バーンっ!と勢いよく、マイクがハーヴィーのペントハウスのドアを開ける。
「ちょっと!聞いてよ!ハーヴィー!!!!」
バーンっ!と思いっきり、ドアを閉めて、ズカズカと部屋の奥へと足を進める。
「サイっテーなんだよ!ルイスってば!」
リビングにたどり着き、ソファに座るハーヴィーを一瞥し、
「僕が徹夜して打ち込んだデータをサクッと消去したんだよ!って・・・え?」
マイクは再度、ソファにゆったりと座っているハーヴィーを見て固まる。
「仕方がないだろう。ルイスの情報屋はITに強いが、それはルイスがITに弱いことの裏返しだ。・・・ん?どうした?マイク?」
目の前で固まっているマイクを訝しげに見る。
「やだ・・・何それ。反則」
「?」
ふらふらとマイクがハーヴィーに近寄り、承諾も得ずに膝の上に乗る。
「・・・めっちゃ、格好良い。・・・眼鏡のハーヴィー」
「ほう。そうか?惚れ直したか?」
「うんっ!」
黒縁眼鏡のハーヴィーは、手にしていた新聞をテーブルに放り投げ、マイクの腰を掴んだ。
「ねえ、もっとよく見せて」
マイクが両手でハーヴィーの頰を軽く固定する。
「ハリー・ハートも格好良いけど、僕の好みはこっちだよ」
「キングスマンか」
「そう。ああ、でもでも!絶対ハーヴィーがいいってば!」
「君は眼鏡フェチだったのか?」
「そんなことないけどさ。・・・なんで、オフィスでかけないの?」
「さあな。考えたこともない」
「んー。でも、やっぱいいや。オフィスではかけないで。眼鏡ハーヴィーを知ってるの、僕だけでいいから。・・・ねえ、僕だけだよね?」
「ああ、君だけだ」
「よかったぁ。僕だけのハーヴィーだね」
マイクは満足気に笑い、軽くハーヴィーに口付ける。
「眼鏡が邪魔だろう。外すから・・・」
「ダメっ!!!!!!そのままでいて!!!!」
「まさか、眼鏡をかけたままベッドに行かせるつもりか?」
「そのまさかだよ。でもって、眼鏡をかけたまま、僕を抱いてよね。絶対、今夜は眼鏡ハーヴィーとエッチする!」
「なんだ、その妙な大胆宣言は」
「いいから、いいから。早く寝室に行こうよ」
「・・・さっきルイスがどうとか、言ってなかったか?」
「・・・誰、それ」
「・・・入力したデータがどうとか」
「・・・今日は仕事のことは忘れるの。ハーヴィー。僕としたくないの?」
マイクが口を尖らせて、ちろっと睨めつけるようにハーヴィーを見る。まあ、こんなに積極的なマイクも珍しい、とハーヴィーは思った。
「わかったわかった。先にベッドに行ってろ」
「・・・絶対に眼鏡は外さないでよ!」
ビシッとハーヴィーに人差し指を突き付けるマイク。それが上司に対する態度か、と思いつつもそれを許してしまうのが、子犬には甘いハーヴィーなのだ。
「ひっ・・・あっ・・・ああっ・・・あんっ・・・」
ハーヴィーの動きに合わせて揺れる体を持て余しながらも、マイクは快感を享受していた。
「ふうん。・・・今夜はいつもよりも反応がいいな」
「はっ・・・あ・・・だって・・・なんか・・・違う人とセックスしてるみたいで・・・ちょっと・・・興奮しちゃうかも・・・」
「・・・・・・やっぱり、眼鏡は外す」
「えっ・・・ええええええ~」
「誰が、『違う人』、だ。君を抱いているのは俺だからな。まったく、何を考えてるんだ、君は!」
そう言って、ハーヴィーが眼鏡をはずし、サイド・テーブルに置く。そして、ムッとした表情でマイクを見下ろす。
「・・・・・・ああ。やっぱ、こっちのハーヴィーもいいよね。うん」
マイクが両腕をハーヴィーの腕に絡めた。
「マイク。『も』と『が』では、これからの対応に相当差が出るぞ」
「えっ・・・ん・・・っと・・・ごめんなさい。こっちのハーヴィーがいい」
「最初から、そう言え。馬鹿者」
マイクをバカ呼ばわりしつつも、機嫌を直す。なんだかんだと、マイクには激烈に甘いハーヴィーだった。
END