XOXO 01

泣く子も黙る、FIVE-0のリーダーであるスティーヴは、人生最高潮に浮かれていた。もとい、現在進行形で浮かれている真っ最中ナウである。
国連の2011年版「世界人口白書」によれば、2011年10月31日に世界人口が70億人に到達したとされている。その推計から考えると、スティーヴが己の番であるダニーに出会えたことは単純に言って(老若男女を問わずすれば)70億分の1の確率と言っても過言ではない。
まさに、「奇跡」である。その奇跡が故に、スティーヴは最高に幸せで、最高に笑顔で、最高ににやけているわけである。

「・・・・・・気色悪いわ。あんな、ボス」
コノがボソッと呟く。
「そんなことを言っちゃいけないよ」
チンがやんわりと嗜める。
とは言っても、チンもスティーヴの変化を否定はしない。
猪突猛進、考えるより先に行動、無茶な突入、犯罪者に容赦なし、コントロールフリークの店は相変わらずであり、信頼のできるボスであることに変わりない。ただ、最後のコントロールフリークの辺りが少々・・・否、かなり怪しい。ただしそれは、ただ一人の男に対してだけなのであるが。
今朝も、ダニーがたった1分、本部に現れるのが遅かっただけで、生理前の女性かと思われるくらいに激烈にイライラし、かと思うと、当の本人が現れると破顔してまとわりついていた。しかも、ダニーの朝食用にサンドイッチまで準備して、だ。それからダニーが書類仕事のためにオフィスに引きこもれば、何故かスティーヴもくっついていく。ガラス越しに見れば、どうやらダニーがスティーヴを追い出そうとしているようだが、相手はなんだかんだ言って、オフィスを出る気はないらしい。そして、満面の笑みを浮かべているのだ。
そりゃあ、コノに「気色悪い」と言われても仕方がない。
けれども、チンもコノも、ダニーがΩであり、二人が実は番であったなんてことは知らないので、やっぱり、ある意味、コノの「気色悪い」という感想はあながち間違いでもない。
オフィスのガラス越しに、チンとダニーの目が合った。
ダニーが目の前のスティーヴを指差して、「これ、どうにかして。鬱陶しい」と訴えてくる。
けれども、チンは肩を竦めて、困った表情で返した。
コノが言うところの「気色悪い」上司にあまり関わりあいたくなかったのだ。それは、本能とも言える自己防衛手段だった。

知事からの要請で、スティーヴ、ダニー、チン、コノの4人は現場へと到着した。
立てこもりである。
犯人に立てこもられた別荘が、知事の友人のものだったので、HPDではなく、FIVE-0に出動の要請がかかったのだ。サム・デニングは法を遵守する人間ではあるが、事件に友人が絡むと、法はとりあえず横に置いておくことがあるらしい。しかも、ちょうどヴァカンスで知事の友人家族が滞在中であった。
コノ以外は防弾ベストを着用し、サブマシンガンを所持して突入の準備をする。コノは離れた場所からライフルで狙撃する体制をとった。
チンがスティーヴの顔をちらりと見やる。コノもスコープ越しにスティーヴの表情を確認する。
・・・・・良かった。にやけてない。表情が真面目だ。いつものボスだ。
現場を指揮する人間が腑抜けたヘラヘラ男では、命を預けていられない。
サーモグラフィで確認した人質と犯人の居場所に音もなく近寄る。できれば、犯人を人質から引き離したい。その役をチンが引き受けた。建物の逆サイドで、わざと物音を立てる。3人の犯人のうちの1人が動いた。
同時に、ダニーが裏口のドアを蹴破り、先手必勝とばかりにスティーヴがサブマシンガンで1人を仕留める。ダニーも人質の前に立ちはだかって、H&Kで犯人の肩を打ち抜いた。チンの方へと移動した男は、すでにコノのライフルの餌食になっていた。
人質の安否を確認し、任務完了・・・と思った時、想定外に室内に銃声が響いた。
人質だと思っていた人間の1人がダニーに発砲したのだ。反射的にスティーヴが腰のシグ・ザウエルを抜いて撃った。そして倒れるダニーを左腕で抱きとめた。

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