金曜日の仕事を終えて、ペントハウスに帰り着いたが、マイクの出迎えがなかった。まだ、仕事か?・・・と思ったら、人の気配はする。
「マイク。帰ってるのか?」
これをかけると、寝室の方から声がした。
「あー、おかえりー、ハーヴィー!」
そして、マイクが姿を現わす。スーツ姿ではないから、仕事から帰ってきたばかり・・・というわけではなさそうだ。しかし、家でくつろぐ格好でもないもない。Tシャツの上にネルシャツを羽織、ジーンズを履いている。手にはコンバース。
「出かけるのか?」
夜食でも買いに行くのかと思って、軽い気持ちでそう聞いた。
「うん!友達と飲みに行く!」
マイクは嬉しそうに笑って言った。
友達と。
飲みに行く。
単純な返事だ。しかし、ハーヴィーは一瞬にして不機嫌になった。せっかくの週末だ。それでなくても、職場が違って、以前のように日中は会えない。お互いに仕事が忙しく、一緒に暮らしてるとはいえ、顔を合わせる時間は、確実に少なくなってしまったのだ。それなのに。
友達と。
飲みに行く。
これは、ハーヴィーにとっては、最重要不機嫌事項である。
ハーヴィーはマイクに近づくと、その手からコンバースを取り上げて、ポーンと放り投げた。
「え?ちょっと!ハーヴィー!何するの!」
驚きと不満の入り混じった表情で、マイクがハーヴィーを見た。しかし、それ以上の不満気な顔でハーヴィーはマイクをじっと見つめた。
「・・・せっかくの金曜の夜に、旦那を放って、友達と遊びに行く、そういう妻だったか、君は」
「は?・・・ちょっとハーヴィー大丈夫?自分が何を言ってるか、わかってる?あのさ・・・確かに、一緒に暮らしてるけど・・・僕は貴方の妻じゃないし、貴方は僕の夫じゃないでしょ?」
マイクは口を尖らせながら、コンバースを拾いに動こうとした。が、それはすぐにハーヴィーに遮られる。
「友達って?・・・まさか・・・」
「違うよ!絶対にトレヴァーじゃないからね!あいつとはもう縁を切ったんだから!・・・ハロルドと、ベンジャミンだよっ!」
ハーヴィーは首を傾げた。基本的に自分に興味のないことに関しては、絶大な忘却力を発揮するハーヴィーである。二人の名前を出されても、ぴんとこない。しかし。
「・・・ああ。あのおどおどした金髪巻き毛と地下のモグラか」
「そういう言い方しないで。二人とも、僕の数少ない大事な友達なんだから」
わりと社交性のあるマイクではあったが、心を許して付き合う友人は少ない。以前は、ハーヴィーもマイクにとっては大事な友人だった。それはお互いに。しかし、今は、そのカテゴリにはない。それを超えた関係にある。
「3人とも職場がバラバラになちゃったけど、それでもまだ繋がってるんだ。今夜はスポーツバーに行って、ビールを飲むの。ねえ、事前に言わなかった僕も悪いけど・・・行っちゃダメなの?」
マイクが首を傾げてハーヴィーに訴える。
「旦那を放ったらかしにする罪は重いぞ」
「だーかーらー。いつから、貴方は夫になったの!もうっ!僕、行くよっ!」
次第にマイクがプンスコし始める。ハーヴィーの横を擦り抜けていこうとするのを、ハーヴィーは片腕で止めた。そして軽く力を込めて、マイクの体をソファに放った。
「うわっ!ちょっと!」
ジャケットを脱ぎ、ネクタイを解いたハーヴィーがすぐにマイクにのしかかる。そして。
「貞淑じゃない妻には、お仕置きが必要だな」
そう言って、口角を綺麗に上げて、ニヤリと笑った。それは、そう。悪魔みたいに。その笑顔を見て、マイクはゴクリと唾を飲み込んだ。
「やっ・・・あっ・・・は、離してっ!ダメっ!」
「ダメというわりには、君のここはしっかりと咥え込んでるぞ?」
ハーヴィーが二人が繋がっている部分を指でなぞった。
「ひゃっ・・・あ・・・ね・・・一度・・・抜いて・・・」
「どうして?」
「だって・・・ねぇっ・・・お願い・・・スキンをつけて・・・」
