「ハーヴィー!おはようっ!」
久しぶりの休日。マイクがだいぶ昼に近い午前中にハーヴィーのペントハウスを訪れた。
「何が、おはようだ。こんな時間に」
「だってー。せっかくの休みだから、ハーヴィーにちょっと気を遣ったんだよ?少しはゆっくりさせてあげたいじゃん。本当は僕だって、もう少し早くここに来たかったんだから」
ぷうっと、小さく頰を膨らませながらマイクが言った。しかし、ハーヴィーは少々冷めた眼でマイクの顔を見てから呟いた。
「寝起きの顔と軽い寝癖・・・」
「えっ・・・」
「どうせ、寝坊したんだろうが?だから、こっちに泊まれば良かったんだ」
「だって~。昨夜は断然僕の方が残業三昧だったじゃん。ルイスのせいで!僕が休もうとすると、すぐに大量の仕事を押し付けて来るんだから~、もうっ!」
「バスルームに行って、もう一回顔を洗ってこい。そして、寝癖もな」
「うん。そうする」
ブルゾンとパーカーをソファに放ると、パタパタとマイクはバスルームに走って行った。
「まったくだらしがない」
ハーヴィーはそう言って、マイクが脱ぎ捨てたものを手に取り、丁寧にソファの背にかけてやる。スーツ姿のマイクを見ることの方が断然多いのだが、こうして私服姿を見ると、大学生のようにしか見えない。そのギャップが可愛らしいとさえ思う。
ハーヴィーはベッドルームに行き、カットソーの上に着るジャケットをクローゼットから、そしてチェストからは黒縁の眼鏡を取り出した。そして、もう一つのアイテムも取り出すと、それをジャケットの内ポケットへと忍ばせた。口角をあげて、ニヤリと笑いながら。
「ハーヴィー、どお?寝癖とれた?前は鏡でわかるんだけど、後ろが・・・」
「ああ、大丈夫だ。・・・・どうした?その表情は」
「・・・ハーヴィーが眼鏡をかけてるから。その・・・貴方が眼鏡をかけてるってことは・・・その・・・僕・・・また・・・」
「心配するな。これから外出だろう?まさか、君にメイド服やナース服を着せて出かけようと思わん」
「ほんと?ああ・・・良かったぁ・・・焦っちゃったよ、僕」
あからさまにホッと肩を下ろすマイクだった。どうやら、眼鏡ハーヴィー=自分はコスプレ。という図式が頭の中で成り立ってしまっているらしい。
「さあ、出かけるぞ。今日はドライブでいいんだな?」
「うん!途中でランチを買っていこうよ!」
「だったら美味いサンドイッチの店がある」
「じゃあ、そこでテイクアウトだね」
マイクがソファからパーカーとブルゾンを取って着込む。
「昼間に仕事以外でハーヴィーと出かけるなんて、本当に久しぶりだから、とっても楽しみにしてたんだ!」
ハーヴィーは車のキーを持ち、はしゃぐマイクの腰に手を当てて玄関へと促した。
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予定通り、ハーヴィーおすすめの店でサンドイッチとコーヒーをテイクアウトする。1時間ほど車を走らせて到着した公園のベンチで食べることにした。
「うわぁ!本当に美味しいね、このサンドイッチ!何これ、何が隠し味だろう・・・?」
「さてな。俺にもわからん。しかし、美味いんだからいいんじゃないか?」
「そうだね。あんまり難しいことを考えるのはやめとこ。美味しいは美味しいでいいよね」
マイクは納得したようにいいながら、指先を舐めた。
「ねえ、新しいコーヒー、欲しくない?」
「いいな」
「そこのコーヒースタンドで買って来るから待ってて」
ハーヴィーの返事も待たずに、マイクは駆け出した。その後ろ姿はまったく弁護士に見えない。本当に大学生のようだった。せいぜい周囲には、年の離れた兄弟くらいにしか自分たちは見えないのだろう。
「お待たせ~。熱いから気をつけてね」
ハーヴィーに深い緑色の紙カップを渡しながら、マイクはスマホを取り出した。
「どうした?どこかへ電話か?・・・まさか、ここまで来て仕事じゃないだろうな」
「違うよ~。写真を撮ろうっと思って。だって・・・僕たちの写真ってあんまりっていうか、ほとんどないじゃん。なんか・・・欲しいなって。・・・嫌?」
「そんなことはないが・・・」
「やった!」
マイクが左手にスマホを持ってハーヴィーの隣にささっと立つ。よほど嬉しいのだろう。満面の笑みを浮かべている。
「ほらほら!ハーヴィーも笑って!」
仕方がないな、というように、ハーヴィーもスマホにカメラ目線を向けたのだった。
