I’m not a doll. La maison de paradis

天蓋のレースから差し込む陽の光が、やけに眩しいなぁ・・・と思って、マイクはそろそろと思い瞼を開けた。隣にハーヴィーの姿はない。「今、何時だろう・・・」と周囲を見ようとしたのだが、体が思うように動かない。特に、下半身。甘ったるい、怠い、重さがあった。痛みはないのだ。ただ、甘く、怠い。

娼館から、この屋敷にやって来てから、マイクがハーヴィーに抱かれない日はなかった。ハーヴィーが求めてくるし、マイクもそれに応えることを好んだ。決してマイクの嫌がることはせず、これでもかと思うくらいに優しく抱いてくれる。娼館で過ごした夜とは大違いだった。それに、何よりも想いがあった。だから、マイクはいくらでも、ハーヴィーの夜の求めに応じた。

ただ、少々、疲れが溜まってきているのも事実で。昨日までは、ちゃんと起きて、身支度をして、食事の後でハーヴィーの仕事を手伝ったり、図書室で勉強をさせてもらっていた。けれども、今日は起き上がれない。病気・・・ではないと思う。起き上がりたいのに、体が言うことを聞いてくれない感じだった。思考と体が乖離している。

「・・・困ったなぁ・・・」

マイクは呟いた。そこへ、寝室のドアをノックする音がした。ドキリとする。ハーヴィーではない。ハーヴィーはノックなどしない。・・・となると・・・執事だ。天蓋のレースの幕は張り巡らされているから姿を見られることはないし、執事もジロジロと見るような人ではない。それでもマイクはなんとか指先に力を入れて、リネンを引き寄せ、体を隠すようにした。

「マイク様。ご主人様の申し付けで食事をお持ちさせていただきました。こちらに置いておきますので、お好きな時にお召し上がりください」

「あ・・・ありがと・・・」

マイクはなんとか、お礼の言葉を絞り出した。

「それでは失礼いたします」

執事の口調に侮蔑の感情はなくて、とても優しくて暖かな声だった。執事に限らず、この屋敷の人たちはみんなそうだ。マイクのことを色眼鏡で見ることはなく、とても優しく親切にしてくれた。

パタンとドアが閉まったところで、マイクは全身の緊張を解いた。

「・・・どうしよう・・・」

マイクが困っていると、バンっと勢いよくドアが開いた。これはハーヴィーだ。ザザッと、天蓋のレースが引かれる。

「起きたか。眠り姫」

「ハーヴィー・・・ごめんなさい。起きられなくって・・・」

「謝るな。責任は俺にもある」

ハーヴィーがベッドに座り、マイクの髪や頰を撫でた。

「ふむ。顔色は悪くなさそうだな」

「あの・・・なんだか、体が怠くって・・・その病気とは違う感じなんだけど・・・」

「だろうな。・・・昨夜は少々、君に無理をさせすぎた。体は痛まないか?」

マイクは首を振った。

「ちょっと・・・その・・・腰とか・・・怠いだけ・・・」

「・・・まあ・・・そうだろうなぁ。君が嫌がらないのをいいことに、少し抱きすぎた。すまない」

「あっ・・・謝らないでっ・・・その・・・嫌なわけじゃなかったし・・・その・・・」

マイクはキュッとリネンを握った。

「腹は減っていないか?」

「・・・少し」

「俺が食べさせてやろう。その前に、体を起こすか」

そう言うと、ハーヴィーはマイクに手を貸して。ヘッドボードに集めたクッションに、マイクの背中を預けさせた。そして、執事が運んできた銀盆を、ベッドへと持ってくる。

スコーンにクロテッドクリーム。ジャムは苺。少しの果物。そして、紅茶。今のマイクにはちょうど良い量だった。

ハーヴィーは一口サイズにしたスコーンに、クリームとジャムをたっぷりつけると、マイクの口元に運んだ。

「じ、自分で食べられるのに・・・」

「いいから」

マイクは意地を張らずに、素直に食べさせてもらうことにした。そうした方が、ハーヴィーが喜ぶことを知ったからだ。綺麗にカットされた果物も食べ、最後にハーヴィーが持ったカップから紅茶を飲む。

