Winter Heat 03

セントラルヒーティングのハーヴィーの部屋は常に暖かい。

ハーヴィーは嫌がるマイクをベッドに横たえた。マイクは身じろぎすると、自分の体を抱えるように蹲った。

発情期のΩを相手に、できることといったら一つしかない。抱けばいい。それで、マイクの体はかなり楽になるはずだった。

しかし、それを理由にマイクを抱くことに抵抗があった。

額にかかる短い髪の毛に触れる。少し、マイクの体に暖かさが戻ったような感じがする。そして、あの寒い部屋では突き刺すような甘い香りが、今は漂うように柔らかいものへと変わっている。

そして、αであるハーヴィーにとって、その香りが魅惑的であることも事実だった。

「マイク・・・」

「・・・帰りたい」

「まだ、言うのか」

「・・・ルイスに頼まれた書類・・・やらなくちゃ・・・」

「そんなもの放っておけ」

「ダメだよ・・・最後の仕事はちゃんと終わらせなくちゃ・・・」

「何が、最後の仕事だ。勝手に辞めさせないからな」

「・・・辞めさせたくなるよ・・・うん。貴方は僕をクビにしたくなる・・・」

「何故だ」

マイクがうっすらと目を開ける。眦がほんのりと赤い。呼吸は浅く、肩が上下している。

「抑制剤が効かない原因・・・それ、わかってるんだ」

「薬の種類が合わないのか」

「・・・もう、全種類試したよ。肝機能障害になるんじゃないかってくらい、オーバードーズもした」

「何を馬鹿なことをしてるんだ、君は」

「だって・・・抑えなくっちゃ、仕事にならないもの。・・・でも、わかった。無理だって。仕事を辞めなくちゃ・・・貴方から離れなくちゃった無理だって」

「マイク?」

「僕ね・・・貴方のことが好きなんだよ。好きになっちゃったから、抑制剤が効かないくらい、発情が酷くなってんの。・・・だから・・・帰る・・・」

マイクがベッドに両手をついて、体を起こす。しかし、ハーヴィーはそれをベッドに押し戻した。

「ハーヴィー・・・?」

「そんな話を聞いたら、ますます帰せないな」

そう言って、ハーヴィーはマイクの顔を両手で包み込んだ。そして、濡れた唇にキスを落とす。角度を変えながら、何度も唇を合わせる。甘い香りがハーヴィーの鼻腔を刺激する。自分でも背筋がゾクリとするのがわかった。これほど、相手の体を欲しいと思ったことはなかった。マイクがΩだからではない。マイクがマイクだからだ。

「・・・ハー・・・ヴィー・・・?」

マイクが驚いたように、ハーヴィーを見詰める。

「なん・・・で?」

「マイク、君はクリスマスを誰と過ごすんだ?」

「え?・・・それは・・・一人・・・かな。ばあちゃんのところに行くかもだけど・・・」

「俺はクリスマス・ディナーの予約を入れた。・・・君と過ごすために。そのぐらいには、君のことが好きだと言うことだ」

「・・・嘘だ・・・」

「嘘じゃない。証明してやろう」

ハーヴィーは不敵に笑うと、マイクのシャツのボタンを外し始めた。

「やだっ・・・ハーヴィーやめてよっ・・・Ωに対する同情ならいらないっ・・・」

「君はさっきの話を聞いていたのか?君とクリスマス・ディナーに行くと言っただろうが」

「そっ・・・それは仕事を頑張ったご褒美とか、その程度・・・」

「クリスマスは、大切な人と過ごす日だ。仕事の褒美なら、ベーグルで十分だ。ちなみに、レストラン近くのホテルも予約してある」

レストランはドナが予約をしたが、ホテルはハーヴィーが自分で電話をした。

「ダメだよっ・・・言ったでしょ?僕もう・・・薬でのコントロールが効かないんだ・・・仕事に差し支えるよっ・・・」

「俺が君を抱けばいいだけの話だろう。いや・・・違うな。そう。番になればいい」

いいアイディアとでも言うように、ハーヴィーはきっぱりと言い放った。まるで、裁判で相手をやり込めるアイディアを思いついたかのように。

「ダメだってば・・・僕は、貴方の重荷になりたくない・・・僕は・・・仕事で認められたい・・・」

「認めてる。君の能力は素晴らしい。だから、今日の裁判も勝った。君にも見せてやりたかった」

裁判所に現れなかったマイクが心配で、裁判を30分で終わらせたことは内緒だ。

「それに、君のことは全く重荷にならない。重荷になると思っていたら、ハーバードを出ていない君など雇うものか。さあ、そろそろ、そのダメとかヤダとかしか言わない口を閉じろ。開くなら、もっと可愛いことを言え」

口調は俺様だったが、ハーヴィーの手は優しく動いていた。マイクのベルトを外し、スラックスを足から抜き取る。

「寒くないか?」

「・・・あつい・・・」

「そうか。じゃあ、もっとあつくしてやる」

ハーヴィーの唇と指が、マイクの細い体を辿るように触れる。その度に甘い香りがキツくなることに、ハーヴィーは満足する。マイクを口に含むと、口腔内に甘い味覚が広がるのを感じた。