数枚、写真を撮るうちに、ハーヴィーの表情も解れてくる。こういうことに付き合うのも悪くはない。嬉しそうにしているマイクの表情を見るのはいい。
「本当はさ、ちょっとドキドキしてたんだよね」
飲み終わったコーヒーのカップをトラッシュに捨てて公園内を歩きながら、マイクがぽそっと呟いた。
「眼鏡をかけたハーヴィーのことだから、何か・・・うん、何かトラップ的なものがあるじゃないかなって。実は車の後部座席とか、めっちゃチェックしたもん」
「コスプレ衣装がないかどうかか?」
「そう。でも良かったぁ。普通のデートで!・・・でも、僕がコスプレしないのに、どうしてハーヴィーは眼鏡なの?」
まるで赤頭巾ちゃんのような言い回しでマイクが尋ねてくる。
「知りたいか?」
「・・・えーっと。これって遠慮しといた方が良さそうな展開・・・かな?」
と言って少々固まった笑顔で首を横に倒したマイクを、ハーヴィーが木陰に引き摺り込んだ。
「ハっ・・・ハーヴィーっ!?」
「もちろん、コスプレはナシだ。しかしなぁ・・・」
ハーヴィーがマイクの耳元でねっとりと囁く。
「ちょっ・・・ここ・・・そ、外だよ?」
「人は少ないし、ここは木の陰になってるから大丈夫・・・」
「やっ・・・なっ・・・舐めないでっ」
話しかけながらマイクの耳朶や耳の奥を舌先で舐る。マイクの弱いところの一つだ。いや、マイクの弱くないところなんて、一つもないのだが。まるで、全身が性感帯のように、ハーヴィーが触れるだけで、マイクは体が震える。けれども、ここは外で、公園で、隔絶された場所ではない。マイクはハーヴィーのジャケットに指先でしがみついながら、体を小さく震わせた。
「・・・ハーヴィー・・・」
マイクが泣きそうな声を上げる。
「昨日、俺の部屋の来なかった罰だな」
「だってぇ・・・言ったじゃん・・・気を遣ったんだよぅ・・・ふぇ・・・あ・・・やだ・・・貴方に触られたら・・・僕がどうなるか、わかってるくせに・・・うー・・・」
額をハーヴィーの胸元に押し付ける。最早、ハーヴィーを押しのけて逃げる、という選択はないらしい。ハーヴィーはマイクの顔を両手で包み込んでキスをした。
「んっ・・・んうっ・・・」
ハーヴィーの舌の動きに合わせるようにして、マイクも素直に角度を変えながらキスを返す。夢中いなってしまって、ハーヴィーの右手が頰から外れたことには気がつかなかった。その手がウエストに伸びていることにも。
カシャカシャという、ベルトを外す音でようやく我にかえる。
「っ!!ハーヴィー!だめっ!さすがにダメっ!」
「心配するな。俺もここでコトに及ぶ気はない。・・・しかし・・・」
緩んだジーンズの背後の隙間からハーヴィーの手が差し込まれる。もちろん、ボクサーパンツの中に。
「えっ・・・なっ・・・何?え?え?え?」
慌てているマイクの後孔に何かが押し込まれた。グッと奥の方まで。
「やだっ!・・・何?ハーヴィー?何、入れたの?」
「ああ、心配するな。小さめのローターだ」
そう言いながら、ハーヴィーは手にしたワイヤレスのリモコンをマイクに見せる。
「う・・・そ・・・」
「コスプレとどっちが良かった?」
「どっ・・・どっちもやだよっ!ねえっ、ハーヴィー!抜いて!」
「言っただろう?これはお仕置きだから」
言いながら、マイクのジーンズを直してやる。身なりを整えて、最後にぎゅっとハグをしてやる。
「い・・・意地悪・・・や、やだよ?それ・・・スイッチ入れないでね?」
「車まで上手に歩けたらな」
「う・・・。・・・腕・・・借りてもいい?」
「そういうのは、『腕を組んでもいい?』って聞くんだ」
「でもぉ・・・」
「俺たちはそういう位関係だろう?」
「・・・ハーヴィーって、結構、心臓に毛が生えてるよね」
「怖いものがないんだ。君を愛したことを後悔したこともないしな」
「ふっ・・・もう・・・なんか、変な異物感・・・。ハーヴィー、絶対にスイッチ入れないでねっ・・・えっ・・・やあっ・・・!」
思わずマイクはハーヴィーにしがみついた。体の奥で小さな異物が蠢いている。
「やっ・・・お願いっ・・・ハーヴィーっ・・・ここじゃダメっ!」
「じゃあ、何処なら?」
「せっ・・・せめて車まで待って!!!」
「車まで・・・な?」
案外ハーヴィーは素直にスイッチを切ったのだった。しかし、マイクはもう、その場に崩れ落ちそうだった。