「いつもつけないだろう」
「・・・こっ・・・これから・・・出かけるんだもんっ!・・・だから・・・やめて・・・中には出さないでっ!」
どうやら、『出かけない』という選択肢はないらしい。ハーヴィーはそんなマイクの態度に余計に意地悪をしたくなり、ぐっと自分をマイクの体の中に余計に押し込んだ。
「やぁだって言ってるのに・・・ハーヴィー・・・やめて・・・も・・・お願いっ!抜いてっ!スキンをつけてってばっ!!」
ソファの上で全力でもがくマイクの体を簡単に拘束する。マイクはもう半泣きだった。そんな表情を見たら、『可哀想』というよりも、もっと『虐めて』やりたくなる。それに天邪鬼なハーヴィーだ。「抜いて」言われて素直に抜くわけがない。それに、マイク相手に中に出す以外の選択肢はない。今までも。これからも。
足が体に付くくらいに折りたたまれて、苦しいほどに突き上げられる。いつもなら、それに深く感じ入るマイクだったが、今は、『抜いて』、『スキンをつけて』しか考えられない。
「ハーヴィーっ!!!!!!」
拳を作ってポカポカとハーヴィーの肩を叩く。けれども、ハーヴィーの楔は抜かれることなく、より一層、奥の方を抉ってくる。
心地いいマイクの内壁を感じながら、この可愛らしい妻が全力で拒否の声を上げる様子に、軽い嗜虐的な興奮を覚える。より深く、奥を犯してやりたくなる。
「やだっ!・・・やだっ!・・・抜いてっ!!」
足までばたつかせているが、そんな動きはハーヴィーにとってはご馳走以外の何物でもなかった。嫌がる人間を犯すのも楽しいものだ・・・とすら、思う。
「孕むぐらい、奥に出してやろうか?」
マイクの耳元で、ハーヴィーが低い声で囁いた。
「やっ!・・・中は・・・だめぇっ・・・」
マイクが全力で拒否する姿と、彼の内壁の心地よさ。そして自分を締め付ける力に、ハーヴィーはより一層、抽挿を激しくする。
「や・・・あ・・・奥・・・や・・・ハーヴィー・・・や・・・」
そして、マイクの体を押し潰すように体重をかけると、いつもより奥の方へ、自分の欲望を叩きつけた。
非常にスッキリしたハーヴィーは、マイクから離れて身なりを整えた。マイクは、ズルズルとソファから落ちて、ぐったりとしている。
「う・・・やだって・・・言ったのに・・・ハーヴィーの・・・ばかぁ・・・これから・・・出かけるのに・・・も・・・どうしよう・・・」
これだけされても、まだ出かけるのか、とハーヴィーは半ば呆れる。しかし、少し可哀想だったかな・・・と思い始めた。
「マイク。車で送ってやるから。機嫌を直せ」
「・・・僕・・・スキンつけてって言ったのに・・・嫌い・・・ハーヴィーなんか・・・も・・・僕、ここ・・・出てく・・・」
NGワードがマイクの口から出たところで、ハーヴィーはようやく後悔した。まあ、少しだけ。
ハーヴィーはマイクに近づくと、優しくその腕を取った。
「ほら、バスルームに行くぞ。出かけるんだろう?」
「貴方に、そんな言われ方されたくない」
すっかり不機嫌になったマイク。ハーヴィーは溜息をつくと、下半身には何も身につけていないマイクの体を抱え上げた。
「おーろーしーてーよー・・・」
「いいから」
マイクをバスルームまで運ぶと、ネルシャツとTシャツを脱がせる。そしてシャワーブースへと押しやった。シャワーのコックを捻り、湯を出す。マイクは雨のように降りかかる湯に当たりながらも、額を壁に押し付けていじけている。その姿を横目に見ながら、ハーヴィーも服を脱いだ。
「マイク、キスは?」
「しないもん。ハーヴィーなんか、嫌いだもん」
そんなマイクの背中にキスを落とすと、ハーヴィーは長い指を尻の割れ目に這わせた。
「・・・ハーヴィー・・・最低・・・まだ、やるんだ・・・」
「違う。中を綺麗にしてやるだけだ。もう、君の嫌がることはしない」
ハーヴィーはすっかり柔らかくなっている後孔に指を2本差し入れると、ぐっと左右に開いた。