「・・・美味しかった。本当に、このお屋敷の料理はなんでも美味しいよね」

「このクロテッドクリームも料理長のお手製だ。・・・少し余ったな・・・」

ハーヴィーは皿に残ったクリームを指先にと取ると、スッとマイクの首筋に付けた。

「ひゃっ・・・なっ・・・何をするの!」

それには答えず、ハーヴィーはクリームのついたマイクの首筋をペロリと舐めた。

「ひゃんっ・・・あ・・・ハーヴィー・・・!」

「・・・身体中にクリームを付けて、舐めてみるのも楽しそうだ」

「たっ、食べ物をそういうふうに使っちゃダメ!」

「まあ、クリーム無しでも、君は十分に甘いがな」

「あっ、朝から何を言ってるの!!もう・・・それよりも・・・僕、起きたいのに・・・起き上がれない。・・・どうしたらいい?」

「そんなこと。今日は1日、ベッドに住人になっていればいい」

「でも・・・仕事と勉強・・・」

「それはベッドでもできるだろう。必要なものは持ってきてやる」

そうして、結局、その日マイクは、一日中、ベッドの住人になったのだった。

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そんなことが、何度かあった。ハーヴィーがマイクを抱き潰してしまう・・・というヤツだ。愛しい想いが募りすぎて、時折歯止めが効かなくなるらしい。それでも、マイクがハーヴィーを疎ましく思うことはなかった。翌日、起き上がれなくなっても、ハーヴィーの愛情を全身で受け止めることが、この上なく幸せだったからだ。

そんなある日、ハーヴィーは夜の会合で出かけることになった。帰宅時刻が何時になるかわからないから、風呂は先に済ませて休んでいるように、と言いつけて。マイクは、笑顔で「うん、わかった」と答えたが、ハーヴィーは正直「怪しいものだな」と思っていた。マイクは自分の自由な時間があると図書室に籠る。今まで活字に飢えていたかのように、書架の本を片っ端から読んでいるのだ。そう、時間を忘れて。だから、きっと今夜もそうなのだろう・・・とハーヴィーは思いながら、屋敷を出た。

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案の定、マイクは夕食と風呂を済ませると、いそいそと図書室へ向かった。秋が近づいているので、お気に入りの古ぼけた青いショールも持って。

図書室の最小限の明かりを点けると、書架から数冊の本を引き抜いて、カウチの上に置いた。マイクはあまりカウチには座らない。床に座ってカウチを机がわりにして本を読んだり、書き物をしたりすることが好きだった。

この屋敷に来てから、ずっと文学作品を読んだり、仕事に役立ちそうな本を読んだりしていたが、最近読んでいるのは、詩だった。理屈で物事を考える性質のマイクにとって、詩は意味不明で難解だった。その奥底に隠されている意味や意図。最初は何がなんだかわからなかった。けれども、詩人の生きた背景を知ると、それが少しだけわかるような気がしてきた。およそ仕事に役立つ読書とは言えないが、分析をする・・・という点において、面白さを見出していた。まるで、パズルのようだ。

マイクはフランス語のボードレールの詩をノートに書き留め、言葉の意味を英語でメモをする。それから、ボードレールの生きた場所に思いを馳せる。パリ。一度行ってみたいと思った。自分の絵を描いた老人もフランス人だった。

