Domestic 02

バスルームを出てから、着替えを持ってくるのを忘れたことに気がついた。仕事のことを考えながら、シャワーを浴びようなんて思ったせいだ。仕方がないので、マイクは腰にバスタオルを巻いた姿で、寝室へとペタペタ歩く。そして、ハーヴィーのせいで、ボトムが一切入っていない引き出しを開けた。セントラル・ヒーティングで常に暖かい部屋とはいえ、ジーンズもスウェットも履けない・・・というのは心もとないのだが、ハーヴィーに管理されているので仕方がない。マイクも最近は半分諦めモードだ。

適当に、セーターとボクサーパンツを選んで手に取った瞬間、背後から厳しい声が飛んできた。

「違う!」

「えっ?・・・ハーヴィー・・・ちょっと。気配を消して後ろに立つのやめてよ!びっくりするじゃん!」

「だから、違うと言ってるだろ」

「もう、何がだよー」

「そのセーターに合わせるボクサーパンツはこっちだ!」

つかつかとマイクの横に立ち、引き出しから別なボクサーパンツを取り出し、マイクが持っているものと取り替える。

「・・・ねえ、別にどっちでも同じじゃない?」

「何を言う。違うだろう。ディテールが!」

「ディ・・・ディテールって・・・あのさぁ・・・」

呆れた声を出すマイクに、ハーヴィーが真剣な表情で語り始めた。

「いいか?まず色!セーターの裾から見えるんだから、色のコーディネートは絶対に考えなければならない。君はチェックのスーツにストライプのネクタイをするか?」

「まあ、そういうキチガイなコーディネートはしない・・・ね」

「そうだろう。だから、セーターとボクサーパンツも同じ関係にある。君が選んだオフホワイトのセーターには、絶対にこっちの濃いグレーの方がいい。ま、黒でもいいがな。しかし、今日の俺の気分的にはグレーだな」

「・・・ハーヴィーの気分まで考慮すんの?」

「当たり前だろう。俺が見るんだから」

「普通、見せるもんじゃないんだけどね」

「女だって、勝負下着を持ってるだろうが」

「勝負って・・・」

「君はもっと自分を魅力的に見せることを学んだ方がいい。そして、次に素材!」

「は?」

「俺がトム・フォードのスーツに、安物ポリエステルのネクタイを身につけるか?」

「まあ、それはありえないね」

「素材は大事だ。コットン、ポリエステル、シルクなどの量的配分は重要だ」

「なんで?」

「フィット感と触り心地に関わるから」

「シルクのボクサーパンツなんて、聞いたことないし」

「特注で作ってやる」

「やめて」

「高級ランジェリーはシルクだろう」

「そういうのは女性相手にやってよ!」

「残念ながら、今は君しか眼中にない」

「・・・すっごい、ロマンティックな言葉なはずなのに、この状況下においては、そう聞こえない」

「それから、形!」

「・・・ボクサーパンツなんて、なんでも同じじゃん・・・」

「違う!ブランドによって、微妙にフォルムが違う!だから、君の腰のラインや尻を最大限に魅力的に見せるフォルムが重要だ」

「・・・ハーヴィー。貴方の発言がものすごく変態じみてるって気づいている?」

「君は腰骨が綺麗だから、絶対にローライズだな」

「・・・聞いてねえし(ボソッ)・・・」

「まあ、以上のことを鑑みて、組み合わせは今後、俺が考えることにする」

「えーマジー・・・まあ、わかったよ。はいはい。じゃ、着替えるから、あっち行って」

「その必要はない」

「なんで?」

「ここは何処だ?」

「寝室」

「今の君の格好は?」

「シャワー浴びたばっかだから、腰にバスタオルを巻いてるだけ」

「で?服を着る必要があるのか?」

「げっ・・・こ・・・この万年発情期!!!」

「褒め言葉として受け取っておく」

ハーヴィーはトンっとマイクをベッドの上に押し倒すと、嬉々として、その体からバスタオルを剥ぎ取ったのだった。

今日の家庭内セクハラ

『ボクサーパンツはコーディネートが大事』

END

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