「君は一体、何度このアンドロイドを死なせたら気がすむんだ?」
「うー・・・僕だって死なせたくてやってるわけじゃないよ!・・・ベストな選択だと思って選んでるのに・・・」
「天才も形無しだな」
「天才じゃないもん。あれはただの能力だもん。ああ・・・僕ってアンドロイドに似てるかも。覚えたり、情報処理には長けてるけど、人の心はわかんない」
「で?もう一回最初から?」
「そうする」
「さて、今度も革命に失敗するかな」
「そういうこと言わないで!」
土曜の夜。ハーヴィーの部屋でマイクはコントローラーを握りしめていた。ここ最近の週末は、こういう過ごし方だ。マイクがトライしているゲームを、横でハーヴィーが眺めている。最初は、あまりいい顔をしなかったハーヴィーだったが、これが良く出来たゲームで、まるでドラマを見ているような面白さがあった。ただし、マイクの選択ミスのおかげで、未だにハッピー・エンドを拝むことは叶っていない。
「ネットで検索したら、バッド・エンド回避の方法がわかるんじゃないのか?」
「やーめーてー。それじゃ、つまらないでしょ」
マイクがプンスコ言いながら、スコッチのグラスを取り、喉を潤した。
「よし!」
「頑張れ、5回目」
「もう、うるさいってば!」
ハーヴィーは喉奥で笑いながら、足を組み替えた。さて、今度はどんなストーリー展開になることやら。
マイクがこのゲームをプレイすると、主要な人物たちはどんどん命を落としていく。変異したアンドロイドたちの革命も失敗に終わり、廃棄されていく。
「なあ、マイク」
序盤の捜査活動は慣れたものだ。証拠などをどんどん集めていく。こういうことに関してはマイクは得意だ。しかし・・・。
「何、ハーヴィー」
マイクは画面を見つめたまま返事をした。
「君の選択を見ていると、アンドロイドになりきりすぎて選択しているような気がする。もう少し、人間の心寄りで選択したらどうだ?」
「え?だって、アンドロイドだよ?」
「しかし、そのアンドロイドの『変異』が重要なんだろう?」
「・・・まあ、そうだけど・・・」
「マーカスとカーラは割と簡単に変異させられるのにな」
「コナーが難しいんだよ。アマンダとのやりとりはどれがベストなのか意味わかんないし」
「コナーを変異させてみたらどうだ?」
「え?だって!コナーは変異体捜査のスペシャリストって設定だよ!それが変異しちゃったら、ダメじゃん!」
「今まで、そういう思考で失敗してるんだろう?」
「う・・・まあ・・・そう・・・だけど・・・。じゃあさ、ハーヴィーも参加してよ。アドバイスして」
「いいのか?俺が口出しをして。今まで嫌がってたくせに」
「・・・いいよ。なんか、自分の思考のループから抜け出せないし。ハーヴィーの意見を取り入れるのもありかも。一緒にやろ?」
マイクはハーヴィーを見ると立ち上がった。
「ねえ、ハーヴィーの寄りかかってゲームしたい」
ハーヴィーは足を解いて、その間にマイクを座らせた。
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「うっそ・・・」
数時間後。マイクは全身の力を抜くと、ハーヴィーに体重を預けた。
「すごい・・・。革命、成功しちゃった。カーラもアリスもルーカスもカナダに行けたし、コナー・・・死ななかった。ちゃんとハンクと再会できた。・・・ハーヴィー・・・すごい・・・」
「良かったろう、コナーを変異させて」
「うん。でも意外だった。そっかー・・・変異ありかー」
ハーヴィーは背後からコントローラーを取り上げると、ソファの上に置いた。
「さて。ゲームはこれで終わりだな」
「えー・・・。ねえ、すべてのエンドを見たいって思わない?」
「ちょっと待て、また俺は君に放っておかれるのか?。ベストが結末を見ることができたんだからいいだろう?」
「だって。コンプリートしたいんだもん」
「それは来週にしろ」
そう言ってマイクの体を抱きしめるようにして拘束する。そして、耳朶を舐め上げた。
「くすぐったいよぅ・・・」
「すぐに良くなる」
ハーヴィーの舌が首筋へと伝う。マイクは右手を後ろに回し、のけぞるようにして、ハーヴィーの髪に指先を絡めた。
「君がゲームに費やした分の時間は、確実に俺が拘束するからな」
「うわぁ・・・それって結構な時間だよね。でも、ハーヴィーに拘束されるならいいや。その時間だけは、確実に僕だけのハーヴィーだもんね」
「聞き捨てならんセリフだな。俺はいつだって君だけのものだが?」
「そうだね。・・・そういうのが、これからもずっと続くといいなぁ。あ、やっぱり、すべてのエンドを見るべく、ゲームしよっと。そうしたら、ハーヴィーの時間がもらえるもん」
「そんなことをしなくたって、くれてやるから」
ハーヴィーの手が、マイクの体を探り始める。マイクは体をハーヴィーの預けながら、小さな声を漏らし始める。
長い、ゲームエンドロールが、まだ流れ続けていた。
終わり