「マイク」

背後から呼びかけられた。

「え?・・・あ、ハーヴィー」

「やっぱり、ここか」

「早かったんだね。帰ってくるの」

「何を行ってる。もう、日付は変わってるぞ」

「え、嘘!」

「本当だ」

ハーヴィーがマイクの横に跪き、その頰に触れる。

「冷えてるな。もう秋になる。こんな薄着で・・・」

ハーヴィーの手が、マイクの指を取り、口付けた。

「ごめんなさい。僕、夢中になると周りがよく見えない」

「そうみたいだな。ああ・・・室内ばきも履かないで。裸足で来たのか」

「うん。お風呂上がりだったから・・・体も温まっていたし・・・その・・・ごめんなさい」

自分の体を労わらないことを、ハーヴィーはとても嫌がる。マイクはそれを知っていたから、シュンと項垂れた。

「読みたいのは、それだけか」

「あ、ああ・・・うん」

詩集だから、そう厚い本ではない。

「だったら、全部持てるな。ほら、マイク、両手で抱えろ」

その言葉に、マイクは慌てて、本当ノートと万年筆をまとめて手に持った。それを確認してから、ハーヴィーがマイクの体を横抱きにして立ち上がる。

「あっ歩けるるよ!」

「・・・室内ばきも履いてないのに?裸足で?」

「・・・あ・・・そう・・・だね・・・」

ハーヴィーが冷えた廊下を、裸足で歩かせるわけがない。マイクはできるだけ小さくなって、ハーヴィーの腕の中に収まることにした。

「ボードレールか」

ハーヴィーが、マイクが抱えた本の表紙をちらりと見て言った。

「うん。・・・でも、詩は難しいね」

「ああ・・・君は理屈で物を考える人間だからな。・・・フランス語で読んでいるんだろう?」

「うん。一応」

「詩は、声に出すことを前提にした文章だ。読んだときのリズムや語感がなんだ。だから、内容の意味が取りにくいものが多い。しかし、無理に理解しようとせずに、君自身のセンスや感じ方で理解すればいい。詩なんて・・・そういうものだ」

「へぇ・・・ハーヴィーって凄いね」

「まあ、ガキの頃にいた家庭教師の受け売りだがな」

そんな話をしているうちに寝室に着く。ハーヴィーはマイクをベッドに下ろした。

「風呂に入って着替えてくる。それまでは、読んでていいぞ」

「ありがとう」

ハーヴィーがバスルームへ消えるのを見送ってから、マイクは詩集を開いた。フランス語の詩を、小さな声で読んでみる。韻を踏んだ詩が、心地良い。それは、ある意味言葉遊びだった。

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バスルームのドアが開いたのを合図に、マイクは詩集を閉じて、ベッドサイドに置いた。そして、ベッドの真ん中にいたのを少し横にずれる。

「いいんだぞ。真ん中を占領して」

「いいの。貴方のために温めておいたの」

ハーヴィーがベッドに入ると、マイクはその体にペタッと張り付いた。頭をハーヴィーの肩の辺りに乗せて。ハーヴィーの左手が、マイクの髪を撫でて、右耳のピアスごと、優しく触れた。

「お仕事お疲れ様」

「まあ、こういう付き合いも仕事のうちだからな。・・・で?癒してくれるのか?」

「もちろん」

マイクが体を起こして、体重をかけないようにしてハーヴィーの体に跨った。

「俺は・・・君を抱きすぎか?」

「そんなこと、ないよ」

「娼館で抱けなかった分、箍が緩んでしまったらしい」

ハーヴィーの手が、寝間着の裾から入り込み、マイクの素肌を舐る。マイクは、そっと屈んで、ハーヴィーの唇を啄ばんだ。しばらく、チュッチュッと音を立ててハーヴィーの唇を味うと、少しずつ自分の唇をずらし、顎や首筋にも唇を落とす。パジャマのボタンを外しながら、鎖骨、胸、腹、臍の辺りにもキスをする。けれども、そこでおしまいだった。両脇に手を入れられて、体を引きずり上げられた。思わず、マイクは小さく口を尖らせた。

「・・・やっぱり・・・ダメなの?」

「君はそういうことはしなくていいんだ」

「でも・・・」

「マイク」

最近、こういった攻防戦がハーヴィーとマイクの間で行われている。毎晩のようにマイクを抱くハーヴィーではあったが、絶対に口ではさせなかった。もちろん、ハーヴィーは何度もマイクを咥えこんではいるが。

