yea please quit 02

ことんっとベッドに押し倒され、長い指で額や頬や顎を触られる。この辺りは、今までだってされたことがある。まあ、ベッドの上ではなかったけれども。ダニーのこれまでの経験からいくと、次は顎をキープされてキスだよなぁ。などと、ちょっと冷静に考えている。慣れたことなら、驚きはしない。これはダニーの学習能力の一つだ。慣らされた、と言ってもいいのかもしれない。が。次にスティーヴがダニーに施したことは想定外だった。自分を包めているブランケットの合わせ目を器用に探し、そこから手を差し入れてきた。
確かに似たようなことは過去にもあった。
きっちりと着込んだシャツのボタンをキスをしながら外して手を入れようとしたこと、数回。しかし、ダニーはスーッと後方に逃げて、グッバイじゃあねまた明日!と躱していた。
後は、オフの日。Tシャツの裾から手を入れられたこともある。そのときは、スティーヴの手首をがしりと掴み、「この悪いお手手は誰のかなー?」と笑顔で捻ったりもした。そして、グッバイじゃあねまた明日。である。
しかし、今は。今は、ベッドに押し付けられているので逃げられないのだ。しかも、器用にブランケットの上からダニーの両手を探しだして押さえ込んでいる。透視能力でもあるのか、この男は!
ダニーは、スティーヴの本気を、今、ひしひしと感じていた。
実はさっきまでは、なんとか逃げられるんじゃね?と思っていたのだ。ようやく、その浅はかさを思い知らされる。
スティーヴの手がブランケットの中に入り込んでくるのに比例して、体がはだけられていく。別に男同士、見られていやーん、なことはないのだが、この先に待っているであろう行為のことを考えると気が気でない。
いつのまにか、ダニーの両腕はひとまとめにされて、頭上で押さえられていた。しかも、スティーヴの左腕だけで!犯罪者か、俺は!スティーヴの右手は楽しそうにダニーの体を弄っている。明らかに楽しんでいるのは、その表情を見れば一目瞭然だ。まるで、グレイスがクリスマスのプレゼントにローラースケートをもらったときのような笑顔だ。いやいやいやいや。あの可愛いグレイスとこの野獣アニマルを一緒にしちゃダメでしょ、俺!と自分にツッコミを入れるダニー。
「なあ、スティーヴ?」
「どうした?やめて及びその同義語以外のお願いなら聞いてやる」
ちっ。先手を打ちやがったな。
「えっとさあ、逃げないから。絶対に逃げないから、腕を押さえるのやめない?なんか、容疑者として確保された気分」
「そうだな。ロマンにかけるな」
うわー。アニマルの口から、「ロマン」って言葉が出たよー。似合わねー。でも、そんな想いは表情に出さない。できるだけ、笑顔で「お願い」してみる。その作り物の笑顔にスティーブは気を良くしたのか、案外素直にダニーの両手を解放した。
「で?その両手は何処へ行くんだ?まさか、ベッドの上に放り出しておくわけじゃないよな?」
へ?と一瞬狼狽するダニー。ベッド以外の何処へおけと?
「ダニー、ハグやキスと同じだろう?」
「あ?ああ・・・ああ、ああ、はいはい」
要するに、腕を自分に背中に回せということだ。ダニーは仕方なく、のそり両腕を上げて、スティーヴの背中に静かに回した。胸が密着する。今までは、シャツやらTシャツやらがあったけれども、今は素肌同士。そのせいか、いつも以上に熱を感じる。
胸筋はそれなりにあるけど、胸のおっきなおねーちゃんじゃないし。しかも、胸毛もあるし。何が、何処が、楽しいのだ。ブツブツ。ダニー、心の声。そんな心の声を塞ぐかのように、唇が塞がれた。これは許容範囲だ。慣れとは恐ろしいもので、キスぐらいなら、ダニーも平気になっている。何処か、楽む余裕すらある。キスだけなら。
あれ?あれれ?こんな風に、セックスにも慣れちゃうのかな?俺。
いやー。それはないっしょー。あはあはあははははははー。
そんなことを考えている場合じゃない。スティーヴの手のひらが次第に、下肢へと伸びている。
「んっ・・・んんっ!!はふっ」
ダニーがスティーブの頬を両手で挟むようにして引き剥がす。
「どうした、ダニー。苦しい?」
「いや、そうじゃなくて。あんたのその右手の行き先って何処」
「決まってるだろう。ペ・・・」
「ストップ!きーきーたーくーなーいー!!!!!!」
「じゃあ、聞くなよ。いいから、任せておけ!」