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秋は日が落ちるのが早い。空気が茜色に染まっている。その中で、マイクは車の助手席に放り込まれた。体がシートにバウンドする反動ですら、体の中のオモチャに刺激を与えてくる。
「ふっ・・・んっ・・・」
ハーヴィーは流れるようにシートを倒すと、マイクの体に覆い被さった。体を弄りながら、キスを与える。
「か・・・帰らないの?」
「君がもたないだろう」
「どういうこと?」
「こういうことだ」
「え?・・・あっ・・・ひゃんっ!や・・・ああ・・・ああんっ!ハーヴィー!」
「ここから部屋まで1時間はかかるぞ?その間、スイッチは入れっぱなしで・・・大丈夫なのか?君は」
「ス・・・スイッチを切れば・・・いいじゃんっ・・・ああんっ・・・」
体の奥で蠢くオモチャに体が跳ねる。その体を宥めるようにハーヴィーが触るが、結局それは逆効果になっていた。体を縮こませるようにしながら、与えられる刺激に耐える。指先はハーヴィーのジャケットを掴みっぱなしだった。
「やっ・・・やっ・・・あっ・・・やっ・・・」
半開きになった口からは、苦痛と快楽の混じった声が漏れている。その端からは、唾液が。ハーヴィーはそれを舌で舐め取った。
ハーヴィーがマイクに対して、ローターのようなアダルト・グッズを使うのは初めてだった。その必要がなかったし、使いたいとも思っていなかった。しかし、せっかくのデートで、自分は眼鏡をかけていて、それなのにマイクがコスプレもしないのであれば、イーブンじゃない。だから・・・。そう思って、使ってみた。「いや」と言いながらも、なかなか良い表情を見せるマイクに、ハーヴィーは満足した。パーカーの中に着ているセーターの中に手を入れて、シャツの上から胸を潰してやる。
「ひゃんっ!・・・あ、・・・やだぁ・・・」
マイクの青い瞳は涙で濡れていた。頭を左右に降り、何かから意識をそらそうとしている。
「あ・・・あ・・・あ・・・」
見慣れた表情。ハーヴィーはマイクの蜂蜜色の髪を撫でながら微笑んだ。
「っ・・・ふっ・・・あ・・・ああああーっ・・・・」
マイクの体が弓なりに反り、そしてすとんっと落ちた。
「あ・・・」
眼が虚ろで、あまり焦点が合っていない。
「イったのか?・・・オモチャで?」
揶揄するようにハーヴィーが問いかける。その言葉に、マイクは唇を噛んだ。
「そ・・・そんなこと・・・ないもん。・・・イってなんかないもんっ・・・」
言いながら、そっぽを向く。ハーヴィーがすっとマイクの股間に触れると、確かに濡れてはいなかった。「ああ」とハーヴィーは思う。
「・・・オ・・・オモチャなんかで・・・イかないもんっ!」
けれども、ハーヴィーがマイクに優しく触れると、体がびくりと震える。その体を優しく愛おしむように撫で摩る。
「女の子みたいにイッたんだな」
「ふぇ・・・そ・・・そんなこと・・・ないもんっ・・・うううう。ハーヴィーのバカァ・・・」
ハーヴィーのジャケットを引き寄せてそこに顔を埋める。
ハーヴィーはマイクをそのままにして、ジーンズのベルト外し、後ろに手を回して、ローターを抜いてやった。
「ひあっ・・・」
「・・・さて・・・どうする?帰るか?」
「・・・う・・・僕・・・ハーヴィーでイきたい・・・オモチャ・・・やだ・・・」
「やっぱり、イッたんだな」
「う・・・もうっ!意地悪言わないで!」マイクは腰を浮かすと、後ろのポケットから財布を出し、その中からスキンの入った正方形のパッケージを取り出した。
「・・・これ・・・」
「ああ、そうだな。服が汚れたら大変だからな」
ハーヴィーは素直に受け取った。しかし、自分が使うことはなかった。マイクのジーンズを下着ごと下げると、マイク自身に装着してしまう。
「ちっ・・・違うってば!!!」
「違わない」
ハーヴィーは器用にマイクからジーンズと下着を抜くと、ローターで解れた後孔に自分を押し込んだ。まるで吸い付くように、自分を受け入れるその場所に、ハーヴィーはほくそ笑んだ。少しカサついたマイクの下唇を親指の腹でなぞると、「好きなだけイっていいぞ」と言って、腰を揺り動かした。
「マイク。オモチャと俺とどっちがいい?」
「・・・そんなの・・・愚問。ハーヴィーがいいに決まってるでしょ?・・・暖かくて・・・大きくて・・・優しいもん・・・んぅっ・・・。あ・・・キ、キス・・・キスして・・・」