「ねえ、どうして、ダメなの。やっぱり・・・その・・・僕が娼館上がりだから?汚い?」

「違う。娼館で散々苦労してるだろうから、無理をさせたくないだけだ」

「・・・無理じゃないのに。・・・それよりも・・・寂しい」

いつもはシュンとしながらも引くマイクだったが、今夜はちょっと粘ってみる。

「寂しい?」

「・・・僕は、もっと・・・その・・・全身で、この体の全てで、貴方を知りたいし、感じたい。それを許してもらえないのが・・・悲しい」

マイクは俯いて横を向いた。その青い瞳から、一筋の涙が零れる。

ハーヴィーは慌てて、上体を起こした。

「マイク、泣くほどのことか?」

「だって・・・貴方に受け入れてもらえないなんて・・・」

ぐずぐずとマイクは鼻を鳴らした。マイクがベッドでこんな風に泣くのは初めてのことだった。ハーヴィーがマイクの顔を両手で包み、目を合わせようとするが、マイクはそれを避ける。完全にイジけている。ハーヴィーは溜息をついた。毎晩、マイクを抱いておいて言えた義理ではないのだが、マイクの口の自分を含ませるのは、どことなく可哀想な気がしていたのだ。しかしマイクは、こんな風に泣きながらその行為を求める。

ハーヴィーはもう一度、小さな溜息をつくと、マイクの耳に口を寄せて言った。

「わかった。君の好きなようにするといい。けれども、嫌だと思ったら・・・耐えられないと思ったら、すぐに辞めること。もし、君がそんな表情を見せたら、俺もやらせない」

「・・・いいの?」

ようやく、マイクがハーヴィーと視線を合わせる。青い瞳が心なしか、大きく開かれている。まだ、目の縁が涙が濡れてはいるが、新しい涙は溢れてはない。

「嫌なだと思ったら、すぐに絶対に辞めるんだぞ?」

「・・・そんなこと・・・ならないと思う・・・」

マイクはそう答えると、「ありがとう」の意味を込めて、ハーヴィーにキスをした。ヘッドボードに体を預けたハーヴィーはマイクの好きなようにさせてやることにした。マイクは再び、ハーヴィーの顎や首筋、鎖骨、胸と、次第に唇と舌を下降させていった。ハーヴィーはそんなマイクの蜂蜜色の髪を梳いてやる。

マイクはハーヴィーのパジャマのズボンと下着をずらし、すでに勃ち上がりかけているものに唇を寄せて、舌先でペロリと舐めた。風呂の後の石鹸の香りと、ハーヴィーそのもの匂い。マイクは幸せそうに口角を上げた。そして、口に頬張った。ハーヴィーの足を跨ぎ、腰を高く上げて、クチュリクチュリと音を立てる。含みきれない根元は指先で弄った。少しずつ、雄の味が口の中に広がっていく。

娼館にいた頃も、ずっとフェラチオはやってきた。客にねだられることもあったが、ほとんどは自分から進んでやった。先に口で抜いておいた方が、後ろに挿入されたときに自分が楽だったからだ。それに、潤滑油を使う客ばかりではない。客のペニスを濡らすという目的もあった。だから、娼館での咥えるという行為に、愛情なんてものはなかった。ただ、客を喜ばせるために、そして自分が楽をするために、マイクはしゃぶっていた。

けれども、今は違う。自分の体全てで、ハーヴィーの体の全てを知りたいという欲求。そして、愛情ゆえの希望。どんどん口の中で大きくなていく物に呼吸が苦しくなりながらも、マイクは今、とても幸せだった。次第に興奮してしまって、触られてもいないのに、自分自身が高ぶってくるのがわかった。けれども、自分で自分を慰めることはしなかった。両手の指先も、ハーヴィーを根元を慈しむのに使っていたからだ。それで、構わなかった。ずっと願っていたことが叶ったのだから。

