バスルームを出てから、着替えを持ってくるのを忘れたことに気がついた。仕事のことを考えながら、シャワーを浴びようなんて思ったせいだ。仕方がないので、マイクは腰にバスタオルを巻いた姿で、寝室へとペタペタ歩く。そして、ハーヴィーのせいで、ボトムが一切入っていない引き出しを開けた。セントラル・ヒーティングで常に暖かい部屋とはいえ、ジーンズもスウェットも履けない・・・というのは心もとないのだが、ハーヴィーに管理されているので仕方がない。マイクも最近は半分諦めモードだ。
適当に、セーターとボクサーパンツを選んで手に取った瞬間、背後から厳しい声が飛んできた。
「違う!」
「えっ?・・・ハーヴィー・・・ちょっと。気配を消して後ろに立つのやめてよ!びっくりするじゃん!」
「だから、違うと言ってるだろ」
「もう、何がだよー」
「そのセーターに合わせるボクサーパンツはこっちだ!」
つかつかとマイクの横に立ち、引き出しから別なボクサーパンツを取り出し、マイクが持っているものと取り替える。
「・・・ねえ、別にどっちでも同じじゃない?」
「何を言う。違うだろう。ディテールが!」
「ディ・・・ディテールって・・・あのさぁ・・・」
呆れた声を出すマイクに、ハーヴィーが真剣な表情で語り始めた。
「いいか?まず色!セーターの裾から見えるんだから、色のコーディネートは絶対に考えなければならない。君はチェックのスーツにストライプのネクタイをするか?」
「まあ、そういうキチガイなコーディネートはしない・・・ね」
「そうだろう。だから、セーターとボクサーパンツも同じ関係にある。君が選んだオフホワイトのセーターには、絶対にこっちの濃いグレーの方がいい。ま、黒でもいいがな。しかし、今日の俺の気分的にはグレーだな」
「・・・ハーヴィーの気分まで考慮すんの?」
「当たり前だろう。俺が見るんだから」
「普通、見せるもんじゃないんだけどね」
「女だって、勝負下着を持ってるだろうが」
「勝負って・・・」
「君はもっと自分を魅力的に見せることを学んだ方がいい。そして、次に素材!」
「は?」
「俺がトム・フォードのスーツに、安物ポリエステルのネクタイを身につけるか?」
「まあ、それはありえないね」
「素材は大事だ。コットン、ポリエステル、シルクなどの量的配分は重要だ」
「なんで?」
「フィット感と触り心地に関わるから」
「シルクのボクサーパンツなんて、聞いたことないし」
「特注で作ってやる」
「やめて」
「高級ランジェリーはシルクだろう」
「そういうのは女性相手にやってよ!」
「残念ながら、今は君しか眼中にない」
「・・・すっごい、ロマンティックな言葉なはずなのに、この状況下においては、そう聞こえない」
「それから、形!」
「・・・ボクサーパンツなんて、なんでも同じじゃん・・・」
「違う!ブランドによって、微妙にフォルムが違う!だから、君の腰のラインや尻を最大限に魅力的に見せるフォルムが重要だ」
「・・・ハーヴィー。貴方の発言がものすごく変態じみてるって気づいている?」
「君は腰骨が綺麗だから、絶対にローライズだな」
「・・・聞いてねえし(ボソッ)・・・」
「まあ、以上のことを鑑みて、組み合わせは今後、俺が考えることにする」
「えーマジー・・・まあ、わかったよ。はいはい。じゃ、着替えるから、あっち行って」
「その必要はない」
「なんで?」
「ここは何処だ?」
「寝室」
「今の君の格好は?」
「シャワー浴びたばっかだから、腰にバスタオルを巻いてるだけ」
「で?服を着る必要があるのか?」
「げっ・・・こ・・・この万年発情期!!!」
「褒め言葉として受け取っておく」
ハーヴィーはトンっとマイクをベッドの上に押し倒すと、嬉々として、その体からバスタオルを剥ぎ取ったのだった。
今日の家庭内セクハラ
『ボクサーパンツはコーディネートが大事』
END