そんな自信たっぷりに言われても。けれども、スティーヴの手は自信たっぷりに動いていく。
「は・・・ん・・・んんんんっ」
最初は柔らかく、そして次第に強く握り込まれていく。
気持ちいいのか、悪いのか。判断のつかない感覚。反射的にダニーはぎゅっとスティーヴの背中を抱く腕に力をこめる。視覚情報を遮断したくて目を閉じる。それが余計、自分の神経を一点に集中せざるを得ない状況になっているのことにダニーは気づいていない。ただ、やりすごしたくて目を閉じていた。何かを見るなんて余裕もなかった。
「ん・・・う・・・はぁ・・・ん?ん?ちょっ!スティーヴ!!やっ!おいっ!」
目を閉じていて気付くのに遅れた。というか、全く気付かなかった。
スティーヴがダニーを咥え込んだのだ。温かい滑った感触に包み込まれる。
思わず動いた脚は、簡単にスティーヴの押さえ込まれた。
「最低!馬鹿!お前、マジ?本気?異常!!!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!!!!!」
スティーヴの口は目下のところ、ダニーに奉仕するのに忙しいので、返事の代わりに強く吸い上げることにする。
「わーわーわーわー!!!もうっ・・・やっ!信じられねーっ!!!」
ダニーが騒げば騒ぐほど、スティーヴも口腔内や舌を使って攻め立てる。ダニーは腕を伸ばすが、スティーヴのダーク・ブラウンの髪に触ることしかできなかった。
口で奉仕されることが初めて、というわけでもない。ただ、相手が男だということが問題なのだ。じゃあ、スティーヴを別な可愛い女の子に変換してみたらどうだろうか。と一瞬考えた。が、無理だった。スティーヴの残像が強すぎた。
スティーヴの口に弄ばれている自分に集中せざるを得ない。気持ち悪さがあるわけではない。ただ、ダニーにしてみれば、モラルの問題だ。どうして、男が男に口を使って奉仕するんですか!ということである。ただ、それだけ。往生際が悪い、ダニー。
そして、一方のスティーヴといえば、この状況を完全に楽しんでいた。今まで、ハグやキスだけで我慢していたのだ。フレンチのフルコースが、食前酒で終了です!と言われていたようなものである。今日は最後のデザートまで楽しむ気満々である。
ダニーが保守的なのは重々承知だった。だからこそ、少々無理強いすることは最初から決めていた。ハグやキスだって、少々強引な自分の行動から始まったのだ。ならば、セックスだって、その路線でいけば、ダニーも堕ちる!と信じてうたがっていないスティーヴだった。それに、心の何処かで、スティーヴはダニーの優しさに付け込んでいる。ちょっと強引に押せば、ダニーは許してくれる、と。それは、今までの付き合いからわかった。見解の不一致から、なんのかんのスティーヴを罵倒しても、最後はスティーヴの我儘を通してくれるダニーなのだ。そんなダニーに甘えるのがスティーヴは好きだった。
緩急をつけながら、ダニーを可愛いがる。確実にそれは反応してくれていれて、拒絶されていないことに満足するスティーヴ。男の生理現象だと言ってしまえばそれまでなのだが、ポジティブ・シンキングなスティーヴにはどうでもいいことだ。ダニーが感じてくれていればいい。
そんなスティーヴの想いを知ってかしらずか、ダニーの中にも変化が訪れていた。
口でここまで気持ちよくさせてくれた人は初めてかも〜な、感想から、今は、気持ちいいから、早くいかせて欲しい、になっている。
「はぁ・・・ん。スティーヴ・・・」
指先でスティーヴの髪を掻き混ぜる。力を抜いた足先で、シーツを擦る。
「頼む・・・も・・・無理・・・」
その言葉を聞いて、スティーヴはキュッと吸った後、ダニーが放出できるように指と唇を使って追い上げていった。

「・・・・・・うれしそーだね」
ボソッとダニーが呟く。
「最高だな!」
にっこりとスティーヴが答える。
「じゃ、俺、シャワーで浴びて来ようかな・・・」
と言った瞬間、ウェストをホールドされた。やっぱりな」、とうなだれる、ダニー。これで終わるはずがない。
背後から、後頭部や首筋や背中にキスを落とされる。
そして、スティーヴの手のひらが、するりとダニーの尻を撫でた。びくりとするダニー。
「大丈夫。痛くしないから」
そんな保証が何処にあんだよ!!!!!!と、心の中でダニーは叫んだ。

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