「あ・・・ん・・・」
内壁を液体が伝う感覚にマイクが声を上げる。ハーヴィーは左腕をマイクのウエスト引き、体を軽くくの字にすると、内部を傷つけないように優しく指を動かして、自分が放ったものをゆっくりと掻き出した。
「ん・・・んんっ・・・」
マイクの声質が変わる。それは甘くて、可愛らしく啼くような声だった。
「や・・・だ・・・も・・・」
「マイク?」
「・・・僕・・・最低・・・」
「何がだ」
「・・・感じちゃったよ・・・」
ハーヴィーが指を抜くと、マイクはゆっくりと振り向き、ハーヴィーと向かい合わせになる。
「・・・責任、取って」
「出かけるんじゃなかったのか?」
「貴方が車で送ってくれるなら・・・間に合う。でも・・・お願い。中には出さないで」
そう言って、マイクがハーヴィーの首に腕を絡めた。
「わかった。約束する」
これ以上、マイクを虐めるのは得策ではない。マイクにだって、友達付き合いは大切だ。別に籠の鳥にしたいわけではない。
「ちゃんとハーヴィーの顔を見たいから、後ろからはやだよ?」
「わかった」
ハーヴィーはマイクの片足を抱え上げた。そして、すでに柔らかい部分に、優しく自分を押し込んだ。
「あ・・・ん・・・」
感じ入った声を上げながら、ハーヴィーの頰に髪を擦り付ける。ハーヴィーとのセックスは嫌いじゃない。ただ、ちょっと考えて欲しかっただけだ。
シャワーブースにシャワーの音と、マイクの声が響く。
「あんまり飲み過ぎるなよ」
「うん・・・わかってる。二日酔いで、貴方との週末を台無しにしたくないからね・・・」
「いい子だ」
「明日・・・二人で、何処かに出かける?」
「そうだな。郊外にでもドライブに行くか」
「じゃあ・・・お弁当作る」
「これから飲みに行って、早起きできるのか?」
「するもん。・・・今夜は・・・早めに切り上げて帰ってくる」
「久しぶりに会うんだろう?ゆっくりしなくていいのか?金髪巻き毛と地下のモグラと」
「そういう言い方しないの。ハロルドとベンジャミンだよ。・・・時間は短くてもさ・・・濃密な時間は過ごせるからね」
「意味深な言葉だな」
「変な風に取らないでよ」
そんな会話をしながらも、マイクの体はハーヴィーに揺らされている。
「ああ・・・なんか・・・イキそう・・・」
「俺もだ・・・」
「ハーヴィー・・・中は・・・ダメだよ?」
「わかってる」
「・・・あ、イくっ・・・」
マイクの体に一瞬、力が入る。しかし、自分とハーヴィーの腹に白濁を吐き出しかけると、力が抜けた。それを確認してから、ハーヴィーはマイクから自分を抜き、引き締まったマイクの太腿に擦り付けながら、精を解放した。そして、シャワーの温かい雨の中で、マイクに深くキスをした。
「んー!夜風が気落ちいいっ!」
ハーヴィーの運転するコンバーチブルの助手席で、マイクは声を上げた。どうやら、機嫌は直ったらしい。
「連絡をくれれば、迎えに来るぞ」
「いいの?」
「深酒はしないんだろう?」
「うんっ。でも・・・先に寝てていいんだよ?」
「妻の帰宅を確認しないと眠れない」
「・・・その妻ってやめて」
「さっきので孕んだら、もう妻だろう」
「う・・・」
マイクは自分の下腹を押さえた。
「・・・なんかさ、ハーヴィーって男すら孕ませる能力がありそうで、なんか・・・冗談に聞こえない・・・」
「ああ・・・君が孕むまでヤルのもいいな」
「やめて・・・怖い。冗談に聞こえない」
「・・・ほら、着いたぞ」
「あ、ありがと。・・・ねえ、お迎え、本当にいいの?」
「ああ、もちろんだ」
「じゃあ・・・遠慮なく、連絡するね」
そう言って、マイクはハーヴィーの頰に軽く唇を当てた。そして車から降りる。
「行ってきます!」
「楽しんでこい」
マイクの走る後ろ姿を見送ってから、ハーヴィーは車を発進させた。
頭の中で、明日のドライブルートを考えながら。
END