっ・・・そうなんだけど・・・。でも・・・僕・・・」
「いいから。すぐに鞄とコートを取ってこい。下で落ち合おう。ほら、早く、行け」
背中を押されて、マイクは頭の中の疑問符を浮かべながらも、事務所の廊下を走って行った。状況がどうであれ、ハーヴィーを待たせたくない。
アソシエイト・オフィスに戻ると、そこはもぬけの殻だった。もうみんな、恋人や家族と過ごすために事務所を出たらしい。マイクも慌てて、コンピュターをシャットダウンし、コートを鞄を掴んでオフィスを走り出た。エレベーターを待つことももどかしく、1階に降りる。エントランスには、すでにハーヴィーがいた。
「ハーヴィー!」
「行くぞ」
「行くって・・・何処?あの・・・・」
マイクは歩き出すハーヴィーのコートの袖を掴んだ。
「・・・あの・・・あのね・・・その・・・ごめんなさい」
マイクは俯いて謝罪した。
「僕、下界のことよくわかってなくて、本当はいつもハーヴィーにお世話になってるから、今夜はハーヴィーにご馳走してあげたかったんだ!・・・でも・・・その・・・」
「クリスマス予約で、店が取れなかったんだろう?・・・レイチェルに聞いた」
クスクス笑いながら、ハーヴィーが言う。
「君の天使としての予定がわからなかったから黙っていたが、レストランは俺が予約をしておいた。そこへ行こう」
「え?」
「ハロウィンはともかく、クリスマスは確実に君たち関連のものだろう?今日か明日かはわからなかったが、きっと天界に行くだろうとは思ってた」
「・・・ハーヴィー・・・凄いねぇ・・・。僕なんか、クリスマスに天界に戻ることすら考えていなかった。・・・去年は羽が真っ黒だったし・・・」
「・・・今は、白い。その白い羽を見せて来い」
「・・・うん」
マイクが笑顔で答える。
「さあ、予約に遅れる。行くぞ」
「うんっ」
ハーヴィーとマイクは並んで歩き始めた。
クリスマス・イルミネーション。笑顔でストリートを歩く人々。賑やかな笑い声。その中を歩いていると、気持ちが明るくなってくる。けれどもそれはハーヴィーが一緒だからだ。
クリスマスの雰囲気を味わいながら、少し歩いてホテルに入る。そこに併設されているレストランへ、ハーヴィーはマイクをエスコートした。
「クリスマス・ディナーだから、料理を選ぶ必要はない。そうだな、ワインだけは選ぶか」
ハーヴィーがリストから、気に入った赤ワインをオーダーした。レストランは客が多かったが、ワインはすぐに運ばれ、グラスへと注がれた。ハーヴィーが口角をあげてマイクに微笑み、グラスを上げる。マイクも嬉しそうに笑ってそれに習った。
「本当はさ、レストランの予約が取れなかったら、自分で料理できればって思ったりはしたんだ」
「ああ、それはやめておけ。キッチンの修理代が大変なことになる。君の料理は、シリアルにミルクをかけるだけでいい」
「うん。それならできる」
「だいたい俺は、君に料理の能力は求めていない。・・・一緒にいてくれるだけでいい。今夜も、君がいてくれたら、俺の部屋で過ごすだけでもよかったんだ」
「・・・でも、下界のクリスマスって、そういうんじゃないって、テレビでやってたし・・・」
「俺は君と一緒にいられれば、それでいい。ただ、君が何かしようと考えてくれていたのは正直、嬉しいと思った」
「ちょっと詰めが甘かったけど・・・」
「そうだな。しかし、仕方がないだろう?下界での経験が浅いんだし」
「んー。これから色々と勉強するね」
肉料理を頬張りながら、マイクが言う。
「そう言えば・・・ハーヴィーはこのお店、いつ予約したの?」
「レイチェルが、君が資料室で打ちひしがれている、と教えてくれた後だな」
「えっ!嘘!そんないきなりで予約が取れたの!?」
「俺にできないことはない」
「やっぱり、ハーヴィーって凄いや」
「ホテルの部屋も取ってあるから。明日はこのホテルから天界へ行け」
「ありがとう、ハーヴィー。・・・僕、貴方のために何もしてあげられないのに」
「気にするな。それで?いつ戻ってくるんだ?」
「うん。26日には戻るよ?お祝いは25日だけだから」
「そうか。ああ、デザートは二人分食べられるな?俺のをやる。俺はコーヒーだけでいい」
「いいの?うわぁ。やった!」
甘いもの好きな天使は、破顔した。
デザートを食べながら周囲を見ると、家族連れよりはカップルが多い。そして互いに花や、小さな箱を交換しているのが見える。マイクは、心の中で、「ああ・・・」と思ってしまった。そうなのだ。マイクはレストランの予約もできなかったし、ハーヴィーへのプレゼントも用意できなかったのだ。コーヒーを飲みながらしゅんとする。本当に自分は何もできないダメ天使だと思う。天使なのに、好きな人を幸せにしてあげられない。本当に堕天使だなぁ・・・と感じる。
