Ménage à trois

愛はモラルを凌駕するので。そして、自分は選ぶことができないので。

何故なら、自分は同じ質量で二人を愛しているので。

***

どちらの指か分からなかったし、もしかしたら二人のい指だったのかもしれない。尻を高く上げて、あまりの気持ちよさにシーツを噛んでいたから、その辺りのことは本当に分からない。ただ、自分を襲う快楽だけを追いかけた。数本の太くて長い指がアナルを解す間に、余ったであろう指が全身を慈しんでくれる。何処から伸ばされる指なのかが分からない。けれども、確実に快感を与えてくれるので、怖くなかった。

指が。指が、マーヴェリックの口からシーツを引き抜いた。そして顎が掴まれる。

「あ、はっ・・・」

薄目を開けると、僚機が優しい目で自分を見ていた。

「身体を起こせるか?」

マーヴェリックは僚機の問いかけにこくこくと小さく頷いたが、身体の何処に力を入れたらいいのか迷う。

「サイクロン、起こしてやってくれ」

「Yes, sir 」

太い腕がマーヴェリックのウエストに回され、上体を引き起こされる。ぽかりと空いたアナルが寂しい。年下の上司の膝に座らされるが、視界に入るのは僚機に姿だ。

「マーヴェリック、先にサイクロンがお前の中に入るぞ」

それは決定事項で、マーヴェリックの意志を問うものではなかった。それでもいい。どちらも愛している。

「腰を上げて」

湿ったバリトンが耳の傍で囁いた。マーヴェリックはどうにか、手をベッドやサイクロンの膝に付いて、膝立ちする。尻の肉が割り開かれて、熱い昂りがアナルに押し当てられる。期待。マーヴェリックは唾を飲み込む。腰を大きな手に鷲掴みにされて、一気に引き下ろされた。

「ひゃっ・・・あ・・・ああああ・・・・」

完全に開き切っていない狭い道を凶悪な熱が容赦無く押し広げる。完全にウエストをホールドされているので逃げることもできない。とはいえ、逃げる気もないけれども。呼吸を整えて、サイクロンの侵入に協力する。

「いい子だな、マーヴェリック」

僚機の褒め言葉にマーヴェリックは微笑んだ。そして、右手を伸ばす。その手はすぐに優しく取られてキスをしてもらえる。僚機・・・アイスマンは視線をマーヴェリックから外すことなく、指を一本ずつ、丁寧に口に含んだ。

「んっ、ふっ・・・・」

身体を下から揺すられながら、自分の指を舐める僚機を視界に入れる。口が、寂しい。マーヴェリックはほんの少し、上体をサイクロンから離す。腰から下は強制的に密着したままだが。

「アイス・・・」

マーヴェリックは赤い舌を僚機に見せる。アイスマンは口角を上げて微笑むと、その舌を自身の口唇で喰んでやる。そして舌同士を絡める。部屋に響く水音は、2つ。マーヴェリックの口唇と下半身の結合部。マーヴェリックはアイスマンの右手を取り、自分の胸に導く。ぷっくりと膨れ上がった赤い実。アイスマンは強く摘み、捏ねてやる。

「あ・・・は・・・あぐ・・・んっ・・・」

合わせた口唇の隙間から声が漏れる。

気持ちが良い。僚機と年下の上司が与えてくれる痛みや熱や快楽。頭がぼーっとする。下からのt突き上げが激しくなる。身体が揺れる。大きく。波のように。

イく。

とっくに結腸は抜かれている。大きなものの先端は確実に最奥に嵌っていて、それを逃すまいとマーヴェリックの肉壁が捉えて離さない。艶めいた狼が僚機の首に腕を絡める。暴風の大きな手に掴まれた腰が、より一層、引き下げられる。

脳内に光が舞う。

「ひゃっ・・・あ・・・ああ・・・あああーっ・・・」

マーヴェリックは、大きな体躯を持つ二人の男の間で、嬌声を上げて身体を震わせた。自分の白濁で、自身の腹と僚機のそれとを汚しながら。

***

「休むか?」

楔を抜かれ、小さな身体をサイクロンに寄り掛けているマーヴェリックにアイスマンが優しく尋ねる。ブルネットをサイクロンに撫でてもらって気持ちが良い。そんなふわふわとした心地の中で、マーヴェリックは首を横に振った。

