先にシャワーを済ませたハーヴィーは、ベッドの上で本を読んでいた。今は残業をようやく終わらせてきたマイクがシャワーを使っている。まあ、カラスの行水で、すぐに出てくるのだろうが。案の定、髪も完全に乾かさずに、マイクが寝室に現れた。肩にタオルをかけ、ほかほかと顔が上気している。
「もう、秋なんだぞ?ちゃんと髪を乾かさないと風をひくぞ?」
「大丈夫。僕のアパートならともかく、ハーヴィーの部屋は空調完備だもん」
そう言いながら、マイクがベッドの上に上がる。否、正確に言うと、ハーヴィーの体の上にだ。ただし、体重をかけないように気を遣っている。そしてなぜだか、その表情はご機嫌で上気している。
「ねえ、ハーヴィー・・・これ」
「ん?・・・眼鏡?・・・ああ。そういえば、バスルームに置きっ放しだったな」
「かけて。眼鏡をかけて」
マイクが黒縁の眼鏡をハーヴィーに差し出す。ハーヴィーは片眉を上げた。
「マイク、それが何を意味するかわかって言ってるのか?」
「わかってるよ?」
「そうかな?今の君の格好は、Tシャツにハーフパンツ。それで俺が眼鏡をかける?・・・イーブンじゃないな」
「うわぁ・・・どの口が言うかなぁ。これまで散々、僕に変態さんな格好をさせたくせにぃ。・・・んー・・・でも、ちゃんとイーブンだよ。まあ・・・貴方が気に入ってくれればの話だけど」
マイクが眼鏡の鉉の端っこを唇で噛んで、にこりと笑う。可愛らしい、小悪魔的な笑みだ。
「ふむ。まあ、いいだろう」
「うわぁ、ありがと、ハーヴィー」
マイクはいそいそと自分の手でハーヴィーに眼鏡をかけさせた。やっぱり、眼鏡をかけたハーヴィーは格好いい。心から素敵だ、と思う。マイクはハーヴィーの体に自分の体重を少しずつ預け、抱きついた。そして、柔らかく、唇を喰む。
「・・・マイク。酒を飲んだか?」
「うん。シャワーの後に、スコッチを1杯だけ。・・・でないと、ハーヴィーの眼鏡とイーブンにする勇気がでなかったんだもん・・・」
「ほう・・・。それは、期待していいってことか?」
「だから、ハーヴィーが気に入ってくれればの話だってば」
ぽてんっと、マイクはハーヴィーに体を預けた。そして、ハーヴィーの両手を取ると、その手を自分の腰に回した。丁度、ハーフパンツのゴムの辺りに。
「ね、指先を入れてみてよ・・・」
言われるがままに、ハーヴィーは両方の指先をハーフパンツの中にほんの少し、潜り込ませた。そうして、「ん?」というか、「おや?」というような感覚を指先に感じた。いつもの、綿のボクサーパンツとは違う感触。それは、明らかにレースの感触だった。
「なるほど」
今度は、ハーヴィーが笑みを浮かべる番だった。その顔を見て、マイクが恥ずかしそうに俯く。
「そういう表情をすると思ったから、お酒を飲んだんだよ・・・もう・・・」
「なるほどな。で。これは触るだけか?見てもいいのか?」
「・・・好きにして・・・」
その言葉を合図に、ハーヴィーは器用に、するんっとマイクのハーフパンツを下げた。マイクの肩越しに見える、黒いレースのショーツと白い形の良い下尻。
「・・・どお?イーブン?」
「もう少し検証させてもらいたいものだな」
「んー・・・」
マイクは自分の手でハーフパンツをさらに下ろし、その後は足を器用に使ってそれを抜いた。そして軽く膝を立てて、腰を少し上げて見せる。すかさずハーヴィーは腕を伸ばして、マイクのレースに包まれた尻を撫で始めた。
「ねえってば・・・どお?」
「悪くないが・・・前のデザインも確認しなくちゃな」
マイクは、膝立ちになってハーヴィーに跨った。フロントデザインも総レース。
「ねぇ・・・ハーヴィー・・・」
「・・・いいだろう。イーブンだ。・・・自分で選んだのか?」