「マイク?コーヒーは飲み終わったか?」
「え?あ、うん」
「それじゃあ、行こう」
二人とも預けたコートを手に持ち、ホテルのフロントに向かう。ただし、マイクは少しだけ離れて待っていた。男同士で、ホテルの部屋・・・というのは、あまり普通でないことは自覚している。ハーヴィーがカードキーを受け取ると、マイクに合図を寄越す。それを受けて、マイクはようやく、タタッとハーヴィーの横に立った。
********************
部屋はホテルの最上階。大きなガラスから、NYの夜景が見える。マイクが美しい夜景に見入っている間に、ハーヴィーは二人分のコートをクローゼットに片付ける。それから、マイクの隣に立った。
「綺麗だねぇ・・・キラキラしてる」
「クリスマスだから、イルミネーションも多いしな」
言いながら、ハーヴィーはマイクの背後に回り、スーツのジャケットを脱がせる。その時に、ワイシャツの胸ポケットの中に赤色のものがちらりと見えた。
「何だ、これは」
後ろから手を回し、ポケットの中のものを摘む。すーっと引っ張ると、それは細くて赤いリボンだった。
「ほう、面白いラッピングだな」
「え?あ、それ、レイチェルがくれたんだ。使い方は自分で考えろって言われた」
「ふうん。・・・で?どう使うんだ?」
「・・・どうって・・・どうしよう。僕、貴方に何のプレゼントも用意できていないんだ。貴方は何でも持ってるし、貴方が欲しいものもわからなかったし」
「そうか?いつも言ってるだろう?さっきだって言ったぞ?」
「嘘。ハーヴィー、欲しいもの、何か言ってた?どうしよう。僕、聞き逃してた!・・・ねえ、お願い。もう一度だけ教えて?」
マイクは申し訳なさそうな表情でハーヴィーを見る。
「・・・いいだろう。・・・俺は、君がいれば、それでいい」
「・・・僕?」
「いつも言っていることだろう?ん?」
「だって・・・そんなの・・・特別じゃないよ?クリスマスって、もっと何かこう、特別な・・・」
「だったら、君が、ずっと俺の傍にいるという確証が欲しい」
「ハーヴィー・・・」
「俺だけの天使でいろ」
「・・・うん。僕、ハーヴィーだけの天使になるから。ちゃんと明日、神様にお願いしてくるから」
「じゃあ、今夜は君自身をもらうとするか」
ハーヴィーの指がマイクのネクタイを外し、ワイシャツも脱がせる。
「ああ、そうか」
ハーヴィーがニヤリと笑った。
「え?何?」
「リボンの使い道がわかった」
「レイチェルがくれたリボン?」
「ああ。こうしてラッピングしよう」
そう言って、ハーヴィーは赤いリボンをマイクの首に緩く巻きつけてリボン結びにする。
「これで立派なプレゼントの出来上がりだ。俺限定のな」
ハーヴィーの顔がマイクに近づき、キスをする。角度を変えて、何度も唇を重ねる。
「・・・ハーヴィー・・・」
唇の隙間から、マイクが大好きな人の名を呼ぶ。
「どうした?」
キスの合間に答える。
「・・・嬉しくて・・・羽が出ちゃいそう・・・」
「いいだろう、出せば」
「だって・・・ここホテルだし・・・。羽根が散らかったら・・・変に思われない?」
「大丈夫だろう。クリスマスの奇跡だと思うさ」
ハーヴィーの腕がマイクの腰を引き寄せる。そして、深い、吸い上げる口付けを与える。その刺激で、マイクは体を震わせた。その瞬間、ハーヴィーの指先がマイクの肩甲骨をさらりと撫でた。
「!ああっ・・・ダメっ!ああっあっ!」
バサリっ・・・
背中からマイクの白い羽根が広がる。鏡のように磨かれたガラスに、その姿が映るのを、ハーヴィーは満足気に見遣った。・・・俺だけの、天使、と。
*******************
「んっ・・・あっ・・・あっ・・・あっ・・・ひ・・・あ・・・」
ハーヴィーの体の上で、羽と一緒にマイクの体が揺れている。首に巻かれた赤いリボンもだ。ハーヴィーは指でマイク自身を刺激してやっている。リボンを可愛らしいここに結ぶのもありだったな・・・などと不埒なことを考えながら。
天界では無性だったマイクが、男として下界に堕とされた。本来であれば、可愛らしい女の子と出逢い、付き合う可能性もあっただろう。けれども、紆余曲折があったとはいえ、この堕天使は自分の腕の中へと堕ちて来たのだ。元来、独占欲の強いハーヴィーだ。手に入れて気に入ったものは絶対に手放さない。当然、マイクのことを離す気はない。以前、レイチェルは言っていた。すでにマイクは自分の守護天使だと。自分は、この蜂蜜色の髪をした可愛らしい天使に守られているのだ。怖いものなど、この世にはなく、マイクさえいれば、どんな困難をも乗り越えられる。この天使を手元に置く為なら、自分はどんな悪事でも働くだろう。