マイクの口から溢れでる喘ぎ声を飲み込むように、口を塞ぐ。あえかな声を聞いてもいいが、余計なギャラリーが集まってきても困る。
外の茜色は、次第に藍色へと変わっていった。
車の中なので。ハーヴィーもあまり激しくは動かない。しかし、それがいつもと違う刺激をマイクに与える。もどかしいような、焦れったいような。気分はものすごく高まっているのに、優しすぎる甘い刺激に、マイクは口の端から吐息とも喘ぎとも取れる声を漏らす。
マイクは狭い車内で両足を動かし、ハーヴィーの腰に絡めた。本当はもっと激しく突き上げて欲しいのだが、場所が場所だけもそうもいかない。そんなマイクの思いを知ってか、ハーヴィーは片手をマイクの中心に伸ばした。スキンを被せたそれ。まだ、一度もそこで達してはいない。グニグニと揉みこみながら、次第に大きくなっていくマイクを一層、更に育てていく。
「うっ・・・んっ・・・」
感じ入るマイクの声が、耳に心地いい。マイクの両手のひらが、ハーヴィーの体を弄る。どこに手を置いていいかわからないのだ。結局、ハーヴィーの頰を包んで、潤んだ瞳で見つめると、唇を合わせてきた。そして、「お願い・・・イかせて・・・イきたい・・・」と強請った。
この車内の狭さだ。激しい突き上げはしてやれない。その代わりに、ハーヴィーは的確な場所を緩く押し付きながら、マイクの高ぶりを指で育ててやった。
「はっ・・・あっ・・・いっ・・・いいっ・・・んうっ・・・」
ハーヴィーの腰に絡まった足に力が籠る。グッと自分の方に引き寄せながら、ハーヴィーの唇を味わる。一度、中だけでイった体は感度がいい。
「はっ・・・あ・・・も・・・ダメ・・・い・・・く・・・っ・・・んんっ・・・」
マイクは喉を仰け反らせて、スキンの中に精を放った。そしてハーヴィーは当然のように、マイクの中に白濁を叩きつけた。
*******************
「まるで・・・妊娠したがってる女みたいだな・・・」
車を運転しながらハーヴィーがボソッと呟いた。
「なっ・・・何を言ってるの!!貴方のせいでしょ!う、動いたら出ちゃいそうなんだもん!!」
マイクはシートを倒したまま、硬直したように横たわっていた。何とか下着とジーンズは身につけたものの、座ると奥からハーヴィーの放ったものが下りてきそうだったのだ。だから、そうならないように、横になっているわけである。
ハーヴィーは人通りの少ない、暗い道路の路肩に車を止めた。
「ハーヴィー?」
マイクの問いかけには答えず、ハーヴィーはマイクのベルトに手をかけた。
「えっ1やっ・・・うそっ・・・まだ・・・するのっ!?」
実は公園の駐車場でハーヴィーがマイクの中に放ったのは一度だけではなかった。ハーヴィーが放った数だけ、マイクもスキンの中に精を吐き出した。最早、その役目を果たさないくらい、白い液体がスキンから溢れた。だからこそ、マイクは動けないでいるのである。それなのに、またハーヴィーが自分をどうにかしようとしている。
マイクは、後ずさった。それにも限界はあるのだが。
「安心しろ。君のためになることだから」
ハーヴィーは笑うと、マイクにキスをしながら、その後ろに手を回した。そして、ワイヤレスのローターをグッと押し込んだのだった。
「んん~!!!!!!」
ハーヴィーはシートのサイドレバーを操作して、シートを立てた。
「こうして蓋をしておけば、中のものが出ることもないだろう?ああ、我ながらいい考えだ」
そう言って、マイクの着衣を直すと、再びエンジンをかけて車を発進させた。
「へ・・・変態・・・ハーヴィーの変態・・・酷い・・・あ!絶対にスイッチは入れないでね!!」
「スイッチ?」
「そう・・・あっ・・・ひゃんっ!ひゃ・・・あ・・・あ・・・あ・・・」
「親、手が滑った」
「は・・・ハーヴィーっ!!!!」
マイクは体を小さく縮こまらせながら、ふるふると震えた。それからハーヴィーの家に帰り着くまでに、何度も、ローターのスイッチを入れられたり、切られたりしたのだった。
助手席で小さくなったマイクは、泣きながら(啼きながら)、恨めしそうにハーヴィーを見ながらも、時折意識をそらすために窓の外を見る。そして、思うのだった。
やっぱり・・・眼鏡ハーヴィーには要注意だ!
・・・でも・・・眼鏡ハーヴィー、カッコいい。
もう・・・僕は一体どうしたらいい!!!!
そんなマイクの心の叫びとは裏腹に、ハーヴィーは鼻歌を歌いながら、ハンドルを取り回したのだった。
END