「あったりまえじゃん!・・・こんなの・・・他人に頼めるわけないでしょ!」
「じゃあ、自分で買いに行ったのか?」
「それは無理。ネット通販。・・・ダメだった?」
「いや?君が俺の為に一生懸命選んだんだろう?・・・ああ、違うか。俺の眼鏡の為か」
ハーヴィーがクスッと笑った。
「嫌な言い方しないで。・・・ハーヴィーの為だよ。・・・なんか、ハーヴィー、こういうの好きかなぁって・・・。その・・・今までの経験で・・・そう思った」
「俺が用意したものを着せるのもいいが・・・君が自分で選んだってところが、今回はポイントが高いな。合格だ」
「じゃ、キス」
「それだけで、いいのか?」
「だーかーらー・・・そういう意地悪を言わないで」
「悪かった。ああ、せっかくの下着がTシャツで隠れるのはもったいないな」
「待ってて、脱ぐから」
マイクは体の前で腕をクロスさせ、裾を掴むとクルッとTシャツを捲り上げて脱ぎ去った。
「完璧な眺めだな。触っても?」
「・・・ハーヴィーは僕に何をしてもいいんだよ?許可・・・いらないから。・・・今までのコスプレだって・・・ハーヴィーが喜んでくれるなら・・・結局のところ・・・僕は嬉しかったんだ」
その言葉を聞いて、つくづく、自分に跨る恋人は可愛らしいと感じる。そんな可愛らしい恋人の体を優しく撫で、黒いレースショーツの上からも触れる。すでにマイクは昂ぶっていた。
「脱ぎたいか?窮屈だろう?」
「ダメ。脱いじゃったら、イーブンにならないから・・・。だから・・・その・・・このままで・・・」
「いい子だ」
ハーヴィーは満足気に言うと、レースの上から、マイクを可愛がり始めた。マイクの指先がハーヴィーの頰や顎に触れる。目を逸らさずに、ハーヴィーを見ている。
「今日は随分と見るんだな」
「だって・・・目を瞑ったら、眼鏡のハーヴィーが見えないじゃん・・・」
「そりゃ、尤もだ」
言いながら、左手でマイク自身を、そして右手でマイクの後孔を探る。
「ひゃっ・・・」
同時に与えられた刺激に、マイクの体が軽く跳ねた。けれども、目はハーヴィーから逸らさなかった。ハーヴィーもまた、マイクを見つめる。
「えっと・・・僕、履いたままイっちゃっても平気だし・・・それに・・・挿れるときは、ずらしてくれるだけいいから・・・」
「イーブンのために?」
「ん・・・そ・・・」
返事をするマイクの声が、甘くなっている。
「じゃあ、遠慮なく、そうさせてもらうか。ただ、もう少し、弄って解した後でな」
「そういうとこ、ハーヴィーって優しいよね。無理強いはしないんだ・・・。だから・・・何でも許せるんだと思う・・・。大好き・・・ハーヴィー・・・」
マイクは体を屈めると、一瞬だけ、唇を重ねた。けれども、すぐにハーヴィーが触りやすいように、動きやすいように、体勢を元に戻す。その可愛いらしい行動に、ハーヴィーは、後でたっぷりと優しいキスを与えてやろうと思いながら、マイクの中心に手を伸ばした。黒いレースショーツの中で、それは確実に育ちつつある。適度な刺激を与えながら、後ろも指を使って丁寧に解してやる。内部の壁を指の腹で掻くようにしたり、ぷくりとした場所を押したりしながら、その熱い感触を楽しむ。
「はっ・・・あっ・・・あんっ・・・ハーヴィー・・・おねだりは・・・ダメ?」
「可愛らしく言ってみろ」
「・・・んっ・・・も・・・欲しい・・・ハーヴィーの・・・欲しい・・・お願い・・・後ろに挿れて・・・犯して・・・」
マイクは左手の指先をハーヴィーの太腿に置きながら、右手でショーツのクロッチを横にずらした。そして、ハーヴィーのスウェットの中に手を入れて、すでに高ぶっているものを丁寧に取り出す。ハーヴィーはマイクから指を抜き、そして後孔を開いてやる。マイクは目を閉じながら、ゆっくりと腰を下ろした。ずぶり・・・と、内壁を捲りあげながらハーヴィーが侵入していく。