「ああ・・・ハーヴィー・・・ダメぇ・・・イキそう・・・」
ハーヴィーの腹部に付いている指先に力が篭る。マイクは自分で体を動かしていたが、それも限界のようだった。ハーヴィーは片手でマイクの腰を支えると、下からその白い体を突き上げてやる。
「んあっ・・・あ・・・ああ・・・」
気持ちが良くて、飲み込みきれていない唾液が、マイクの口元で光る。そんな姿さえも可愛らしい。握っていたマイク自身もキツく絞り上げてやる。
「ひゃっ・・・あっ・・・ああーっ!!」
真白な羽は左右に大きく広がった。吐き出された白いねっとりとた液体がハーヴィーとマイクの腹部を汚す。否、白く彩る。それを見て、「綺麗なものだな」とハーヴィーは思った。
「は・・・あ・・・ハー・・・ヴィー・・・」
自分の方へと倒れ込む体を抱き締めてやる。その拍子に、マイクの体からハーヴィーが抜ける。
「あ・・・ん・・・」
その刺激さえも、甘美に感じるらしい。うっとりとした声を微かに震わせる。広がった羽も、静かに閉じられる。けれどもハーヴィーはしっとりとしたその白い翼を優しく撫でた。それを心地好さそうに受け止めながらマイクが言った。
「・・・ねえ、ハーヴィー・・・。僕、今日は貴方のプレゼントだから、もっと・・・その・・・何をしてもいいんだよ・・・?」
「そうだな。まだたっぷりと時間はあるしな。・・・今度は、どうして欲しい?」
「貴方は?どうしたいの?」
「君が望むことを」
「それじゃあ、クリスマス・プレゼントにならないよぅ」
「君のいい顔が見たいんだ。だったら、君が望むことをしてやった方がいいに決まっている。だから・・・どうして欲しい?」
「・・・んっとね・・・羽の・・・その・・・付け根のところ・・・好き」
「そうか」
肩甲骨はマイクの性感帯の1つだ。ハーヴィーはベッドにマイクを這わせると、背中に覆いかぶさった。もちろん、羽を痛めないように。そして、翼が出ている、その際を舌でゆっくりと舐め上げてやる。
「ふ・・・あ・・・」
ふるりとマイクの体と羽が揺れる。顎に指をかけて軽く振り向かせると、半分溶けたような甘ったるい表情が見える。これだ。こんな表情が見たかった。この上なく、自分に気を許し、全てを委ねる表情を。これ以上のプレゼントがあるだろうか。
「ん・・・はぁ・・・」
マイクは背中のイイところを舐められながら、次第に腰を高く上げていった。羽の付け根に集中しているハーヴィーからは見えないが、きっと後孔はヒクついているのだろう。ハーヴィーは先ほどの残滓で濡れているマイクに、後ろから自分を押し込んだ。そこは温かく、包み込むように、ハーヴィーを受け入れる。羽の付け根をキツく吸い上げてやると、後ろがきゅうきゅうと締まる。クリスマス・イブに天使を犯すとは、随分と背徳的な行為だな・・・と思いつつも、ハーヴィーはそんな堕天使の体を遅くまで離すことができずにいたのだった。
********************
「・・・散らかしちゃったねぇ・・・」
マイクが困ったような顔をしながら、ホテルの部屋を眺めた。マイクの天使の羽根が、あちらこちらに散らばっている。
「羽根枕が壊れた・・・とでも言っておくか」
「それ・・・何してたのって思われるよ!」
「冗談だ。・・・羽根は俺が拾っておくから。君はそろそろ行った方がいいんじゃないのか?レイチェルが待っているんだろう?」
「そんなことも知ってるの?」
「君の監督者は厳しいからな。昨日、釘を刺された」
「うわぁ・・・レイチェルったらぁ・・・。ハーヴィー、明日には帰ってくるから」
「わかってる。・・・迂闊に引き止められるなよ?」
「大丈夫。僕は出来の悪い天使だから」
可愛らしくウィンクをすると、マイクはコートを着てメッセンジャー・バッグを斜めがけにした。ちなみにハーヴィーはまだベッドの中だ。
「じゃあ、行ってくるね」
マイクが、ハーヴィーに小さなキスをする。
「ああ、行ってこい。クリスマスは、君たちの日だ」
「うん。じゃあね」
そう言ってマイクはホテルの部屋を出た。すうっと、深呼吸をする。そして、ワイシャツの襟元に指を当てる。昨夜ハーヴィーに結んでもらった赤いリボンは、実はそのままだ。リボンのおかげで、なんだか自分はハーヴィーのものなのだという実感がもてる。26日には外すことになるだろうが、クリスマスが終わるまでは、そのまま結んでおこうと思うマイクだった。
Happy Merry Christmas !