ハーヴィーの高ぶりが喉奥に軽く押し付けられた。それだけ口の中で大きくなったということもあるが、ハーヴィーの手がそっとマイクの後頭部を押さえたからだ。嬉しくて泣きそうになる。マイクは喉奥を使って、ハーヴィーの先端をさらに刺激した。その瞬間、ハーヴィーがマイクの口の中で爆ぜた。急激に広がる雄の味。すかさずマイクは白濁を嚥下した。ゴクリと、かすかに喉が鳴る。ハーヴィーは慌てたように、体を離そうとした。しかし、マイクはハーヴィーを咥えたまま「待って」と懇願した。今度は、煽るのではなく、清めようと舌を這わせ始めた。舌先を使って、丁寧に綺麗にする。先端の渦口に少し溜まっていたものをチュッと吸い上げてから、ようやくマイクはハーヴィーから離れた。

「ありがとう・・・ハーヴィー・・・」

マイクは嬉しそうに笑った。

「嫌じゃなかったか?」

マイクは首を横に振った。

「すごく、嬉しかった。僕・・・あなたとのセックス、好きだし。この屋敷に来て、仕事を手伝ったり、勉強したり・・・それはすごく人間らしくって楽しい。でも、貴方とセックスしている時が一番、自分が人間らしく思える。・・・ああ・・・僕は使い捨ての人形じゃないんだなぁって。ただ、貴方の全てに触れられないのが、寂しくて、悲しかった。だから・・・今、すごく幸せだよ?」

ハーヴィーは体を起こして、マイクに密着しようとした。そして、気付く。マイクの中心が高ぶっていることに。

「触られてもいないのに、こんなにしていたのか」

「・・・はしたない?・・・それだけ、嬉しかったし、ちょっと興奮しちゃったんだよ」

「はしたないどころか・・・可愛らしくて仕方がないな」

ハーヴィーはマイクの寝間着のボタンを外す。しかし、裾まであるわけではない。

「マイク、両手を」

マイクは素直に両手を上げた。その体から、寝間着を抜いた。かすかに体をよじらせる。綺麗な体。

「ハーヴィー・・・僕の中に・・・入る?」

「その前に、君をイかせたい」

ハーヴィーはマイクを両手で包み込んだ。さらにマイクの体がゆらりと揺らめく。

「あ・・・ハーヴィー・・・僕・・・あんまり・・・我慢できないかも・・・」

「我慢なんかしなくていい。ありのままの君で」

気持ちが高ぶっているせいか、数度扱かれただけで、達してしまいそうになる。我慢しようとはしたものの、それは無駄だった。何故なら、愛しているハーヴィーに触れられているのだから。体を燻らせて、悶える。後孔も疼いてくる。

「ひっ・・・やっ・・・あああああっ・・・ああーっ・・・」

綺麗な喉を仰け反らせて、マイクは性液をハーヴィーの腹の上に撒き散らしてしまう。

「はっ・・・あ・・・あ・・・はぁ・・・あ・・・ごめんなさい、ハーヴィー・・・」

マイクは体を屈めて、ハーヴィーの腹に飛んだ自分の性液を舐めとろうとした。しかし、それはハーヴィーにすぐさま止められた。

「マイク。それは絶対に許さない。リネンで拭けばいいことだろう」

「でも・・・」

「マイク。ダメだ」

ハーヴィーは厳しく言う。

「・・・じゃあ・・・僕が拭く・・・それなら・・・いい?」

答えを待たずに、マイクは端に寄せてあったリネンを手に取った。そして、優しくハーヴィーの腹に触れ、力を入れずに拭い取っていく。とても静謐な時間が寝室に流れるような気がした。ハーヴィーは堪らなくなって、マイクからリネンを奪い取ると、その細い体を自分の体の下に敷き込んだ。

「今度こそ、君の中に入らせてもらおうか」

「・・・うん」

マイクが嬉しそうに笑った。

「ただし、明日・・・いや、もう今日か。食事も仕事も勉強も読書も、ベッドの中だと覚悟しておけ」

マイクの青い瞳が丸くなる。けれども。

「・・・それでも・・・いい。いっぱい・・・抱いて」

そう再び、マイクは可憐な花のように笑ったのだった。

END