アソシエイト・オフィスで、ハーヴィーに命じられた仕事をようやく終わらせる。腕時計で時間を確認したら、21:00を過ぎていた。けれども、まだ変えることはできない。何故なら、ルイスに押し付けられた資料調べを図書室でやらなければならない。マイクは、背中を反らせて思いっきり伸びをすると、ふぅーっと息を吐いた。今夜も残業。これで、連続残業何日目だろう・・・と思う。しかし、これも仕方がない。アソシエイトの宿命だ。それでなくとも、マイクは無資格だ。周囲と同じ、人並みの扱いを受けようなどとは、夢に思ってはない。けれども、アンドロイドやロボットであるわけでもないので、疲労は確実に蓄積されている。
・・・コーヒーでも飲んでリフレッシュしようか・・・と思ったが、その時、ふと、先日流し読みした雑誌の記事のことを思い出した。軽い疲労は適度な運動をすることによって解消されることがある。運動は、リフレッシュになる。
・・・嗚呼。・・・ふふっ。
マイクは、財布の中に入れてある物のことを思い出して、ほくそ笑んだ。スーツのジャケットを着ることもせずに、マイクは立ち上がって、軽い足取りで誰もいないアソシエイト・オフィス出た。
いつもの場所にドナはいなかった。もう帰宅したのだろう。それともデートだろうか。けれども、ハーヴィーのオフィスは少し照明を落としてはいるものの、明るかった。なんて、好都合。
マイクがハーヴィーのオフィスに入ると、上司はデスクではなく、ソファに座って書類を読んでいた。ローテーブルの上にはスコッチの入ったグラス。相変わらず、いいご身分だと思う。
「ハーヴィー。まだ仕事、終わらないの?」
マイクの存在に気づいて、ハーヴィーは書類を持ったまま、マイクに視線を向けた。
「そっちこそどうなんだ?」
「ハーヴィーに頼まれた仕事は終わらせたよ。はい、これ」
マイクは資料をまとめた薄いファイルを差し出した。
「ハーヴィーの仕事はいつだって最優先でやってるんだからね」
「いい心がけだ。それで?今日はもう上がるのか?」
「ううん。ルイスに頼まれた仕事があるから。でも、ちょっと疲れたから、休憩がてらにそのファイルを届けにきたんだよ」
「ファイルを届けるだけで休憩になるのか?」
「まさか。んー・・・ちょっとリフレッシュしたい気分?」
そう言ってマイクはハーヴィーに近づくと、すとんっと、床に座った。ちょうど体を少し、ハーヴィーの膝の間に入れるようにして。ハーヴィーが訝しげに片眉を上げる。そんなハーヴィーを笑顔で見上げながら、マイクはポケットからほぼ正方形に近い、薄い包みを取り出すと、それを口に咥えて、ハーヴィーのウエストに左腕を絡めた。右手は胸の辺りに。
「マイク?」
返事はしない。というよりもできない。なぜなら、スキンの包みを咥えているからだった。けれども表情は豊かで、これでもかというほど、熱をもってハーヴィーを見つめる。青い瞳はキラキラとしていて、そう、まるでおねだりをする可愛い子犬のようだった。その表情の意味するところは・・・
「Please, Harvey.」
・・・だ。
ハーヴィーは、マイクの蜂蜜色の髪の中に指を差し込み、軽くクシャクシャとしてやった。まるで、飼い犬にするように。マイクも嫌がる素振りは見せずに、嬉しそうに目を細める。そして、指をハーヴィーのウエストに移動させると、カシャカシャとベルトを外し始めた。手際よくボタンも外し、ファスナーを下ろす。ハーヴィーは人差し指と中指で、マイクに口に咥えているスキンを挟み、すっと抜き取った。口がフリーになったマイクのすることは決まっている。ハーヴィーに唇を寄せると、チュッとキスをしてから、舌を使って舐め始める。スキンを使えば、挿入に困難なことはないが、それでも自分の口でハーヴィーを大きく、硬くしたいという欲がある。めいっぱい口に含み、含みきれないところは指を使って煽る。クチュクチュピチャピチャと、2人しかいないガラス張りのオフィスに、淫猥な音が響く。
「マイク」
ハーヴィーが妙に優しげな声で、恋人の名前を呼んだ。そして、脇下に手を入れると、その体を持ち上げて、自分の膝に座らせた。
「ん・・・ちょっと待って、ハーヴィー」
マイクはソファに膝をついて腰を上げると、自分でベルトを外し、スラックスを脱いだ。触られてもいないくせに、その中心は立ち上がっている。どうやら、気分は相当、高揚しているらしい。その証拠に頰がほんのりとピンクがかっている。肌の色素が薄いせいで、それがよくわかる。