「ん・・・アイスにも僕の中に入ってほしい」

サイクロンがマーヴェリックの身体を支え、上官の方へと押しやる。アイスマンの身体に手を付き、その膝を跨ぐ。位置を調整して、自分の手で尻肉を左右に開くと、サイクロンが胎内に残した白い液が溢れ、アイスマンの脚を汚す。

「いっぱい、貰ったんだな」

「アイスもちょうだい」

マーヴェリックはゆっくりと腰を落とす。ついさっきまでサイクロンを呑み込んでいたそこは、ズブズブとアイスマンに絡みつく。サイクロンの両手が腰を掴み、下へ誘うのを助ける。

くちゅん。

「全部、入った」

サイクロンの心地よいバリトンが、マーヴェリックの耳を擽った。「ふふっ」と笑うと、マーヴェリックは掌をサイクロンの頬に当てる。

「ボー、キスして」

身体を捻って、口唇を突き出す。すぐに食べられる。まるで頭から飲み込まれそうなキス。そして、下からは心地よい律動。身体が揺れる。

面白いな、と思う。僚機のキスと年下の上司のキスは全然違う。アイスマンは遊ぶように翻弄してくるし、サイクロンは自分を飲み込むようだった。もちろん、どちらも好き。気持ちが良くて、選びようがない。両方、欲しい。そんな自分は随分と欲張りだな、とは思う。アイスマンとは30年以上の付き合いだ。そこへサイクロンが現れた。暴風は自分に愛を説き、自分も好きだな、と思った。だから、正直に僚機に言ったのだ。

「アイス、どうしよう。僕、二人とも同じくらい、好き」

片眉を上げた僚機は、怒るわけでもなく、一言。

「一日、待て」

と言った。

その後、上司と部下の間でどんな会話があったのかは分からないけれども、マーヴェリックは二人を愛することを許され、そして二人からも愛してもらえることになった。幸せ。二人が与えてくれる愛撫はそれぞれ違って、それでいて同じ熱量を持っていて。だから、自分も同じ熱さを返そうと思う。どちらも好き。愛している。

マーヴェリックは右手をアイスマンの肩に、左手をサイクロンの頬に当てながら二箇所に与えられる快楽を享受する。

マーヴェリックの頭越しに、上司と部下の視線が交差した。アイスマンは目を眇めて笑うと、マーヴェリックの身体を押した。それを補助するように、サイクロンがシーツに縫い止める。

「ふあ・・・あっ・・・」

両脚を高く抱えられ、そして潰される。僚機の全体重が小さな体躯に伸し掛かる。両手は年下の上司に取られ、そして優しく口づけられる。手の甲、手首、腕。突かれる激しさと優しい口唇の動きに、脳がバグを起こす。一つしかない身体が、真逆の愛撫に翻弄される。辛い?辛くない。気持ち良い。好き。もっと。二人とも、遠慮しないで。壊して。愛して。僕もあげる。だからちょうだい。僕が与えられるものは何でもあげる。それが生命だって、いい。惜しくない。だから、僕を一人にしないで。一人にするなら、殺して。