「う・・・あ・・・」
「辛いか?」
マイクは首を横に振った。
「ううん・・・いい・・・もっと・・・深く・・・」
さらにマイクは腰を落とした。そして、根元までハーヴィーを飲み込む。
「は・・・あ・・・」
そこでようやく、マイクは1つ、小さな呼吸をした。そして、目を開けて、小さく微笑む。欲しかったものを手に入れたような子どものような無邪気が表情。この表情を見ることができるのは自分だけだと、ハーヴィーは思いたかったし、実際にそうするつもりだ。そして、このマイクの熱い胎内を知るのも自分だけだと。
マイクは両手をハーヴィーの太腿に添えて、ゆらゆらと揺らめき始めた。そうすることで、ハーヴィーが自分の内部に馴染んでくるらしい。そしてそれから、静かにが上下し始める。奥へ、奥へと、ハーヴィーを誘うように。
「あっ・・・はっ・・・はあっ・・・はっ・・・」
次第にマイクの体が後ろへと反り始める。それに合わせるかのように、膝が浮き上がり、足先と後ろに付いた指先だけで体を支え、腰を突き出すような姿勢になった。奥深くまでハーヴィーを飲み込むのではなく、ハーヴィーの先端で、自分が一番感じるところを擦るように動く。
「やっ・・・あっ・・・いいっ・・・あんっ・・・あ・・・お願い・・・触って・・・もっと・・・強く・・・触ってぇ・・・」
ハーヴィーはレース越しに、マイクを力強く揉みしだいてやる。
「あああああっ・・・あっ・・・やっ・・・い・・・く・・・イっちゃう・・・・」
その言葉に、ハーヴィーは指先により一層、力を込めて擦り上げた。その刺激で、マイクが仰け反る。
「ひゃっ・・・ああっ・・・ああ~っ・・・・」
びくんびくんと体を震わせながら、マイクがショーツの中に精を吐き出した。レース越しに、その熱さがハーヴィーの手に伝わってくる。そして、夥しい湿り気も。それを感じてから、ハーヴィーは下からマイクの体を数度突き上げて、その再奥へ吐精する。と同時に、マイクの体が後ろへとかしいだ。ハーヴィーはその腰を両手で掴むと、力任せに自分の方へと引き寄せた。そして、抱きしめてしまう。その動きで、ハーヴィーはマイクの体の中から自然と出た。
ハーヴィーの胸に頭を預けたマイクが肩で呼吸する。その肩をハーヴィーは優しく撫でてやった。マイクの呼吸が整ったところで、体勢を入れ替える。
「いい子だ、マイク」
「・・・合格?」
「ああ・・・全て。ああいう淫らな君を見るのは気分がいい。そそる。淫らな下着もな」
「・・・ふふっ・・・良かったぁ・・・」
「こういういい子にはご褒美だな」
「ご褒美?」
「目は瞑るな。せっかく眼鏡をかけてやっているんだから」
「へ?」
マイクが首を傾げるよりも先に、ハーヴィーの顔がマイクに近づいた。そして、キス。柔らかで、優しくて、温かなキス。くちゅり、ぴちゃり・・・と音を立てながら、静かにじっくりと、ハーヴィーはマイクにキスを与えた。
結局、気持ちが良すぎて、マイクは目を瞑ってしまった。けれども、マイクの閉じられた瞳には、眼鏡姿のハーヴィーがしっかりと焼き付いている。だから、いまは、唇に与えられる心地よさに、気持ちを委ねることにする。そして、ものすごく恥ずかしかったけれども、このレースのショーツを買った自分を、それを自分の意志で身に付けた自分を、心の中で褒めてやるマイクだった。
ただし、色違いで数枚購入したことは、もう少しだけ、黙っていようと思った。
きっと、この後シャワーを浴びる。その後で、違う色のショーツを見せるのもいいなぁ・・・そんな風に思うのだった。
END