「ハーヴィー、スキンをちょうだい?あ・・・せっかく膝に乗せて貰ったけど、口で付けたいからまた床に降りてもいい?甘ったるい声で言うマイクに、ハーヴィーは首を横に振った。
「その必要はないな」
「ふぇ・・・?」
マイクが「何で?」というように、首を傾げた。可愛らしい仕草だ。ハーヴィーは薄く笑って、スキンの袋を歯を使って破き、中身を取り出すと、マイク自身に素早くつけてしまった。
「えっ・・・ちょっと!ハーヴィー!違うってば!」
マイクが慌てて言う。
「何が違うんだ?いつも君は、俺のスーツを汚すのを気にするだろう?これなら、いくら出しても大丈夫だ」
「だって!じゃあ・・・ハーヴィーは・・・え・・・まさか・・・」
「いつも通りだ。君の中に出すに決まっているだろう」
「ダメだってば!僕まだ、ルイスに頼まれた仕事があるんだから!」
「誘ってきたのは君だろうに」
「だってー・・・疲れたときに、軽い運動をしたら、リフレッシュできるって・・・その・・・いつか読んだ雑誌に書いてあって・・・その、だからさ、ハーヴィーと軽く運動したら、残りの仕事も頑張れるかなぁって・・・えっ・・・ちょっと!やんっ!」
マイクが必死に説明している間に、ハーヴィーはマイクの後孔を指で開くと、自分を埋め込んでしまった。
「あっ・・・あああ・・・ああ・・・」
開かれ、広げられる感触に、マイクが甘い声を出す。
「リフレッシュのために、運動をしたいんだろう?だったら、君が動くといい」
にこりと笑うと、ハーヴィーはマイクの頰にキスをした。そして、「ほら」と耳元で囁く。それが擽ったくて、マイクは体を捩った。そして、ゆっくりと腰を上下させ始めた。
「はっ・・・あっ・・・あっ・・・やっ・・・ハーヴィーっ・・・いいっ・・・」
いつの間にか形勢逆転。最初こそ、健気に自分から動いていたマイクだったが、今は腰をしっかりとホールドされて、下から突き上げられている。運動しているのは、マイクではなく、もはやハーヴィーだった。マイクはただ、その動きに翻弄されているだけ。かろうじて、体勢を崩さないように、ソファとハーヴィーに掴まりながら、体を揺らされている。
「やっ・・・だっ・・・めっ・・・いっ・・・イっちゃう・・・」
「ああ・・・好きなだけイけばいい」
「うう・・・ん・・・ハ、ハーヴィーは・・・?」
「君の中はいつでも居心地がいい。我慢するのも大変なんだ」
「そ・・・お?」
ふわっと嬉しそうに笑って、マイクは背中をしなやかに反らせて、喉を晒した。
「ああっ・・・ああーっ!!!!」
その体をぐっと自分の方に引き寄せて、ハーヴィーはマイクの中に精を解き放ったのだった。
「・・・ど・・・しよ・・・」
ハーヴィーの腕の中で、マイクが情けない声を出す。
「どうしようもないだろう。バスルームはないんだし、掻き出せないからな」
「うう・・・まだ・・・仕事があるのにぃ・・・」
「運動がしたいと言ったのは君だし、それに仕事と言ったって、どうせルイスのだろう」
「そうだけど、やらなかったら倍返しだよ?それはハーヴィーもわかってるでしょ?」
「しかし、この状態で仕事なんかできるのか?」
「・・・無理・・・出ちゃう・・・」
「じゃあ、今夜は残業なしで帰宅だな。ゆっくりでいいから、下に降りて車に乗ってろ。俺は君のジャケットを取ってくるから」
「・・・仕事・・・」
「心配するな。ルイスには適当に言っておく。俺の仕事が最優先ってことくらいはわかってる」
「・・・これ・・・仕事?」
「運動も仕事のうちだ。俺はそう思って、走るし、ジムにも通う。・・・まあ、こういう運動も好きだがな」
マイクが身支度を整えるのを手伝ってやりながら、ハーヴィーは言った。
「おかしいなぁ・・・僕、リフレッシュのつもりだったのに」
「俺はかなりリフレッシュしたぞ。ほら、車に行ってろ」
そう言って、ハーヴィーは軽くマイクの腰を叩いた。
「やんっ。・・・やーめーてー・・・もう・・・出ちゃう・・・」
言いながら、マイクはふらふらとガラス張りのオフィスからゆっくりと出た。後ろが気になって、上手に歩けない。そんな姿を「可愛いなぁ」と思いながら見送るハーヴィーは満面の笑みだった。
「さて・・・と」
ハーヴィーはローテーブルの書類を適当に片付けると、アソシエイト・オフィスにマイクのジャケットを取りに向かったのだった。車の中で、レイに気づかれないように、どんな悪戯をマイクに仕掛けてやろうかと考えながら。
END