僚機の汗が一雫、喘ぐ狼の頬に落ちる。

「ひっ・・・は、あ、くぅ・・・」

「マーヴェリック。呼吸を」

サイクロンの手の甲が、マーヴェリックの頬を撫でて、口唇を開かせる。

空気。酸素。はくはくと口唇を動かすけれども、うまく呼吸ができない。どうしよう。

顎にサイクロンの指が掛かり、くいっと強制的に上向きにされる。

気道確保。

涙が滲む景色の中に、アイスマンとサイクロンの顔がぼやけて見える。

空気が入る。そして、マーヴェリックは息を吐く代わりに、喘かな悲鳴を上げた。

***

アイスマンは僚機の身体から離れ、その顔色を確かめた。

「潰したか」

意識があるのか、ないのか。力の抜けた小さな身体をシーツの波から救う。

「マーヴェリックをバスルームへ。その間にベッドを整えておくので」

「悪いな。シーツを変えたら、お前も来い」

アイスマンはベッドを降りて、マーヴェリックを抱き上げる。その姿を見送って、サイクロンはガウンを羽織って、シーツを引き剥がした。

新しいシーツ。簡単なベッドメイク。一度、階下に降りて、ペットボトルの水を3本、持ってくる。それをベッドサイドに置いてから、バスルームへ向かう。

バスタブの中で、マーベリックが身体を上司に乗せるようして目を瞑っている。

「シャワーを浴びたら、こいつを頼む」

「わかりました」

サイクロンは泡立てたボディソープで身体を洗い、泡を流す。そしてバスタブの中のマーヴェリックの身体を受け取る。

「中は掻き出してやった。

僚機を部下に預けて、アイスマンはシャワーコックを捻る。

「大丈夫ですか?また湯に入らせても」

「そうだな。俺の経験では後、5分くらいなら大丈夫だろう。俺は先に出る」

バスローブを羽織ったアイスマンが、綺麗に笑ってサイクロンを見る。「相変わらず美しい方だ」と思いながら、腕の中のマーヴェリックを抱え直す。

「んー・・・」

「マーヴェリック?」

マーヴェリックはわずかに身じろぐと湯の中で居心地の良い場所を探して、再び落ち着く。

サイクロンは、ゆったりとしたての動きで、そのブルネットを撫で梳いた。

***

マーヴェリックを抱き上げて寝室に戻ったけれども、アイスマンの姿はなかった。サイクロンは部下をベッドにおろし、ブランケットを掛ける。ややしばらく、その姿を眺め、安定した呼吸音が聞こえるのを確かめてから、階下に降りた。

暗がりの中。ベイ・ウィンドウの側でグラスを弄ぶ上司が見える。

「・・・飲むか?」

アイスマンが出窓に置いたスコッチの瓶を指差す。

「いただきます」

用意していたグラスに琥珀色の液体を注ぎ、サイクロンに渡す。そして、何とはなしにグラスを合わせる。綺麗で涼やかな音が響く。

「・・・俺は、あいつに無体なことをしていると思うか?」

「それを言うなら、私の方が酷い。彼と貴方の関係を知りながら、私は彼に愛を語った」

「その想いを遂げさせてやりたいと思ったのは、俺だ。・・・俺は知っていたんだ。あいつが選べないことを。与えられた本気の想いを無碍にできないことを。あいつを手放したくない。けれども、あいつに与えられた愛を奪いたくない」

「そのおかげで、私は救われましたが?」

アイスマンは額に降りた前髪を掻き上げながら、口角を上げた。

「俺もお前も、ミッションがあれば、マーヴェリックに死を突きつける。あいつの腕が良すぎるからだ。困難な作戦ばかりをあいつに押し付ける。それは、『死ね』と言っているのに等しい」

「否定はしません」

「だから、どんな小さなことでも、あいつが求めるものは何でも与えたいと思うし、ずっと与えてきた。おそらく、俺はマーヴェリックだけでなく、お前にも酷いことをしている」

酷いことを話していても、上司の顔は相変わらず美しいと、サイクロンは思う。ああ。だから、「氷の男」なのだと改めて思う。

「・・・もっと酷いことを言えば、俺はあいつに先に死んで欲しいと思う」

「それは・・・二度と喪失の苦しみと悲しみを彼に与えたくないからでしょう」

「・・・・・・もし、俺が一番先に死んだら、マーヴェリックのことを頼む。あいつは硝子で作られた狼だ」

サイクロンは、敢えて返事はしなかった。

静かな、沈黙。闇。暫しの時の流れ。

その静寂を小さな声が破った。

「アイス?ボー?」

どうやら、アイスマンのシャツを引っ掛けてきたらしいマーヴェリックの姿が現れた。

「大丈夫か?」

近くにいたサイクロンがグラスを置いて、マーヴェリックに近寄る。

「起きたら、僕、一人だった。アイスもボーもいなかった」

どうやら、寝ぼけながらも怒っているらしい。口調に少し棘がある。

「おいで、僚機」

ソファに移動したアイスマンがマーヴェリックを招く。ふらふらと近づき、アイスマンの隣に座る。そして、自分の隣をポンポンと叩きながら、サイクロンを見る。

「二人で飲んでてずるい」

「お前は寝てたからな。飲みたいか?」

「それでいいからちょうだい」

マーヴェリックがアイスマンの手からグラスを奪う。そして、一口。

「・・・僕を一人にしないで」

「ああ、悪かった」

アイスマンが僚機のブルネットを撫でる。隣に座ったサイクロンが部下の手を取り、繋ぐ。

大将と中将が、両側から硝子細工の狼の頬に暖かい唇を当てたのだった。

***

この関係を、一体、誰が、歪といえようか?

END