「あっ・・・ああっ・・・やぁ・・・んあ・・・」

マイクの指先がハーヴィーの髪を乱す。したいようにさせておいて、自分もまた、マイクを高みへと引きずり上げる。

「あ・・・ハーヴィー・・・離して・・・イく・・・イっちゃう・・・ね・・・離して・・・」

上司の口に精を吐き出すなんてできないと、マイクは腰を捩らせた。しかし、ハーヴィーがそんな抵抗を許すはずもなく、マイクを追い上げ、結局は口の中で吐精させた。

「甘いな」

「やだ・・・も・・・ハーヴィーの馬鹿っ・・・」

射精して少しは楽になったのか、マイクの顔に色と表情が戻る。呼吸も浅いものから、通常のものへと変化していた。

それを見て、満足と安心を覚える。そして、ハーヴィーも自分のネクタイに指をかけ、服を脱ぎ始めた。ハーヴィーの体にマイクを軽く目を背けた。

「どうした?」

「なんか・・・僕の体・・・貧相だよね」

「俺は自分の番がマッチョだったら、かなり嫌だぞ。Ωらしい体つきでそそられるがな」

「・・・それ、差別発言だよ?」

「俺の好みだと言っているんだ」

「・・・胸とお尻がおっきくて、ハイヒールの似合うのがタイプかと思ってた」

「それは誤った情報だな。俺は好きなのは、君だ、マイク」

「僕のことが・・・好き?」

「さっきも言っただろう。どうした?君の得意な記憶力は」

「だって・・・そんなの・・・信じていいのか・・・」

「信じろ。俺だって、君を信じている。それよりも・・・」

ハーヴィーの指が、マイクの下肢の裏側に回される。そして、割れ目をなぞり、目指すところに中指を押し当てる。

「んあっ・・・」

マイクの体が硬くなる。ハーヴィーが触れている後孔も締まってしまう。

「マイク、力を抜け」

「む・・・り・・・」

「何故だ?」

「だって・・・初めて・・・なんだもん・・・」

その言葉に思わず、マイクから手を離す。

「・・・今まで・・・どうしてたんだ?発情期が来るのは初めてじゃないだろう?」

「・・・これまでは抑制剤がちゃんと効いてたから。それに・・・好きになった人もいなかったし・・・。だから・・・」

「そうか・・・初めてか・・・」

「こんなことなら、トレヴァーとでもしておけばよかった・・・」

「マイクっ!」

耳障りな名前がいきなりマイクの口から出て、思わず口調がキツくなる。

「どうせ・・・僕はΩだし・・・αのトレヴァーにとっては、都合のいい性欲の処理になっただろうし・・・」

「冗談じゃないっ!自分の体は大切にしろ!それと、二度とあの馬鹿男の名前は口にするなよ!」

「ハーヴィー・・・?怒った?」

「ああ、怒った。だから、お仕置きだな。たった今から、君は俺に絶対服従だ。まったくっ!君って奴は!」

マイクを睨むハーヴィーの表情は険しかったが、マイクに触れる手は暖かく、優しかった。

ベッド脇のサイドテーブルからローションを取る。

マイクにキスをしながら、ローションで濡らした指を、再び、マイクの後孔に押し当てる。ひくり、とマイクの背が仰け反る。ハーヴィーは無理することなく、ゆっくりとなぞるように刺激する。

キスと後ろへの愛撫に、マイクの性器がゆっくりを頭をもたげる。その反応に満足したハーヴィーは、つぷりと指先を潜り込ませた。

「はぁっ・・・んんっ・・・ハー・・・ヴィー・・・」

マイクの声が甘くなる。香りもまた強く甘くなる。香りの刺激が、ハーヴィーの気分を高める。

しばらくすると、Ω特有の分泌液が溢れてきた。

「これで、いけそうだな・・・」

指を抜き、マイクの白い太腿を抱え上げる。

「ねぇ・・・ハーヴィー・・・僕・・・発情期だから・・・その・・あの・・・」

「わかってる。せっかくだから孕ませてやりたい気もするが、今、優秀な専属アソシエイトに産休に入られたら、俺にとっては痛手だからな。避妊はする」

「あ・・・ありがと・・・」

顔を真っ赤にしながらマイクは、顔を背けた。けれども、両手を静かに、ゆっくりとハーヴィーの首に回した。

「覚悟しとけ」

「嬉しいけど・・・ちょっと怖いよ」

「愛が重いと言ってくれ」

二人で破顔する。それを合図に、ハーヴィーはマイクの中に押し入った。

緩やかな抽挿。けれども、だからこそ、互いに幸福感を感じることができるような気がした。

マイクの腰を引き寄せ、ハーヴィーは彼を自分の膝の上に座らせるようにする。そして、ペロリと頸を舐め上げた。

「いいか?」

「・・・うん」

「後悔はさせない」

「・・・うん。いいよ。貴方の番にしてよ」

「いい子だ」

ハーヴィーはもう一度、頸を舐めると、そこにキツく歯を立てた。

NEXT